『メガドライブミニ2』レビュー:ゲームが急速に進化していったあの時代の空気を味わわせてくれる愛と夢に満ちた傑作ハード
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溢れんほどの愛と夢が詰まっている! 『メガドライブミニ2』は、そう感じずにいられないゲームハードだ。熱い……なんて熱いハードなんだ……。
こんなに熱い感動を一人で抱えられるわけがない。レビューせずにはいられるだろうか? 否、レビューせずにいられるわけがない!
メガドライブのコアな魅力が詰まったミニゲーム機第2弾
『メガドライブミニ2』は、「メガドライブミニ」の第2弾として作られたミニゲーム機だ。「メガドライブミニ」が「メガドライブ」をミニ化していたように、『メガドライブミニ2』は「メガドライブ2」というハードをミニ化している。
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「メガドライブミニ」の収録ソフトは「メガドライブ」といったらコレだよネ!……というような誰もが知る定番タイトル・名作タイトルだった。一方、『メガドライブミニ2』はよりコアなタイトルが中心。
タイトル数は「メガドライブミニ」の42本に対して60本! このボリュームの時点で、いやさ、メガドラ愛を感じずにはいられないだろう。
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ただ、ボリュームだけではない。その質にも注目だ。今回の収録タイトルは、大きく3つの区分に分けることができる。
ひとつめは、「メガドライブ対応タイトル」。ふたつめは、「メガドライブ」の拡張ハードだった「メガCD対応タイトル」。そしてみっつめが、発売されていない「未発売タイトル」だ。
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「未発売タイトル」ってどういうこと?……と思った人もいるかもしれない。ただ「未発売タイトル」自体は「メガドライブミニ」の時点で収録されていた。
ただ『メガドライブミニ2』では「未発売タイトル」の数が10本と大幅に増加。さらに「未発売タイトル」を通じて、「もしも、メガドライブというハードに縮小拡大機能が搭載されていたら?」といった「歴史のif」を実現するなど単純に「発売されなかったタイトルを入れておきました」という話に留まっていない。企画としてのクオリティが高いのだ。
あらゆる製品というのは経済活動のためにつくるので、「利益を上げるため」に作っている。だが「利益を上げるため」オンリーで作るなら、ここまで企画に凝る必要なないだろう。逆にいえば、ここまで企画のクオリティを高めた背景には、確実に愛と夢があるのだ。
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2Dから3Dへ! 時代の空気を味わわせてくれるタイトルたち
『メガドライブミニ2』のようなミニハードは往年のファンが思い入れとともに楽しむもの。なので、60本すべての収録タイトルを紹介することにはあまり意味がないだろう。そこで、収録タイトルの中から、筆者の思い入れのあるタイトルを当時の時代背景とともに紹介してきたい。
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まず、筆者が「メガドライブミニ」の時点から収録を強く強く望み、今回ようやく収録が叶ったという1本が『ソーサリアン』だ。収録されるという発表を聞いた時には、夜中にもかかわらず「よっしゃあ!」と大声を張り上げてしまったほど。
『ソーサリアン』は当時PC向けに発売されていた横スクロールアクションRPG。冒険者4人でパーティーを組み、クエストを受注し達成を目指すという内容で、クエスト=シナリオが追加配信されるというのが特徴だった。
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最近のゲームではシナリオ追加配信なんて珍しくもない。しかしインターネットが普及しておらず、ゲームといえば単体販売が基本だった当時では考えられないくらい画期的。なので少なくとも当時の筆者周辺では、『ソーサリアン』=「未来的でイカしたスゲえゲーム」という認識だった。
ただ、なにぶんPCを持っていないので、どんなに憧れてもPC向けの『ソーサリアン』をプレイすることはできない。そんなところに颯爽と登場したのが、メガドライブ版『ソーサリアン』だ。
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メガドライブ版『ソーサリアン』はPC版と違って、シナリオの追加配信機能は持っていない。しかし複数のシナリオ(クエスト)をオムニバス形式でプレイするという『ソーサリアン』の基本はしっかり実現。
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さらにそのシナリオは「メガドライブ」版オリジナル。その上、最終的なシナリオではそれまでのシナリオが絡み合い、ひとつの大きな流れになる……という作劇的なカタルシスを実現していた。BGMもひたすらカッコよく、今回プレイしてみたが是非ラストまでプレイしたいと感じた次第。
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『ソーサリアン』に加えて、『サンダーフォースIV』も今回ようやく収録が叶ったタイトル。「メガドライブミニ」に収録された『サンダーフォースIII』も大好きなのだが、『サンダーフォースIV』はそれ以上に大好きなのだ。
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何が大好きかって、ビジュアル・演出・BGM、そして爽快なゲーム性だ。『サンダーフォースIV』が発売された当時、クオリティ面でゲーム業界を引っ張っていったのはアーケードゲームだと思う。
といっても当時の筆者は高校生であり、ゲーム業界にいたわけではない。ただ、ゲーム好きの友だちと会話すると決まって、「やっぱり家庭用に移植されると、クオリティが落ちるよなー」「だよなー、やっぱ基本はゲーセン版だよな!」という流れになっていた。シューティングゲームやアクションゲームなど、ビジュアルやアクション性をメインとするものはアーケード、物語や育成を楽しむRPG、シミュレーションゲーム系は家庭用ゲーム……という認識だったように思う。
