タモリ、18年ぶりの著書。港区87の名坂・14コースを歩き語り尽くす!
タレントのタモリさんといえば、お笑いタレントとして長年第一線で活躍するほか、ジャズや船舶、ダム、鉄道、アマチュア無線など多彩な趣味を持つ人物としても知られています。その中でも忘れてはならないのが「坂道」。坂道に関する造詣が非常に深く、「日本坂道学会」の副会長も務めています。
といっても、この日本坂道学会の会員は、タモリさんと坂道研究家である山野 勝さんの2名のみ。今から30年ほど前、銀座のクラブで山野さんが坂道について部下2人に熱弁していたところ、「俺も坂は好きですよ」とタモリさんが話に加わり盛り上がったことから結成されたそうです。
そんな坂道をこよなく愛するタモリさんが、山野さんの監修協力のもと著したのが『お江戸・東京 坂タモリ 港区編(タモリの江戸の坂道シリーズ)』。2004年に発行された『タモリのTOKYO坂道美学入門』から実に18年ぶりの著書となります。
港区にある名坂87坂の魅力が余すところなく紹介されている同書。なんと紙面で大きく使われている名坂の写真はそれぞれ、早朝・深夜とタモリさんが歩いて自ら撮影した中から選ばれた渾身の一枚です。日本坂道学会では名坂の条件として以下の4点をあげています。
1、勾配
2、湾曲
3、江戸情緒
4、坂の由緒
それぞれの写真から、そのポイントが感じられることでしょう。「タモリさんってば写真の腕まであるのか……」と驚かされること必至です。
さて、「坂は江戸の痕跡みたいなもの」と同書にあるとおり、東京には江戸以来の坂が500もあるそうです。そこで、同じエリアで江戸時代の古地図と現代マップの徹底比較を試みているところもユニークな点です。
たとえばタモリさんが”推し坂”のひとつに選んでいる三田の幽霊坂周辺は、古地図を見ると「この界隈の特徴は、大小の寺院が密集し、”寺院の町”とでも呼べる景観を成していた」(同書より)ことがわかります。JR高輪ゲートウェイ駅が開業し、このあたりは東京でも最先端なイメージを持つ街のひとつではあるものの、地図を見れば今でも35の寺が確認できるそうです。「幽霊坂」と名がついた坂は、一般には寺院や墓地のある薄暗い坂が多いのですが、「この坂はそれに加え、坂上の高層ビルと江戸の趣を残す寺院の織り成す景観が見事」(同書より)とのこと。新旧入り混じった景観も、幽霊坂の大きな魅力であると記されています。
いっぽうで、港区は大規模再開発がめざましいエリアゆえに、この18年間で消えてしまった名坂も……。「名前さえ残っていれば、手繰っていけば何とか元の場所に辿り着くこともできるんだけど、名前すらなくなってしまったら辿りようがない」(同書より)と、タモリさんは山野さんとの対談の中で、町名や坂名がなくなることを惜しんでいます。
同書で紹介されている坂は14コースに分けられているため、本を片手に実際に歩いてまわるのも楽しいでしょう。タモリさんとともに歴史散策するような気持ちで、皆さんも坂めぐりの旅に出かけてみてはいかがでしょうか。その前に、まずはじっくり同書を熟読するもよし。タモリさんの博識ぶりやユニークな観察眼に、知的好奇心が刺激される一冊です。
[文・鷺ノ宮やよい]
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