大正時代の豪邸や町家をホテルなどに。空き家の活用が続々の町おこしが脚光 岐阜県美濃市

空き家の数だけ夢がある!岐阜県美濃市「うだつの上がる町」を守るまちおこし

「うだつの上がる町並み」として重要伝統的建造物群保存地区に選定されている岐阜県美濃市は、1300年以上の歴史を誇る美濃和紙で知られる。うだつ(卯建)とは、隣り合った町家の間に、延焼を防ぐ防火壁として造られた、屋根の上の立ち上がり部分のこと。そんな、往時のにぎわいがしのばれる町家が並ぶこの美濃のまちも、空き家問題に悩まされてきた。

衰退した美濃和紙の産業を、空き家対策で盛り上げる

世界遺産に登録された本美濃紙の技術や、日本三大清流の一つである長良川を有し、自然や文化資源に恵まれた岐阜県美濃市。町家の延焼を防ぐ防火壁「うだつ」は、紙の問屋が並ぶ美濃市では特に大事な意味があった。これが次第に装飾的な意味を持つようになり、裕福な商家などでは競うように立派なうだつが造られるようになったという。

タイムスリップしたかのような、美濃市のうだつの上がる町並み(写真撮影/本美安浩)

タイムスリップしたかのような、美濃市のうだつの上がる町並み(写真撮影/本美安浩)

ここ美濃市でも、全国的な課題である空き家問題は例外ではない。美濃市のまちづくりに携わる「みのまちや株式会社」が2021年に行った独自調査によると、文化庁の重要伝統的建造物群保存地区に指定されたうだつの上がる町並みやその付近だけでも、40件以上の空き家があることがわかったという。

「空き家は“歯抜け”状態で現れますから、町並みの美しさが欠けてしまうのです」と説明しながら案内してくれたのは、みのまちや株式会社広報部の平山朝美さんだ。

老朽化した建物は倒壊の危険が出てくるため、例え歴史的な価値がある建物であったとしても、空き家状態のままだと取り壊されてしまうことも珍しくないという。

「だから、空き家対策にはスピード感が必要なのです」と平山さんは話す。

意匠が凝らされた「うだつ」を眺めながら歩くのも趣深い(写真撮影/本美安浩)

意匠が凝らされた「うだつ」を眺めながら歩くのも趣深い(写真撮影/本美安浩)

みのまちや株式会社は、「美濃の歴史的資源を未来に残す」ことを目的に、2019年に設立された会社。「空き家の数だけ夢がある」と空き家ゼロを目指し、美濃のまちをフィールドに、地域と連携しながらさまざまな事業を展開している。

代表の辻晃一さんは、美濃生まれ美濃育ち、美濃在住の生粋の「美濃の人(じん)」。実家は機械漉きの美濃和紙の製紙会社で、進学を機にこの地を離れ、東京のベンンチャー企業で働いていたが、2008年から稼業を継ぐことに。そこで目の当たりにしたのは、衰退しつつある美濃和紙の産業と、少子高齢化が進み、空き家が増えた故郷だった。

みのまちや株式会社代表であり丸重製紙企業組合の代表理事、懐紙作家としても活動する辻晃一さん(45歳)(写真提供/みのまちや株式会社)

みのまちや株式会社代表であり丸重製紙企業組合の代表理事、懐紙作家としても活動する辻晃一さん(45歳)(写真提供/みのまちや株式会社)

「衰退した産業を再び盛り上げるためには、まちに魅力が必要だ」。そう考えた辻さんは、まず、自分ができることとして空き家対策に取り掛かり、「みのまちや株式会社」を設立した。

後述する「NIPPONIA美濃商家町」の「YAMAJOU棟」は、みのまちや株式会社のプロジェクトで1番はじめに開発された。3室の主屋と3つの蔵からなる「YAMAJOU棟」は、和紙の原料蔵がレセプションの役割を果たしている。棟の名前はもとの屋号から(写真撮影/本美安浩)

後述する「NIPPONIA美濃商家町」の「YAMAJOU棟」は、みのまちや株式会社のプロジェクトで1番はじめに開発された。3室の主屋と3つの蔵からなる「YAMAJOU棟」は、和紙の原料蔵がレセプションの役割を果たしている。棟の名前はもとの屋号から(写真撮影/本美安浩)

