「ポイ捨て図鑑」「投票型喫煙所」仕掛け人が語る社会課題解決への想い 「それぞれの“好き”を認め合える社会に」

SNSで話題となっている「ポイ捨て図鑑プロジェクト」や「投票型喫煙所」を手がけるコソドが、12日、新企画「ポイ捨て図鑑総額100万円分投稿キャンペーン」を開始した。

これはキャンペーン期間中に“ポイ捨て図鑑”に投稿してイイネ数や投稿数を競い、入賞した人に総額100万円分のAmazonギフト券をプレゼントするというもの。

“ポイ捨て図鑑プロジェクト”は元々、昨年12月に始まった取り組み。ポイ捨てされた吸い殻=「本来の居場所である喫煙所に帰ることができない迷子のスイガラモンスター」という設定のもと、ユーザーは発見した“スイガラモンスター”の場所と、それに付けた名前を投稿できるサイトをオープンした。2022年6月末時点で、約1800体の投稿が集まる盛り上がりを見せている。

好評を受け、同プロジェクトの第二弾となる“投票型喫煙所”は、今年スタート。渋谷センター街の一角に、思わず答えたくなるような質問が書かれた「投票型灰皿」を設置することで、ポイ捨てを削減しようという試みだ。こちらも好評で、コソドによれば、この投票型喫煙所は、当面の間は続ける見込みだという。

ユニークな施策で、社会の空気を少しずつ変えているコソド。CEOの山下氏に、プロジェクトを始めた背景を聞いた。

意識改革と問題の可視化

――“ポイ捨て図鑑”着想のきっかけを教えてください。

山下:コソドは、ざっくりといえば、元々社会課題を解決することを目的に作った法人です。まずは身近なところに目を向けようと考え始めた時が、偶然、健康増進法が改正(2020年4月施行)される前の2019年でした。

今たばこって、あまり参入しづらい領域じゃないですか。だから逆に、僕らみたいな小規模なチームがやる意義があると思って。自分もたばこが好きだということもあって、喫煙をテーマにしようと決めました。

――喫煙者の方が、どんどん肩身が狭くなっているという時代ではありますね。

山下:その中で顕在化している社会問題は、ポイ捨てと受動喫煙ですよね。さらに色々調べると、吸う人の数と、吸う場所の数に需給バランスの崩れがあることがわかりました。自分たちでゴミ拾いとかもやるんですが、やった1時間後にはもうゴミだらけになっている実態がある。

そこで、結局喫煙所を作るのが一番いいんじゃないかと思い、「THE TOBACCO」という喫煙所の運営企画を開始しました。 ただ、いきなり喫煙所を沢山作るといっても、僕たちみたいな小さな会社では難しいし、単に喫煙所があれば良いという話でもない。都内に公衆喫煙所があっても、実際にはうまく機能していないということも多いんです。

社会的な意識を変えられるような取り組みをした方が、結果として減るのではないかと考え、一旦ポイ捨てされて困っている場所を可視化することが、清掃や喫煙所を作る際の情報として大切だなと思ったんです。意識の改革と、どこで問題が起きているのかの可視化という二つの意味での“ポイ捨て図鑑”を作ろうという流れですね。

吸う人も吸わない人も、おもしろがれる設計に

――吸い殻に名前をつけるという“遊び要素”を取り入れ、SNSも盛り上がりました。

山下:吸う人も吸わない人も、おもしろがって参加できる設計じゃないとあまりワークしないと思ったんです。それで、ゲーム性があってキャッチーな、みんなが参加しやすいようなプラットフォームを作ったという感じです。

――「ここに捨てて」とか「ここで吸うな」などの要求を一切せず、ただただネーミングさせるだけ。「拾いましょう」とか、「捨てましょう」という啓発まで持っていきたくなる気がするのですが。

山下:拾うとなると、ハードルが一気に上がってしまう。第一段階としての目的が、こういう風に捨てられているということを知ってもらえたらいいなということと、僕たちがその場所を知るということだったので、ゴミを拾って捨てるというプライオリティはかなり下げています。どっちつかずになると良くないと思って。

