今、中国がアフリカの鉄道事業を席巻! その背景から見えてくる世界ビジネスの潮流とは?
ポスト・コロナ時代の混沌のなか、今後の世界の動きをどう捉えればよいか迷う人も多いのではないでしょうか。それを「鉄道ビジネス」という一風変わった視点から読み解いた書籍が『鉄道ビジネスから世界を読む』です。
著者は”旅するビジネスマン”として世界を飛び回りながら、YouTubeで情報発信もおこなう小林邦宏さん。東京大学工学部を卒業し、住友商事で経験を積んだのち、現在はフリーランス商社マンとして世界を舞台にビジネスを展開しています。そんな海外事情に精通する著者が言うには、「今、鉄道ビジネスは世界中で非常にホットな分野」なのだそうです。なかでも大きな発展の余地を残しているアフリカでは、その35カ国において中国がインフラ・プロジェクトに関わっており、恐るべき勢いでメイド・イン・チャイナの鉄道網が整備されていっているといいます。著者は同書の目的について、「中国経済の圧倒的力をはじめとする世界の現実を直視した上で、私たち日本のビジネスマンが自分たちの特長を活かす形で、いかにビジネスを展開するかを考えていきたい」と記しています。
中国の鉄道ビジネスはここ最近に始まったことではなく、1970年代からすでにアフリカ諸国で鉄道建設に協力し、支援の姿勢を打ち出してきたという背景があります。なかにはタンザニアやザンビアのように、軍事基地や兵器の供与、さらには権力の象徴とも言えるスタジアムの建設までおこなっているという事例も。
「手始めにスタジアム建設を援助して、次に鉄道などのインフラ開発に手を伸ばしていくのが、中国からアフリカ諸国への開発援助を通じた経済的アプローチの常道だ」(同書より)
この四半世紀、欧米先進国がグローバル・スタンダードに基づいての開発援助に腐心してきたいっぽう、実質的な開発援助を着々と続けてきた中国。「安定的成長」や「政治の浄化」といった条件を満たさずとも融資してくれる点は大きな魅力ですが、返済の担保には国土が充てられるなど、本来の債務よりも高価値の物件を奪われる状況に陥る危険性もはらんでいます。しかし、それは中国のみならずアフリカ側にとっても必ずしも悪い事態というわけではなさそう。「そんな中国的権力観は、現代のアフリカ諸国の権力者たちとも、またそれらの国の一般生活者とも親和性が高いのではないか」(同書より)と著者は見ています。
こうした中国の「ヤッたもん勝ち」「太く短く」という考え方は、日本が古くから尊重してきた「細く長く」という考え方とは真逆のもの。しかし著者は多くの例を示しながら、「日本流の『細く長く』という美徳が、とっくに世界で通用しなくなっていることは明らかだろう」(同書より)とし、生き残るためには自分たちの技術力を見つめ直し、新たな需要を見つけるべきだと提唱します。「日本のものは世界で求められている」というメイド・イン・ジャパン神話は過去のものだと考えたほうがよいのかもしれません。
けれど、”変化はチャンス”という言葉もあるように、「この先にどんなチャンスが生まれてくるのか、ポジティブにワクワクしている」という著者。皆さんも鉄道ビジネスという視点から世界を見てみると、そこには新たな発見やビジネスチャンスが転がっているかもしれません。
[文・鷺ノ宮やよい]
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