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そんな中登場した『サンダーフォースIV』に、筆者はド肝を抜かれた。多重スクロールによって表現されたスピード感。水面スレスレを飛ぶ敵機が立てる水しぶきや、岩に当たる波のカッコよさ。
アーケードに勝るとも劣らない……そう感じたのだ。実際、2022年の今見ても「カッコいい!」と思えるし、遊びだすと止まらなくなってしまう。
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今見ても「カッコいい」と思えるビジュアルという意味では、『シャイニング&ザ・ダクネス』も挙げられる。『シャイニング&ザ・ダクネス』は、現在も続く「シャイニング」シリーズのスタートを飾るダンジョンRPGだ。
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絵本のような独特のディフォルメを施されたキャラクターと背景グラフィックは、時代を超える普遍的な魅力を持っているように思う。実際、筆者が本作を知ったのは「なんかこれまでのRPGと絵の雰囲気が違うゲームが出るよね」という友だちの一言だった。つまり、当時の学生の目から見ても、独特な世界観と感じられたわけだ。
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『シャイニング&ザ・ダクネス』はさらにダンジョンRPGという、大きく変化せず現在へ引き継がれたゲームシステムを採用しているため、今でも十分プレイできる作品だと思う。特に最近ではインディゲームを中心としてドット絵のゲームが数多くリリースされていることもあり、人によってはあまり「レトロゲーム」という感覚を持たずにプレイできるのではないだろうか。
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ところで、「思い入れ」というのは何もソフトに対してだけ持つものではないように思う。特に筆者のように「メガドライブ」全盛期にゲームキッズだった人間は、当時の「空気感」のようなものに対して思い入れを持つ人もいるのではないだろうか。当時の「空気感」……というのは、日々リリースされるゲームによって、「進化」を実感できることだ。
今回、「メガCD」対応タイトルが収録されたことにより、『メガドライブミニ2』にはドット絵の2Dゲーム、CDの大容量を活かしたムービー系ゲーム、そして3Dゲームという3つのタイプのゲームが揃うことになった。多様なゲームが溢れる現代から見ると、ドット絵の2Dゲームもムービー系ゲームも3Dゲームも単に「手法の違い」でしかないように思える。しかし、当時を知る人間からすれば、この3つから「ゲームの進化の過程」を感じられるはずだ。
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「ゲームの進化の過程」が感じられる1つめのタイトルが、『ファンタシースターII 還らざる時の終わりに』。ドット絵で描かれた2DベースのRPGだ。
「メガドライブ」が発売された1988年は、ライバルハードであるファミコンで『ドラゴンクエストIII』が発売された年でもある。『ドラゴンクエストIII』はテレビのニュースに取り上げられ、社会現象と呼べるほどの話題となった。
「ドラゴンクエスト」シリーズのヒットにより「ファイナルファンタジー」シリーズなどの名作RPGが次々登場し、RPGは一大ジャンルを形成。家庭用ハードでゲームをプレイするならRPG……という認識を持った人も多いだろう。
そんな中で、「メガドライブ」向けRPG第1作として発売されたのが『ファンタシースターⅡ 還らざる時の終わりに』だ。個人的には「ドラゴンクエスト」シリーズや「ファイナルファンタジー」シリーズに勝るとも劣らない作品だと思っているし、事実、2022年の現在でも「ファンタシースターオンライン」シリーズとして人気を獲得している。
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そんな『ファンタシースターII 還らざる時の終わりに』の演出は、2Dドット絵ならではの表現に溢れている。ダンジョンでは多重スクロールするし、戦闘シーンではキャラクターが動いて攻撃や魔法を繰り出す。
これらの演出は当時の基準で言えば、かなりビジュアルクオリティが高い。ファミコン版『ドラゴンクエストIII』と比べれば、どれだけビジュアルに注力しているのかがよくわかるはずだ。
ここで注目したいのが、イベントシーン演出。ドット絵で表現した一枚絵にテキスト表現を組み合わせるという演出だ。
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当時はさまざまなRPGが、ストーリーをよりリッチに表現するため、イベントシーンをグラフィカルに描こうとしていた。そのひとつが、『ファンタシースターII 還らざる時の終わりに』で採用されている、イベント用のドット絵一枚絵+テキストというアドベンチャーゲーム的な演出だ。
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ここでポイントとなるのは、「イベント用のドット絵一枚絵+テキスト」という手法には、ハードの性能上ゆえ制限がかかっているという点だろう。もし可能であれば、一枚絵ではなくアニメーションで表現したほうが演出としてベストだったかもしれない。しかし、当時のハードウェアスペック的にそれは難しかった。
だが後に、ハードウェアスペックの進化によってアニメーション的な演出が実現することになる。そう、「メガCD」だ。
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「メガドライブ」に限らず、「CD」という媒体は当時「画期的」「進化的」ともてはやされていたように思う。「CD」によって扱うことの可能なデータ容量が、ほぼ無限といえるほどにアップする。ではその容量を何に使うのか?