2021年に、「YAMAJOU棟」の蔵にレセプションスペースをプラスした。美濃や美濃和紙について現代アートを通して発信するギャラリースペースとカフェを併設し、カフェは美濃市で開業したい人のチャレンジショップとしても活用(写真撮影/本美安浩)

2021年に、「YAMAJOU棟」の蔵にレセプションスペースをプラスした。美濃や美濃和紙について現代アートを通して発信するギャラリースペースとカフェを併設し、カフェは美濃市で開業したい人のチャレンジショップとしても活用(写真撮影/本美安浩)

宿泊者は「YAMAJOU棟」に泊まる場合も、少し離れた「YAMASITI棟」に泊まる場合も、まずは蔵のレセプションへ(写真撮影/本美安浩)

宿泊者は「YAMAJOU棟」に泊まる場合も、少し離れた「YAMASITI棟」に泊まる場合も、まずは蔵のレセプションへ(写真撮影/本美安浩)

美濃市のプロポーザルに採用され名士宅を改修

代表の辻さんが最初に行ったのが、美濃市のプロポーザルへの参加だった。そのころ、和紙の主原料である楮(こうぞ)を扱う美濃一の原料屋、松久才治郎氏の別宅が、持ち主により美濃市に寄贈され、民間事業者による活用案とその運営が公募されたのだ。

「別宅といっても、美濃一の名士の家ですから、主人が客人をもてなすための主屋に3部屋と、一軒家ほどもある金庫蔵に原料蔵、道具蔵がありました」と平山さんがスケールの大きさを説明してくれた。

「建物は使わないと朽ちてしまうので、人が出入りして営みがあるということが大事です。だからこそ、この歴史的な建物を、お店やミュージアムではなく、人が住んで使うホテルにしようと考えたのです」

「残月」「満月」「綾錦」の3部屋がある主屋。中庭を囲むように建てられ、部屋ごとに違った景色が楽しめる。部屋名は和紙の名前(写真撮影/本美安浩)

「残月」「満月」「綾錦」の3部屋がある主屋。中庭を囲むように建てられ、部屋ごとに違った景色が楽しめる。部屋名は和紙の名前(写真撮影/本美安浩)

元が商家だったこの辺りの空き家は物件が大きく、個人で手に負えるものではなかった。それでも辻さんは、地道に「和紙で美濃市を元気にしたい」との思いを各方面でアピールした。

一方、美濃一の名士の空き家がプロポーザルに出たタイミングで、兵庫県篠山市のエリア開発会社が動き、この地域でのパートナーを模索していた。すると縁あって辻さんと出会い、共同でプロポーザルにエントリーすることに。無事に採択され、古民家ホテルの改修から運営までを任されることになった。そこで、2者はまちづくり会社「みのまちや株式会社」を設立するに至る。

こうして、主屋にスイートルーム3室と3つの蔵をそれぞれ1棟貸しの客室として、「五感で美濃を感じる宿」として改修するプロジェクトが始まった。

当時のまま残された総柾目の天井が美しい「満月」の部屋。朝は地元の素材をふんだんに使った食事を部屋食で(写真撮影/本美安浩)

当時のまま残された総柾目の天井が美しい「満月」の部屋。朝は地元の素材をふんだんに使った食事を部屋食で(写真撮影/本美安浩)

「和紙の新しい出口を提案する宿」として、松久才治郎の兄、松久永助によって創業された「松久永助紙店」の美濃和紙タオルや枕カバーを使用(写真撮影/本美安浩)

「和紙の新しい出口を提案する宿」として、松久才治郎の兄、松久永助によって創業された「松久永助紙店」の美濃和紙タオルや枕カバーを使用(写真撮影/本美安浩)

美濃和紙の紙糸を使った「松久永助紙店」の洗える枕カバーは吸水性が抜群だという(写真撮影/本美安浩)

美濃和紙の紙糸を使った「松久永助紙店」の洗える枕カバーは吸水性が抜群だという(写真撮影/本美安浩)

