【金沢の穴場スポット】忍者寺、にし茶屋街…歴史好きも大満足
石川県の県庁所在地である「金沢」。金沢21世紀美術館や兼六園などがあり、金箔は金沢箔と呼ばれ、国内生産量の99%以上を占めている。今回は、それらに比べればまだ知られていない金沢の旅をしてみたいと思う。
私は写真を撮ったり、このような記事を書いたり、また歴史的なものが好きなので、金沢は魅力的な場所だ。しかも、JR東京駅から北陸新幹線に乗って3時間ほどで到着してしまう。魅力は近くにあるのだ。
東京駅
金沢のまだ知らない旅へ
金沢は「加賀百万石」ともいわれ、加賀藩の藩祖・前田利家が築いた街。日本三名園の一つ「兼六園」なども有名だ。北陸新幹線の開通により、観光者数はさらに増えているという。
私が初めてできた彼女と旅行に行ったのも金沢だった。駅を中心にギュッと魅力的な場所が固まっており、バスで回ることもできる。そんな金沢のまだあまり知られていない場所を巡りたいと思う。
金沢のすごいところは、JR金沢駅からすでに観光地ということだ。
金沢で盛んな能楽の鼓をモチーフにした「鼓門(つづみもん)」があり、天井に幾何学模様のガラスが使われた「もてなしドーム」もある。世界の最も美しい駅の1つとして、アメリカのある旅行雑誌に掲載されたことも。
金沢観光は駅に降り立つ1歩目から始まっているのだ。
にし茶屋街
にし茶屋街を歩く
金沢には3つの茶屋街が存在する。加賀藩が城下のいろいろな場所にあった茶屋を集めたのが始まりで、浅野川沿いの「ひがし茶屋街」と犀川沿いの「にし茶屋街」、そして明治になってできた「主計町茶屋街」だ。今回は、「にし茶屋街」に行く。
金沢駅からバスに乗って20分ほど、広小路というバス停に到着する。そこから歩いてすぐの場所に、にし茶屋街はある。
にし茶屋街は、江戸時代に遊郭として整備され、明治になってからも歓楽街として栄え、戦後は料亭が連なり賑わった。紅殻格子(べんがらごうし)の街並みは風情があり、私の感覚だけれど、ひがし茶屋街より人は少なく、ゆっくりと堪能できる。
大正時代に建てられた「西検番事務所」が今も残り、芸妓さんの稽古場として使われている。今も芸妓さんが20人ほどいる街なのだ。歩いていると三味線の音が聞こえてくる。いや、本当はしなかったんだけど、私が三味線の音を口で奏でたから。
桜桃
日本一のカツサンド
にし茶屋街に「桜桃(ゆすら)」というカフェがある。町屋をリノベーションしたカフェだ。北陸新幹線が金沢まで開通した2015年にオープンし、その前は20年ほど続くお寿司屋さんだった。
「金澤カレー」や「ハントンライス」などがメニューに並ぶが、お店の方にお話を聞けば「茶屋のカツサンド」が日本一美味しいとのこと。お客さんがそう言っているそうだ。
フワフワのパンに、サクサクのカツ。そこに企業秘密のソースとバターが馴染む。
食べてみるとわかる、日本一だ。サクサクがこんなにも堪能できるカツサンドは初めてだ。コーヒーは酸味が抑えられているが濃い。最高の食事ではないか。
妙立寺
忍者寺に行く
にし茶屋街から徒歩5分ほどの場所に「妙立寺」がある。忍者寺ともいわれる、日蓮宗に属するお寺だ。加賀三代藩主・前田利常により1643年に金沢城近くから移築建立された。外観からは2階建てに見えるが、実際は4階7層という複雑な造りになっている。
忍者寺といわれているけれど、実は忍者は全く関係ない。賽銭箱が実は落とし穴だったり、本堂裏の床板を取ると地下道への入り口があったりなど、迷路のように建物内が入り組んでいることから、昭和になり忍者寺といわれるようになった。