そのアンサーとなったのが、音声と動画。「これからは文字や画像だけでなく、音声や動画も組み合わせたマルチメディアの時代なんだ!」という意見が声高に叫ばれていた。
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こうした「CD」媒体の長所と、当時のRPGが目指したストーリー的演出の強化が融合した好例こそ、本作に収録されている『ルナ ザ・シルバースター』や『ルナ エターナルブルー』といったタイトルだろう。ビジュアル、ストーリー、システムなどクオリティ高くまとまっていて名作だと思うが、それ以上に時代性を表現した歴史的価値のある作品だと思う。
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一方で当時、アニメーション表現とは別の進化の方向性だったのが「3D表現」だろう。今となっては実写と見間違えるような「3DCG」も当たり前だが、当時としては驚きの表現だったのだ。
それをわかりやすい形で実感できるのが『アウトラン』と『バーチャレーシング』だろう。いずれも『バーチャファイター』や『シェンムー』で知られる鈴木裕が手掛けたレースゲームだ。
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『アウトラン』は、道を奥へと走る見た目こそ3Dだが実際の処理は2D的に行っている。このため、車は角度を変えることができない。このため、カーブを曲がれるかどうかは左右のボタンを押しているかどうかとスピードによって判定される。
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そして、そんなレースゲームを3D対応させているのが『バーチャレーシング』。現在の「3DCG」と比べればカクカクしていて粗いことこの上ないが、『アウトラン』と比べれば何がどう進化しているのかわかるだろう。
ただ個人的には『アウトラン』に思い入れが強い。当時筆者はレースゲームが苦手だったのだが、『アウトラン』だけは楽しくプレイすることができた。他のレースゲームのように速さを第一優先にするのではなく、カッコいい音楽を聴きながら、美しい背景をドライブ的に楽しむという要素が好きだったのだ。
今回、ひさしぶりに『アウトラン』をプレイしてみて、やはりハマってしまった。時間を忘れさせる魅力を持った作品だと思う。
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さて、2Dアニメーションと3DCG、当時の2つの進化の方向性を語った上で目を向けたいタイトルが、『夢見館の物語』だ。3DCGにはリアルタイムとプリ・レンダリングという2つの手法がある。
リアルタイムというのは文字通り、リアルタイムに3DCGを描写する手法。リアルタイムなので、プレイヤーの操作に応じて即座にビジュアルを構成できる。『バーチャレーシング』のようにプレイヤー操作に応じて画面内容が大きく変わるゲームでは欠かせない。
一方で、プレイヤー操作は発生するものの、画面内容は大きく変わらないというゲームも存在する。たとえば、今でいう「脱出ゲーム」のような謎解きアドベンチャーゲームは、画面内容の変化のバリエーションが限られている。画面を移動するか、獲得したアイテムが背景から消えるといった程度だ。
このため、リアルタイムに3DCGを描写するのではなく、あらかじめ録画しておいたムービーを再生するというかたちでも対応できる。これが、プリ・レンダリング。リアルタイムに描写する場合と比べて、3DCGのクオリティをアップできるというメリットを持っている。
そんなプリ・レンダリングの手法で作られたタイトルが、『夢見館の物語』。
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「脱出ゲーム」を引き合いに出したが、『夢見館の物語』はまさに、脱出ゲームの祖先といえるようなゲームだ。館の中を移動しつつ、怪しげな場所を探索。館の謎を解くことでゲームを進めていく。
これらの表現が、プリ・レンダリングの3DCGムービーで表現されている。
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筆者は当時、『夢見館の物語』をプレイして「こんな表現もあるのか!」と驚かされた。現在筆者はインディゲームクリエイターとしてホラー脱出ゲームを作っているが、そのきっかけは確実に『夢見館の物語』だと思う。そういう意味で、非常に思い入れの強い作品だ。