「マジか」と驚いたポイ捨ての実情 イギリスで成功した投票型喫煙所

――次に、“投票型喫煙所”着想のきっかけを教えてください。

山下:“ポイ捨て図鑑”は、どこで問題が起きているのかを可視化するのが目的でしたが、そこで、「渋谷のセンター街のクランクストリートという場所がとんでもないことになっている」と可視化されました。

そこがめっちゃめちゃ酷くて、もう「マジか」っていう感じで(笑)。それで、そこの地権者の方に相談したら場所を貸してくれることになり、試験的に土日でやるか、ということで始めました。

投票の例:
「あなたが手に入れたいのは、どっちですか?」
A. 永遠の愛、そして一文なし
B. 一攫千金、そして永遠の孤独

――ただ灰皿を設置するのではなく、投票型にした理由は?

山下:こちらも“ポイ捨て図鑑”同様、おもしろがって参加してくれた方が、みんな吸い殻をきちんと入れてくれるだろうという理由です。実はロンドンで昔、投票型の喫煙所というのがありまして。

行動経済学で“ナッジ”と言うらしいのですが、例えばトイレの小便器のところにハエを狙うマークをつけるとそこを狙いたくなってしまう。それと同じで、イギリス人はサッカー好きな人が多いので、「ロナウドとメッシ、どちらが世界最高のプレイヤーか?」 というような投票をさせたら、上手くいったという例があって。

これを日本でもやれたらいいなと思ったのですが、都内では路上喫煙禁止条例がある地区も多く、喫煙所以外は、公道でたばこを吸えて、かつ吸殻入れがあるような場所はほとんど無い。今回は私道かつ煙が周りに広まりにくい路地裏なのでそれが可能だったんです。

――投票したくなる人間の心理が、うまく反映されました。

山下:面白いですよね。ヒアリングしてると、ゴミを捨てなきゃいけないというよりも、参加してる感じが面白いと言ってくれる人もいて。

――「参加する」ことで、意識付けにつながる。

山下:そうですね。僕らは「ポイ捨てするな」といった“禁止”するような文言は、あえて何もうたっていません。自発的にやることが大事だと思うので。

進化し続ける“ポイ捨て図鑑”

山下:今、「うちでも喫煙所のことを手伝ってくれないか」とか「困ってるんだよね」とか「ポイ捨て図鑑見たんだけど」といった、行政からの問い合わせが全国各地から来ているんです。一方で、“儲け”に関して疑問を持たれることも多くて。「民間で何でそれやってるの?」「それで儲かるの?」みたいな(笑)。

僕らは儲かるというよりも、全国で実装できるようなロールモデルを作れた方がいいよね、という考えです。確かに社会課題解決の理想は、稼いで解決して、という形。ですが、最初からマネタイズありきだと、“喫煙所の完成形”が見えなくなってしまう。なので、初期費用は、僕がこれまで別法人で出した利益から捻出しています。

――プロジェクトはまだ都内の一部と限定的ですが、どんどん他の地域にも広がったら、面白そうですね。

山下:“ポイ捨て図鑑”も、次は関西でやる予定なんです。あのプラットフォーム自体、僕らは全然、行政に貸し出すので! SNSでの拡散も多いので、もっともっと大きくしていきたいと思っています。全国に広がったら、やってよかったなと思えますよね。

それぞれの「好き」を認め合える社会に

――こんな街になったらいいな、という理想はありますか。

山下:吸う人と吸わない人が共存できるというのがすごく大事で、そのためにはゴミがなくて、受動喫煙がないということが重要になってきます。

今、たばこに限らず、それぞれの「好き」を認め合える方が良いという社会風潮が出てきていますよね。たばこは好き嫌いがかなり分かれるプロダクトですが、たばこも含めて、みんながそれぞれ好きなことを、でも人に迷惑がかからないように、お互い過ごせるような街になったらいいなと思いますね。

ポイ捨て図鑑
https://poisutezukan.jp/

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