「国ガチャ」ツイートが反響多数!? ロシア人モデル・ディアナさんに聞くSNSの流儀
2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻により、難しい立場に立たされている在日ロシア人。とりわけTwitterなどのSNSでは、ロシア人というだけで侮辱するような内容のコメントが投げかけられていることを目にする機会も増えています。
そんな中、来日して6年目でモデルとしても活動しているディアナさん(@_charisma_doll)が、「親ガチャ」という言葉になぞらえて「国ガチャ」という言葉を生み出して話題を集めました。
最近「親ガチャ」って日本語覚えたけど、日本で生まれた時点で「国ガチャ」に成功してるから甘えるな— ディアナ (@_charisma_doll) April 29, 2022
最近「親ガチャ」って日本語覚えたけど、日本で生まれた時点で「国ガチャ」に成功してるから甘えるな
賛否両論を巻き起こしたこのツイート。「説得力がありすぎる」「ぐうの音も出ない」といった声が多数あった一方で、「日本でも貧困格差がある」「個人が抱える辛さは比較できない」といった意見も寄せられていました。
この「国ガチャ」への反応に対して、ディアナさんは「親ガチャ」という言葉に「虐待・自殺という深刻な社会問題が含まれていたのは知らなかった」と補足ツイートを投稿した上で、「ツイートは消すつもりはありません」としています。
ここでは、ロシア第4の都市・エカテリンブルク出身で、現在は関西に在住しているディアナさんに、日本に興味を持ったきっかけや、「国ガチャ」ツイートをはじめとするSNSとの付き合い方、YouTube『ディアナちゃんねる』をはじめた理由についてお聞きしました。
「ロシアに帰れ」「豚の餌になればいい」というコメントも……
ーーロシアのエカテリンブルクから留学で来日して6年目ということですが、日本に興味を持って来日に至った理由を教えてください。
ディアナさん(以下、D):9歳の時、当時見てたアニメについて調べていて、それが日本のものだとわかって気になりはじめて、そこから日本の文化・歴史、ギャルファッション、ビジュアル系に興味を持つようになりました。その頃から日本に住みたいなと思っていて、大学では東洋学部を専攻して日本語の勉強を始めるようになりました。
ーー2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以降、日本人との関わりや生活の中で何か変化はありましたか?
D:実生活での変化は特にないですね。逆にいつも通う銭湯にいる常連のおばあちゃんが気にかけてくれていますね。私が1週間ぐらい銭湯に行かないだけで、心配してくれたり温かい言葉をかけてくれました。
ーー一方、TwitterやYouTubeなどのネットではどうでしょう?
D:日本のネットは匿名性が高いので、TwitterやYouTubeのコメント欄で捨てアカウントを使って「ロシアに帰れ」や「お前らの指切り落としたい」「豚の餌になればいい」などの脅迫めいたコメントが散見されるようになりました。
ーーそういったコメントにはどういった対応をしているのでしょう?
D:批判や誹謗中傷はブロックで対応してましたが、度が過ぎていると感じたものは弁護士を通して対応を進めてます。しかし、そういうアンチも割合的に言うと1割未満で、私への中傷や侮辱コメントを見た人が「日本人として恥ずかしいです」「本当に申し訳ないです」と責任を感じて謝罪してくれる人もいました。私のフォロワーの多くはいつも応援してくれたり、温かい声をかけてくれる人たちばかりなので、今の自分にとってはそういう人たちから元気をもらってます。
ーーネットでの誹謗中傷は日本において問題視されるようになっています。ご自身はどうお感じになっていますか?
D:SNSは影響力が増すほど自分の発信内容やキャラクターが好きなじゃない人の目にも留まってしまう仕組みなので、私のことを初めて知ってもらう過程で、そういうことが起こるのは必ずあると思っているので、特に思うことはないですね。
ーーディアナさんのツイートを見ていると、クソリプに対してリプを返すことも多いように見えます。アンチと戦う流儀のようなものがあるのでしょうか?