美濃の伝統文化を感じられるハイクラスな宿として話題に

大きな企業や資本が入るのではなく自分たちで国の補助金を活用して、資金調達から行ったのがこのプロジェクトの大きな特徴だ。

「とにかく、予算も人も足りなくて……。私は2019年に入社してすぐに、ホテルの開業を控えていましたから、建物の掃除からメディア対応、地域の方との関係づくり、ワークショップや説明会など、代表を前に立たせるための準備は、なんでもやりました」と広報担当の平山さんは振り返る。

国の補助金には制約も多く、事業の立ち上げの大変さを痛感したという。現在は、パートタイマーを含め30人ほどが働く。

東京から夫妻で移住し、子育て中でもある広報担当の平山朝美さん。建物の関係者から、当時の意匠や時代背景のことをリサーチしたといい、美濃について熱量を持って伝えてくれた(写真撮影/本美安浩)

東京から夫妻で移住し、子育て中でもある広報担当の平山朝美さん。建物の関係者から、当時の意匠や時代背景のことをリサーチしたといい、美濃について熱量を持って伝えてくれた(写真撮影/本美安浩)

寂れつつあった美濃の町の空き家をホテルへ改修することへの、街の人達の反応は、当初は半信半疑なものだったという。

「まず『この街に、本当に人が来るの?』という声が多かったですね。また、こういった地方では珍しくハイクラスなホテルとして企画したため、1室が5万円ほど(1泊朝食付き1人1万5400円~)になります。中には、定員4名で1棟が6万円という蔵の客室も。その値段設定にも驚かれ、『良い建物だとは知っているが、場所が場所だし……』などと言われたこともあります」

美濃市周辺にこの層に向けたホテルはなく、潜在的なニーズがあった。みのまちや株式会社の読みは当たり、「和紙の新しい出口を提案する」というコンセプトの第1期開発である「NIPPONIA美濃商家町」YAMAJOU棟(2019年)は人気の宿になった。

「満月」の部屋で出迎える美濃和紙のアート作品「長良川」は、3人の職人による合作(写真撮影/本美安浩)

「満月」の部屋で出迎える美濃和紙のアート作品「長良川」は、3人の職人による合作(写真撮影/本美安浩)

茶室のある数寄屋造の主屋は、総柾目の天井や涼を取るための無双窓が見られるなど、贅を尽くした造り。「できる限り当時のまま」という和風建築や中庭が目を楽しませる。

客間には美濃和紙を多用。障子や壁紙でさまざまな種類の和紙を見ることができる。作家や職人が手がけた和紙のアートも飾られている。

茶室に飾られていた和紙のインスタレーション。物件のもとの持ち主であった松久才治郎には茶の心得があったという(写真撮影/本美安浩)

茶室に飾られていた和紙のインスタレーション。物件のもとの持ち主であった松久才治郎には茶の心得があったという(写真撮影/本美安浩)

1棟貸しの客室「金剛」は2階がある大きな蔵。財産管理のための銀行員が控えていたという前室も付いている(写真撮影/本美安浩)

1棟貸しの客室「金剛」は2階がある大きな蔵。財産管理のための銀行員が控えていたという前室も付いている(写真撮影/本美安浩)

吹き抜けがある「金剛」はファミリーにも人気。壁面の木棚は金庫として使われていた(写真撮影/本美安浩)

吹き抜けがある「金剛」はファミリーにも人気。壁面の木棚は金庫として使われていた(写真撮影/本美安浩)

「分散型ホテル」として離れた場所に2棟目を開業

2020年の開発である2棟目は、「YAMAJOU棟」から徒歩5分ほどの場所にある「YAMASITI棟」だ。こちらは、紙問屋で大地主となった築100年の須田家邸を改修。ペットと宿泊できるドッグラン付きの蔵の客室もあり、こちらは土間を活かした建物で、質実剛健な印象。

1棟目から少し離れた場所にある建物を選んだのは、「“分散型ホテル”として、美濃のまちを歩いて欲しいという思いがあったから」だという。

土間を活かした「YAMASITI棟」のエントランス。紙問屋のころは従業員が活発に行き来していたのかと思いを馳せる。ラウンジスペースのみの利用も可能で、今夏はかき氷店「SEIRYU GORI」が開業する(写真撮影/本美安浩)

土間を活かした「YAMASITI棟」のエントランス。紙問屋のころは従業員が活発に行き来していたのかと思いを馳せる。ラウンジスペースのみの利用も可能で、今夏はかき氷店「SEIRYU GORI」が開業する(写真撮影/本美安浩)