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ここまで、「メガドライブ」が現役だった当時の「ゲームの進化」について語ってきた。しかし、もしかしたらゲームはもっと別の進化を遂げていたのかもしれない……。そんな夢を楽しませてくれるタイトルが、『スペースハリアー』と『スペースハリアー2』だ。
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『スペースハリアー2』は、「メガドライブミニ」にも収録されていたタイトルだが、まったく同じものが収録されているわけではない。今回収録されているのは、「もしも、『メガドライブ』というハードに縮小拡大機能が搭載されていたら?」という仮定の上で作られた特別な『スペースハリアー2』なのだ。
実際に発売された「メガドライブ」には縮小拡大機能が搭載されなかった。しかし、同世代機である「スーパーファミコン」には縮小拡大機能が搭載されていたことを考えると、「メガドライブ」に縮小拡大機能が搭載されていたとしてもおかしくはない。そんな「もしも」を実現したのが『スペースハリアー2』と、そのオマケタイトルである『スペースハリアー』。
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ちなみに、「メガドライブ」には縮小拡大機能が搭載されていないのだが、『スペースハリアー2』の敵は縮小や拡大といった動きを見せる。これは、ソフトウェア側で縮小拡大処理を疑似的に実現しているからだ。このため、ハードウェア側が機能を搭載している場合に比べて動きがぎこちないものになっている。
これは、「メガドライブミニ」版『スペースハリアー2』と、『メガドライブミニ2』版『スペースハリアー2』を比べれば一目瞭然だろう。
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もし、「メガドライブ」に縮小拡大機能が搭載されていたら……? 少なくともその後発売されるゲームのクオリティには影響を与えていただろうし、もしかしたらゲームはもっと別の進化を見せていたかもしれない。そんな夢を見させてくれる収録タイトルだ。
「歴史にifはない」とは言うが、夢を売ってナンボなのがエンターテインメント。別の歴史の夢を見れるなんて、最高じゃないか!
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必ずしも懐かしのハードじゃない? 現役ハードとしての楽しみ
ここまで『メガドライブミニ2』について、思い入れと共に紹介してきた。つまりそれは、「懐かしのメモリアルグッズ」という側面で紹介してきたということ。
だが、筆者は『メガドライブミニ2』を「懐かしのメモリアルグッズ」とは考えていない。むしろ、現役ハードだと思っている。
なぜ現役ハードだと思うのかというと、筆者にとってはまだ現役だからだ。『ガンスターヒーローズ』『ダイナマイトヘッディ』『魂斗羅ハードコア』『ダライアス』といったゲームを遊ぶため、普通に「メガドライブミニ」をプレイしている。
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『メガドライブミニ2』も、『ソーサリアン』、『サンダーフォースIV』、『エイリアンソルジャー』、『ファイナルファイトCD』といったタイトルを頻繁に遊ぶことになるだろう。というのも、「メガドライブ」のアクションゲームやシューティングゲームは、繰り返しプレイしても飽きないものが多いからだ。
筆者の印象に過ぎないが、繰り返しプレイしても飽きないタイトルが多いのは、セガがアーケードゲームの会社だったからではないかと思う。アーケードゲームは、繰り返しコインを投入してもらわなければならない。「1度プレイしたらもういいや」だとか、「クリアしたからもう終わり」だとか思われてしまったら成り立たないのだ。
なので、『メガドライブミニ2』は「メガドライブ」時代にはまだ生まれていなかった最近のゲーマーにもオススメできる。もちろん、「ハイエンドな最新3Dゲームが遊びたいんだよ!」という嗜好の人には合わないところもあるかもしれないが、最近のインディーゲーム系が好きな人であれば、自分の好みのタイトルを見つけて実際にやり込んでいける、買って後悔することのない傑作ハードだと思う。
個人的はまず間違いなく長期間に渡ってプレイすることになるだろうから、今から修理のサポートを心配している……。
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文/田中一広
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