中学受験と高校受験、コスパがいいのはどっち? 学歴競争に効率よく勝ち抜くための戦略論

中学受験と高校受験、コスパがいいのはどっち? 学歴競争に効率よく勝ち抜くための戦略論

 子どもを育てるうえでの指針として「教育方針」がありますが、今後は「教育戦略」という言葉も注目されていくかもしれません。書籍『コスパで考える学歴攻略法』の著者・藤沢数希氏によると、これは「限られたリソースを使って、いかに効果的に果実を得るかという家庭の教育の戦略論」のこと。支払った費用やかけた労力(コスト)とそれにより得られた能力(パフォーマンス)の対比を表す「コスパ(コストパフォーマンス)」は、子どもの教育についても言えるということなのでしょう。今ある日本の教育インフラをいかにうまく使いこなし、子どもが将来成功できる可能性を高めればよいのか、その実践法が同書では論じられています。

 まず、現代の日本の教育において、悩む親も多いのが「中学受験をするかどうか」ではないでしょうか。藤沢氏は「中学受験は競馬シミュレーションゲームのダビスタそっくり」だと言います。馬(子ども)をあるときから厩舎(中学受験塾)に入れ、そこで調教師(先生)が厳しいトレーニングを課し、レース(全国模試)の成績で競走馬(子ども)のクラスが上下する――。

「この厳しいレースを走りぬく子供を家庭で全面的にバックアップしていく必要がある」
「これは誇張でも何でもなく、現代社会でふつうに生きていれば、親子がひとつのチームとなり、一致団結して必死に取り組めるものといったら、中学受験以外にないのである」(同書より)

 もうひとつの選択肢が、公立の中高に進んで大学受験に成功するというルート。中学受験塾に約300万円、私立の中高6年間の授業料約600万円を合わせた1000万円近くを払うことなく、日本の公立校であれば世界の中でもトップレベルの学力を格安で身につけることができます。

 ただし同書で紹介されているあるデータによると、高3の時点で私立中高一貫校の受験生の平均偏差値から公立高校の受験生の偏差値を引くと、約3となるそうです。「この数字だけ見ると、約1000万円出せば、期待値では子供の大学がワンランク上がるかもしれない、というぐらいの相場観」(同書より)というのが藤沢氏の見立て。この1000万円という費用対効果を高いと見るか低いと見るかは、各家庭で考え方が異なりそうです。

 海外で研究者をしたり多国籍企業の第一線で働いたりした経歴を持つ藤沢氏らしく、英語の勉強法や世界から見た日本の教育レベルなどについても触れられている同書。よくある受験攻略本とは違い、フラットでグローバルな視点から書かれている点が特徴的です。

 できる限りコストをかけずに子どもに最高峰の大学に行ってほしいと望む人には、一読の価値があるかと思います。ただし、ゲームのようにコストをかければかけた分だけ成果に結びつくわけではないのが子育て。子どもの能力や適性はひとりひとり違うため、あくまでも一般的なデータとして参考にするのがよいかもしれません。

[文・鷺ノ宮やよい]

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