美濃市が拠点のかき氷専門店「SEIRYU GORI」。天然果実を使った非加熱のシロップが名物(写真提供/みのまちや株式会社)

美濃市が拠点のかき氷専門店「SEIRYU GORI」。天然果実を使った非加熱のシロップが名物(写真提供/みのまちや株式会社)

ペットと泊まることができる「YAMASITI棟」の客室「小町」は、ハンモックが吊るされ遊び心が満載(写真撮影/本美安浩)

ペットと泊まることができる「YAMASITI棟」の客室「小町」は、ハンモックが吊るされ遊び心が満載(写真撮影/本美安浩)

蔵を改修した「小町」には、専用ドッグランやペットの足洗い場もある。宿泊は中型犬1匹もしくは小型犬2匹までOK(写真撮影/本美安浩)

蔵を改修した「小町」には、専用ドッグランやペットの足洗い場もある。宿泊は中型犬1匹もしくは小型犬2匹までOK(写真撮影/本美安浩)

当初は心配していた周囲の人たちも、「ホテルのおかげで若い世代まで訪れるようになって、街がにぎやかになった」と言ってくれるように。

開業からしばらくは「岐阜県の旅行中、雰囲気のいい日本のホテルに泊まりたい」と考える海外からの宿泊客も訪れていたそうだ。

そこへ襲ったコロナ禍。「やはり大変でしたが、計10室の規模が幸いして、なんとか乗り切ることができました」と平山さん。今年のゴールデンウィークは満室御礼に持ち直した。

今後は新たに宿泊客に向け、美濃和紙を使ったアートパネルづくりや提灯づくり、和紙の糸を使って織り機で半幅帯をつくる体験をスタートする。

宿泊施設併設の“まちごとシェアオフィス”で「働く&暮らす」をサポート

そして2021年に行った第3期開発は古民家シェアオフィス「WASITA MINO」。コワーキングスペースとプライベートオフィスのほか、宿泊施設「WASITA HOUSE」を併設し、美濃のまちで働くことと暮らすことをサポートする施設だ。

長屋を改修した「まちごとシェアオフィス WASITA MINO」。芝生の中庭があり、仕事の合間の気分転換もしやすそう(写真撮影/本美安浩)

長屋を改修した「まちごとシェアオフィス WASITA MINO」。芝生の中庭があり、仕事の合間の気分転換もしやすそう(写真撮影/本美安浩)

特徴的なのは“まちごとシェアオフィス”の仕組み。この仕組みの会員は、利用会員特典として社員証代わりに「まちごとワークタンブラー」が付いてくる。これを美濃のまちの提携店舗で提示すると、コーヒー1杯の無料提供と、店舗内での仕事がOKになる。まちを周遊して楽しみながら、気分を変えて仕事ができるというわけだ。

「まちごとワークタンブラー」を紹介してくれた、コミュニティマネージャーの橋元麻美さん。関東から夫妻で美濃市へ移住し、子育て中とのこと(写真撮影/本美安浩)

「まちごとワークタンブラー」を紹介してくれた、コミュニティマネージャーの橋元麻美さん。関東から夫妻で美濃市へ移住し、子育て中とのこと(写真撮影/本美安浩)

「WASITA MINO」のコミュニティマネージャーである橋元麻美さんは話す。「シェアオフィスは、美濃に帰省した人の仕事場としても活用されています。“まちごとワークタンブラー”を利用する際には、モバイルWi-Fiもお貸しします。宿泊施設があるので、名古屋などからの企業の研修にも使っていただいています」

1階のおしゃれなコワーキングスペース。他にソロワークブースもある(写真撮影/本美安浩)

1階のおしゃれなコワーキングスペース。他にソロワークブースもある(写真撮影/本美安浩)

シェアオフィスでは、地元の会員同士が再会するという出会いがあったそう。「話したい会員さん同士はおつなぎします。今後はビジネスマッチングも生まれるかもしれません」と橋元さん。

まずは、3300円で2日間(個人・要予約)のお試し利用も可能。美濃のまちが気に入ったら会員になればいい。個人の会員料金は4dayプラン月9900円(曜日指定)、Fullプラン月1万6500円(全営業日)。電源やWi-Fi、給湯室やミニキッチン、プリンター複合機も利用できる。

