「“ぐでたま”の素晴らしさはたまごの多様性をしっかり打ち出している点」たまごのソムリエ・小林真作さんにその魅力を聞いてみた!

サンリオの世界的に大人気の卵キャラクター「ぐでたま」を主人公にした実写作品、Netflixシリーズ「ぐでたま 〜母をたずねてどんくらい〜」を世界配信中です。

【ストーリー】どうせ食べられるだけだと自分の運命を諦め、いつもぐでっとしていたいぐでたまが、前向きで暑苦しいひよこのしゃきぴよに巻き込まれ、冷蔵庫から外の世界へ。正反対のデコボココンビは、母親探しの旅に出ることに!旅の途中で多種多様なたまごたちと出会い、それぞれの調
理法があることを知っていく、ぐでたま。ぐでたまが自分の行く先を考え始めた時、このままだと腐ることが判明!果たして、動きたくも働
きたくもない主人公ぐでたまは、母親のもとにたどり着くことができるのか?
ぐでたまとしゃきぴよ、正反対のデコボココンビが繰り広げる、脱力と共感の親探しロード・トリップ!

本作の魅力を、まさにたまごのスペシャリスト!たまごのソムリエ・小林ゴールドエッグ代表の小林真作さんに伺いました。身近だけれど意外と知らない深〜いたまごの世界をお楽しみください!

◆小林真作さん プロフィール
『株式会社小林ゴールドエッグ代表取締役。名古屋大大学院工学研究科物質化学専攻にて高分子レオロジーを研究、株式会社ミツカングループ本社(現 株式会社 Mizkan Holdings)中央研究所・新規事業プロジェクトチーム所属を経て新設のチルド部門商品開発マーケティング業務に携わる。2004年より小林ゴールドエッグ代表に就任、大学・研究開発者時代の知識を活かし11の農場と共に料理別専用たまごを開発、現在83種の卵を全国に販売する。 
たまごのソムリエとして「マツコの知らない世界」ほかメディア出演多数。 一日10個のたまごを18年間食べ続けている。卵に関するブログを毎日更新』(http://www.cgegg.co.jp [リンク]

◆『ぐでたま 〜母をたずねてどんくらい〜』をご覧になった感想。好きなシーンなどを教えてください。

諦観したセリフがすごく刺さりますね。あきらめをつぶやくことで気持ちを切り替える、ある意味前向きになれるのかもしれないんだな、と気づかされました。ぐでたまが寝返り打って醤油飲んでいるシーンが超かわいいですね。黄身のおしりが最高です。後半(第9話)でぐでたまがオムレツフライパンでシェフさんにくるくるされているシーンがツボでした。

あと、たまごに詳しいと分かる小ネタがいろいろあって面白いです。たとえば、親ニワトリさんの名前と勘違いした「ジュリア」は産卵鶏として非常に有名な鶏種名ですし、乾燥剤でぐでちゃんが腐敗防止する、というシーンは業務用シュリンク包装卵などに使われるカラシを使用した抗菌袋(商品名「カラシード」など)のパロディじゃないかと思います。非常にマニアックですね。最後に出てくるニワトリさんの目がちょっと怖いのがリアルでした。鶏はティラノサウルスと最もDNAが近いとも言われますが、アップで見るとニワトリの目はジュラシックパークの恐竜そっくりでとても怖いんです。

  
◆『ぐでたま』のことはこの作品の前からご存知でしたか?またどの様なタイミングで知りましたか?たまご好きの小林さんからみた、ぐでたまの魅力を教えてください!

ぐでたまのことは、以前から気になっていました。出始めの頃は、エッ!?たまごのキャラクターが!とテンションが上がりましたね。仕事で通るたびに、東京駅の地下のショップに立ち寄っていました。以降、ガチャガチャを集めてみたり、ぐでたまの卵料理レシピ本も持って楽しんでいます。

ぐでたまの素晴らしさは、「たまごの多様性」をしっかり打ち出している点ですね。ここにすごく惹かれます。たまごは起泡性(あわだち→ケーキなど)・熱変性(熱で固まる→玉子焼きやオムレツ)・両親媒性(油と水となじむ→マヨネーズなど)・マスキング効果(味をまろやかにする→温泉玉子)・食感滑らかさ寄与(ユッケ生卵黄のせ・たまごかけごはんなど)と、すごく多様な機能性とそれを活かしたいろ~んな料理があるんです。ぐでたまの世界では、オムライスにケーキ、寿司たまごと20を超えるキャラクターが出ていますが、これは世界中に抱負なレシピのある、まさにたまごの魅力そのものです。ピータンまで出ているのは最高でした! どのキャラクターもすごく愛らしくて、ああ次はこれを食べてみたい、と観るごとに思わされます。今後もさらにマイナーな卵料理キャラクターをどんどん増やしてほしいですね。

◆敢えて本格的なたまご専門家の知見から、ぐでたまを品評していただけますか?

