超濃厚アクション インド映画『RRR』を作った「家族」/S.S.ラージャマウリ監督 “家族インタビュー”

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418億円(37,000万ドル)というインド映画史上最大の世界収益をたたき出した『バーフバリ』シリーズ。この”モンスタータイトル”を手掛けたのが、インド映画界の創造神、S.S.ラージャマウリ監督。
『バーフバリ 王の凱旋』(2017)から5年、創造神が97億円の製作費を用いて新たに創出した最新タイトルが、この『RRR』(アールアールアール)です。

<『RRR』ストーリー>

舞台は1920年、英国植民地時代のインド
英国軍にさらわれた幼い少女を救うため、立ち上がるビーム(NTR Jr.)。
大義のため英国政府の警察となるラーマ(ラーム・チャラン)。
熱い思いを胸に秘めた男たちが”運命”に導かれて出会い、唯一無二の親友となる。
しかし、ある事件をきっかけに、それぞれの”宿命”に切り裂かれる2人はやがて究極の選択を迫られることに。
彼らが選ぶのは 友情か?使命か?

極太なストーリーラインでいて、その映像・テンポ・効果どれをとっても超濃厚。観始め80秒で完全にその世界に引き込まれること間違いなしのこの超絶作品、実は「家族ぐるみ」で作られていたことはご存じでしょうか。

今回は来日されたS.S.ラージャマウリ監督、そして衣装担当で奥さんのラーマ・ラージャマウリさん、ラインプロデューサーであり息子さんのS.S.カールティケーヤさんに映画作りのバックボーンについてうかがってみました。

“完璧”を目指す単位としての家族

――『RRR』拝見しました! ゴールが見えていないと作れないような壮大な作品だと感じました。日本では、──特に漫画家なんかはそのイメージが強いのですが── 個人がインプットして個人がアウトプットすることが多いと思っていました

S.S.ラージャマウリ監督(以下監督):(筆者がちょうど着ていた手塚治虫『ブラックジャック』デザインのTシャツを見つつ)おお、テヅカの『ブッダ』は読んだことあるよ!

――本当ですか!嬉しいです。素晴らしい作品が生み出されるには個人の負担が大きいのがこれまででした。チームで作品を作るということは、イメージの共有が大切になってくると思うのですが、企業ではなく家族で映画を作るこそのメリットというのはありますか

監督:家族の姿勢、あり方が大事だと思っているんだよね。実は私の兄弟も、義理の兄やら姉やらみんなこの業界におります。父ももちろん含めて。
全員「良いものを作るためにとことん追求する」、「完璧を目指す」という意識が共通していますね。完璧でなければ映画に対する冒涜だというくらいの気持ちがあって。
私が家族に対して「こういう作品を作りたい」というと、そのためのベストを彼ら、彼女らは考えてくれる。とても良いことは、それに対して批判をしてくれることだね。ただ、それによって前に進むことが出来るものの、その反面、なかなか褒めてもらえないんです(笑)。一年に一回くらいですよ、褒められるのは。

――(笑)褒めていただきたいですよね

監督:(褒めるって)人間にはとても大事なことだよね。

妻・息子:(笑)

――僕はこの映画を観た時に「褒めるところしかない!」と感動でいっぱいになりました。おそらく、世界中の方がおなじ気持ちだと思います

監督:ただ、私は同時に色々なことが出来ないんだよ。でも妻と息子はマルチタスクが出来るんです。妻はありとあらゆる衣装をデザインしながら、家のこと、娘のこともきちんとしてくれる。息子もこの撮影だけではなくて「来月はどうなのか」、「次の作品はどうなのか」ということを並行して考えている。2人がいてくれるからこそ、僕は一つのことに集中していても大丈夫なんです。

――家族で映画を作るというスタイルはインドではよくあることなんですか?

監督:家族が映画作りをしていても映画に興味がない子供になることもあるけれど、やはり家でその情報があふれていると、食事のトピックスが映画になったりするので、子供も映画好きになる可能性が高いと思うね。

――先日、インドネシアの映画監督と日本人の撮影監督さんにお話を伺う機会に恵まれたのですが、「日本では映画の撮影が切羽詰まってくると食事は車の中で簡単に済ませたりする。でもインドネシアではご飯の時間だけはしっかり取って、と言われる」というお話を聞けました。国によって映画作りで大切にしていることは違うなと感じたのですが、ご飯のことに関わらず、監督たちのチームで映画作りで大切にしていることはなんでしょうか

S.S.カールティケーヤ(息子):日曜日に休むというのは必須にしています。監督やクルーにとって必要なことですよね。『バーフバリ』でもそうしていました。ただ、『バーフバリ』の時は戦いのシーンを一度撮り始めると止めることが出来なくて、3ヶ月のうちに休みが2日ということもあったんですね。ランチがしっかりとれない時もあったかもしれません。でも1時間休むということは大事だと思います。

――この映画を観た日本のクリエイターたちは必ず刺激を受けると思うんですね。そんなクリエイターたちにメッセージをお願いします!

監督:映画の作り手であれば、自分を動かす「ストーリー」や、「自分に真に訴えかけるもの」がなければ観客に響く作品は撮れないと思います。自分に真に訴えかけてくるものが見つかったならば、一年間、満足に寝られなかったとしても、ストーリーをベストな形で完成させてください。それが大切だと思います。

――すごい説得力です。ありがとうございました

激しい、コントラスト抜群の今作とはうらはらに、監督はじめ奥さんや息子さんも終始、微笑みを絶やさず、ゆっくりした口調で答えてくれた穏やかなインタビューでした。しかし、創造神の瞳の奥には高熱の炎がたぎっているかのような、クリエイトに対する熱意がひしひしと感じられたのも事実です。

絶賛公開中の『RRR』、熱量オーバーと満足感まちがいなしの作品です。神から賜りしものの中身を、急ぎ劇場で体感してみてください。

『RRR』
監督・脚本:S.S.ラージャマウリ 『マガディーラ 勇者転生』(09) 『バーフバリ 伝説誕生』(15) 『バーフバリ 王の凱旋』(17)
原案:V.ヴィジャエーンドラ・プラサード 音楽:M.M.キーラヴァ―二
出演:NTR Jr./ラーム・チャラン

原題:RRR/2021年/インド/テルグ語、英語ほか/シネスコ/5.1ch/
日本語字幕:藤井美佳/字幕監修:山田桂子 応援:インド大使館 配給:ツイン #RRR
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本文・写真:オサダコウジ
構成:藤本エリ

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オサダコウジ

慢性的に予備校生の出で立ち。 写真撮影、被写体(スチル・動画)、取材などできる限りなんでも体張る系。 アビリティ「防水グッズを持って水をかけられるのが好き」 「寒い場所で耐える」「怖い場所で驚かされる」 好きなもの: 料理、昔ゲームの音、手作りアニメ、昭和、木の実、卵

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