「森の中を飛ぶ」アマゾンマナティーの生態
アマゾン川水域にしかいない希少な水生哺乳類のアマゾンマナティーは、世界でも珍しい「森の中を飛ぶ」大型哺乳類といわれている。
アマゾン特有の事情として、雨季と乾季の水位の差が激しいため、雨季には川が氾濫して広大な領域が水没林になる。アマゾンマナティーたちは、その水没した森に入っていっていろいろな植物を食べている。水位の上昇は最大で十数メートルに及ぶため、林床からかなり高いところにある木の葉や果物も食べるという。アマゾンマナティーは、1年の半分の期間、水没した熱帯雨林の木々の間を縫うように泳いて暮らすのだ。
■「森のペンギン」フィヨルドペンギンの風変わりな生態
30年にわたり研究者やナチュラリストと共に活動してきた川端裕人氏が、私たちの常識を軽く超えてくる生き物たちの「へんてこ」な生態を新しい科学的なトピックをまじえて約50種紹介するのが、本書『カラー版-へんてこな生き物-世界のふしぎを巡る旅』(川端裕人著、中央公論新社刊)だ。
ペンギンというと氷上にいるのを思い浮かべる人も多いが、「森のペンギン」と呼ばれるペンギンがいる。それが、ニュージーランドの南西部の森の中でだけ繁殖するフィヨルドランドペンギンだ。フィヨルドランドペンギンは、どんな暮らしをしているのか。
毎年真冬の7月頃になるとこのエリアに上陸して巣をかまえる。8月上旬にメスは2卵を産み、オスがそれを温める。メスはこの間に海に出て食事をし、エネルギーを蓄え、31日から36日におよぶ抱卵の期間の半ばを過ぎたあたりでオスと交代する。9月初旬にヒナがかえると、ヒナに食べ物を供給するためにオスもメスも頻繁に海に出て採食する。2羽のヒナがともに育ち上がるのは稀で、通常巣立つのは1羽のみ。ヒナがある程度の大きさになると、巣が近いもの同士で保育所が形成される。その後、11月から12月にかけてヒナが巣立つと、親鳥たちも一斉に海に去る。再び戻ってくるのは1月から2月にかけてで、海でたくさん食事をした親鳥たちは、3週間くらいかけて換羽を行い、次の営巣に備える。
フィヨルドランドペンギンは希少なペンギンで、ニュージーランドの南島と周囲の島々だけで繁殖しており、その数は成鳥が5500羽から7000羽くらいといわれている。
本書では、川端氏が出会ってきた50種の生き物を200枚を超える写真とともに紹介している。生き物たちの不思議な生態を本書から楽しんではどうだろう。
(T・N/新刊JP編集部)
【関連記事】
元記事はこちら
【「本が好き!」レビュー】『時間の終わりまで 物質、生命、心と進化する宇宙』ブライアン・グリーン著
【「本が好き!」レビュー】『失われゆく仕事の図鑑』永井良和、高野光平著
ウェブサイト: http://www.sinkan.jp/
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。