この建物はお寺であると同時に、出城としての役割があった。敵が侵入してきたときは逃げられるように、敵を倒せるように、といったことを考え造られたのだ。たとえば、「明かりとり階段」は裏から敵の足の影が見え、槍などで刺すことができるようになっている。
建物の中央には井戸があり、その深さは25メートル。水面から少し上に横穴があり、金沢城まで続いているといわれている。ただ、近代になってからは誰もそこを通ったことはなく、また金沢城までは犀川を超える必要があることから、当時の技術で犀川の下にトンネルを掘るのは難しく、犀川くらいまでではないかといわれている。
ロマンの塊のような建物だ。部屋が23、階段は29もある。説明を受けながらお寺を回るのだけれど、誰も彼もが説明を聞いては「おぉ」といっていた。私もいった。自然と「おぉ」が出るのだ。たぶん当時の人々も「おぉ」といっていたと思う。時代を超えて「おぉ」といってしまう場所なのだ。
妙立寺から歩いて3分ほどの場所に「六斗の広見(ひろみ)」がある。金沢城下町の至るところに設置された防火用地でそこだけ広場のようになっている。六斗の広見が有名だけれど、金沢を歩いていると、このような形の道をよく見かけるので、見つけると興奮してしまった。
六斗の広見を後にして、金沢駅近くで一泊した。
大野からくり記念館
からくり記念館でからくりを操る
2日目の本日は、「大野からくり記念館」に行く。金沢駅西口からバスと徒歩で40分ほどだ。
江戸時代末期に金沢市大野に住んでいた、からくり師・大野弁吉の業績をたたえ、同時に近代技術のあけぼのを代表するからくりを展示している施設だ。展示だけではなく、実際にからくりに触れることもできる。
大野弁吉は理化学や医学、天文学などを習得し、エレキテルや写真機、ライターなどを発明した。ゼンマイなどを使った非電力のからくりには感動がある。ここでも私は「おぉ」といっていた。金沢は「おぉ」の街なのかもしれない。
大野エリア
醤油の街を歩く
大野からくり記念館がある「大野」は醤油の街でもある。約400年前に大野の町人・直江屋伊兵衛が、前田利常の命により醤油醸造法を紀州湯浅から学び伝えた。
大野は、醸造に適した湿潤な気候で、白山からの伏流水にも恵まれている。つまり美味しい醤油をつくるのに適した土地なのだ。
大野からくり記念館に向かうには最寄りのバス停から徒歩になるが、それも楽しい徒歩だった。醤油蔵もあるし、古くから廻船業で栄えた街で、町家、旧商家などの歴史的な建物が今も残っているからだ。
つまり時間を忘れて歩いてしまうのだ。この日、結局私は散策に散策を重ね20キロ歩いていた。
しばらく歩き「もろみ蔵」に立ち寄った。1998年にオープンしたカフェだ。醤油蔵をリノベーションしたもので、建物自体は100年ほどの歴史がある。テーブルも醤油樽の底蓋を使ったものだ。
天井を見るとシミがついているのがわかる。ここには本来醤油の大きな樽が並べられ、発酵に使われていた。たまにかき混ぜるそうで、その際に諸味(麹や塩水を混ぜたもの)が飛び天井についたものだ。
こちらではコーヒーなども飲めるがオススメは「しょうゆソフトクリーム」。これがマジで美味しい。醤油のおかげで濃厚さが生まれ、滑らかで全国どこのお店でも売ってくれよ、と思うほど美味しい。ここ数年で私が食べたソフトクリームのなかで1番美味しかった。
その後も大野の街を歩き、金沢駅に戻り、北陸新幹線に乗り東京へと帰った。楽しい旅だった。金沢、最高だ。また彼女と行きたい。彼女いないけど。
東京駅
掲載情報は2022年5月24日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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