「日本で生まれたことに、とても納得感のあるキャラクター」だな、と特に実写を観て感じました。実は生卵のとろ~んとしたうごきを、大多数の人が「あるある」とイメージできる国って、海外ではそう多くないんです。

なぜなら、海外の方にとって卵はあくまで『加熱前提』の食材で、生卵の挙動、つかんだらどんな風にぐで~ん・ぬるん・とろ~りとなるのか・・・なんてのは、日常では気にして視ていないのですね。たとえば生肉の脂身のサシがどんな模様かなんて、多くの人はしらないですよね?そんな感じです。

ところが、日本人はたまごかけごはんに月見うどんや温泉玉子と、多様で生に近いたまごを、近距離で眺めながら日常で食べています。
作中のぐでたまのつやつやとした生卵の光沢や、掴んだ時のつるんとろん、とした動きも、すごく僕たちにとって身近な体験ですごく実感がわきます。キャラクターとしてより親しみを持てるんじゃないでしょうか。

また、トレーサビリティを活用して旅に出ることで、調理人さん生産者さんのコメントなど、母親探しの過程で卵の流通過程をさかのぼるストーリーも、多くの方を食材としての新たな興味に引き込んでくれるのではないでしょうか。また最後に「たまご料理の王様」としてまさかアレを全世界配信でおすすめするとは驚きです。

◆本作で、ぐでたまは旅に出ますが、時間経過している卵だからからこそ向いている料理はありますか? また、今回本作の主演を務めたぐでたまに一番向いている調理方法や料理名のおすすめはありますか?
 
産卵後時間が経過すると美味しくなるのは「混ぜて加熱する料理」、たとえばオムレツや玉子焼きです。卵は時間が経つにつれて黄身と白身の間で水分の移動が起こります。すると白身がふわっと柔らかくなり、混ぜて加熱した際にふわとろ食感に仕上がりやすいのです。データ上は3日以上置くと加熱食感がとてもとろふわで調理しやすくなります。プロの料理人さんも、あえて新鮮産みたてから時間を置いて卵を使っている方が多くいらっしゃいます。

◆本作ではぐでたまの描写がツヤツヤしていて、とても映像が綺麗ですが、黄身って加熱することでうま味とか増えるのでしょうか? もしそうだとしたら、どのくらいの温度や時間がベストなのでしょうか?

アミノ酸・うま味の総量は変わりませんが、実は加熱することで水分が減って黄身の旨味は凝集されます。目玉焼きでも「黄身と白身を分ける。黄身だけを先にフライパンに乗せ低温でじっくりと加熱して旨味を凝集する、その後に白身を入れてサッと焼く」という黄身を最大限に美味しくする料理手法があるくらい。また、加熱により半熟になることで粘弾性の数値が増し、とろ~りとした食感で舌の味蕾に当たる(感じる)時間が伸びるため、より黄身を濃厚に感じるようになります。

◆鶏の種別で、卵の美味しさ、味わいは異なりますか? 今回ぐでたまはママ(親鶏)を探す旅に出ましたが、たまご専門家から見る限り、本作のぐでたまの親鶏はどのような鶏でしょうか?

ぐてたまはつやとハリがあり衝撃や変形に強いので、比較的若い親鶏から産まれた可能性が高いです。鶏卵は通常、若い鶏ほど粘弾性が高くて張りと弾力があります。特に黄身の周りの白身(「濃厚卵白」と言います)の弾力が高く見えますが、これも若い鶏から生まれた卵の特徴のひとつです。
また、白身に対する「黄身の割合」が比較的大きいと感じます。これは高知の土佐ジローなどの地鶏や烏骨鶏など少し特殊な卵で見られる特徴ですので、高級で希少なたまごの可能性もあるかと思います。また、日本に5%しかいない純国産鶏は11%ほど黄身が大きいというデータもありますので、こちらの鶏種かもしれません。
 
◆『ぐでたま 〜母をたずねてどんくらい〜』はもちろんのこと、Netflixを見ながら食べるのにおすすめな卵料理を教えてください!
 
その1、煮玉子ですね。半熟ゆでたまごを作り、お好みの麺つゆなどと共にビニール袋に入れておくと数時間でできます。黄身のとろみからぐてたまに想いを馳せながら観れますし、フォーク一本あれば食べられますので、映画などを見る際にとても便利です。少し鷹の爪などを入れておくとお酒にも合いますので、お部屋でののんびりステイにピッタリです。作中に出てくるハードボイルド(固ゆで)の煮玉子もおすすめです。

その2、『エッグ&ソルジャーズ』はいかがでしょうか。 超半熟の黄身(3分ほど)のゆでたまごを用意し、細切りにしてカリカリに焼いたパンを、上部を割ったトロトロ半熟たまごに漬けて食べます。映画を見ながら食べやすいですし、トロトロぐて~っとした感じがぐてたまのイメージにもピッタリです。塩を強めに利かせれば、お酒のつまみにも合います。

Netflixシリーズ「ぐでたま 〜母をたずねてどんくらい〜」
声の出演:武内駿輔(ぐでたま他)、福島星蘭(しゃきぴよ)、霜降り明星 せいや(たまご寿司)、霜降り明星 粗品(グレたま)
出演:中尾明慶 モトーラ世理奈 / 皆川猿時
原作:サンリオ/監督:榊原幹典/シリーズ構成:加藤陽一/音楽:遠藤浩二
制作プロダクション:OLM/制作協力:レスパスフィルム
主題歌:原由子「ぐでたま行進曲」(TAISHITA/Victor Entertainment)
配信:Netflixにて世界配信中(全10話 / 各話約10分)

(C)2022 SANRIO CO., LTD. S/D・G 著作 株式会社サンリオ

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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