宿泊施設「WASITA HOUSE」の個室は3室。共用のダイニングキッチンがあり、グループでの合宿にもオススメ。美濃の街を撮影する写真作家が長期滞在したこともあったそう(写真撮影/本美安浩)

宿泊施設「WASITA HOUSE」の個室は3室。共用のダイニングキッチンがあり、グループでの合宿にもオススメ。美濃の街を撮影する写真作家が長期滞在したこともあったそう(写真撮影/本美安浩)

美濃のまちの“関係人口”を増やす多彩な取り組み

そもそも、空き家改修のプランをホテルにしたのは、「宿を足がかりに、人々に美濃のまちを周遊してもらいたい」という目的があったという。

「分散型ホテル」や「まちごとシェアオフィス」のほかにも、さまざまな仕掛けが、訪れた人にアクションを起こさせる。

「NIPPONIA美濃商家町」の宿泊客に渡す「美濃馴染み符」では、提携各店で「食事したらデザートが無料」などのサービスが受けられる。「現在、提携して私たちを応援してくれているお店は12軒くらい。今後増やしていきたいです」と平山さん。

移住促進やテナント誘致を目的に行っているイベントも2つある。
1つ目は「ミノマチヤマーケット」。美濃市内の空き家を活用して、お試し出店の場を提供する、年に1度の大規模なマルシェイベントだ。

美濃のまち全体を使った、大規模な「ミノマチヤマーケット」(写真提供/みのまちや株式会社)

美濃のまち全体を使った、大規模な「ミノマチヤマーケット」(写真提供/みのまちや株式会社)

2つ目は「ミノノイチ」。「ミノマチヤマーケット」の縮小版という位置付けで、メイン会場である「NIPPONIA美濃商家町」に、プラス1軒の空き家や関連施設を会場とした数軒で行う。こちらは偶数月の第2日曜の開催で、今年は6月と8月、10月の開催が決まっている。

どちらも、空き家に出店してみたい人や、美濃市に移住を考えている人に、お試し利用をしてもらう機会だ。

「NIPPONIA美濃商家町」のレセプションの前にキッチンカーが出店しにぎわう「ミノノイチ」(写真提供/みのまちや株式会社)

「NIPPONIA美濃商家町」のレセプションの前にキッチンカーが出店しにぎわう「ミノノイチ」(写真提供/みのまちや株式会社)

「私たちは、美濃市の“関係人口”を増やしたいと考えているんです」と平山さん。いきなり移住や転職というのはハードルが高いので、まずは何かしら、“美濃に関わっている人”を増やし、美濃のまちを好きになってもらいたい……という柔らかな考え方だ。

「今後は、宿泊された方をアテンドできるハイエンドなレストランを、今ある空き家に誘致できたら。また、銭湯の物件を復活させる構想もあり、動いているところです」と楽しみな計画は続く。

「空き家がある分だけ、まちに人が集まります。空き家をマイナスイメージじゃなく魅力と捉えて、楽しく利活用していきたいですね」とのこと。

まさに、空き家の数だけ夢があった。

松久才治郎の兄、松久永助によって1876年に創業された和紙問屋「松久永助紙店」が現在も佇む(写真撮影/本美安浩)

松久才治郎の兄、松久永助によって1876年に創業された和紙問屋「松久永助紙店」が現在も佇む(写真撮影/本美安浩)

店舗が増え、平日でも若者が歩くようになった美濃のまち。数年ぶりに訪れた筆者は変化を実感した。

空き家の利活用の中でも、今回は行政も関わるスケールの大きな事例。それが、もともとは、辻代表をはじめ住民の若いパワーが結集して立ち上がり、その後も仲間を増やしつつ順調に運営しているのはすごいことだ。

貴重な文化財でもある日本家屋や蔵に宿泊したら、心が豊かになりそう。そして、こういった歴史の積み重ねを感じられる空間が失われていくのは悲しい。「空き家対策はスピード感が大事」という平山さんの言葉が胸に響いた。

●取材協力
みのまちや株式会社
・NIPPONIA美濃商家町
・WASITA MINO

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