D:もともとTwitterで朝に「おはよー」とだけツイートしていたのですが、それだけじゃ楽しくないから、アンチとのやり取りも一緒に添付してツイートしてみると、意外と反響が良くて、晒されたアンチはアカウントを消して逃げたりすることが多いので、二重の効果があるから面白く返せそうな相手を選んで返事してます。
ーーご自身の中で、リプを返す相手の基準のようなものがあるのでしょうか?
D:リプする相手の選び方は、主張内容に論理がなかったり長文で侮辱してくるような人です。基本的にアンチの言ってくる内容の骨組をパクって、ちょっと言い換えて、そのまま言い返して同じ気分にさせてるだけです。よく「お前も煽っているから批判されても仕方ない」って言う人もいますけど、自分から煽りに行ったりとかはしたことないです。
「国ガチャ」ツイートで学んだ事と「違和感」
ーー反響が大きかった「親ガチャ」「国ガチャ」ツイートですが、そもそも「親ガチャ」という言葉を知ったきっかけは?
D:ツイートのネタを探してる時に見つけました。過去にツイッタートレンドで「親ガチャ」というキーワードを見たことがあって記憶に残っていたので、ネットで調べてみた感じです。
ーー「国ガチャ」ツイートへの反応について、率直なご感想をお願いします。
D:補足でツイートもしましたが、あのツイートの意図は今起こっている母国の時事問題を絡めて、自分の「国ガチャ」の失敗を自虐する一方で、日本は治安、生活環境や便利なサービスが多く恵まれているから、親ガチャよりそもそも「国ガチャに成功してる」という、ロシアと日本の生活を経験した私が、トゲのある内容にアレンジした日本への賛辞でした。
ツイートは消すつもりはありません。消したら「逃げた」と言う人はいるし、消さなくても「消せ」と言う人が一定数いるので消す行為自体に意味を感じないから。不快ならワンタップで私を見えないようにミュート、ブロックできるからそうするのがオススメ— ディアナ (@_charisma_doll) April 30, 2022
燃えてるから補足。
ごめんなさい。私の「親ガチャ」の認識は「金持ちと貧乏、わがままを聞いてくれる親、聞いてくれない親」ぐらいのカジュアルな意味だと認識してたから虐待・自殺という深刻な社会問題が含まれていたのは知らなかった。リプライの指摘で勉強になりました。ありがとうツイートは消すつもりはありません。
消したら「逃げた」と言う人はいるし、消さなくても「消せ」と言う人が一定数いるので消す行為自体に意味を感じないから。
不快ならワンタップで私を見えないようにミュート、ブロックできるからそうするのがオススメ
ーーユーモアを含んだ自虐だという感覚だった、と。実際、「言い返せない」「おっしゃる通り」といった反応も多かったように感じました。
D:当初、私の「親ガチャ」の認識は、子供は親を選べないから運任せで人生が決まり、お金持ちと貧乏な家庭環境、ワガママを聞いてくれる親とそうでない親、そういう格差をゲームのガチャポンに例えて「ガチャ」と言うぐらいなので、現代では「ワガママな若者が使う」ぐらいのイメージだと認識していました。
ーーただ、中には当事者からの厳しい意見も寄せられていましたね。
D:「親ガチャ」という言葉はそんな軽いものじゃない、「虐待・自殺問題」という深刻な社会問題の意味があるといった、親から実際に虐待を受けた被害者であろう人や、精神障害を抱えた人からの反応もありました。当初の私の認識とは別の意味があったので、認識不足だったことは認めて、「そういう深刻な背景もあったんだな」と勉強になりました。ただ、深刻な問題が含まれているならば「親ガチャ」というカジュアルな言葉で形容するのは違和感があります。実際に私と同じような認識の人も多くいました。
ーーディアナさん自身に「学び」があったのも良かったと思いますし、改めて「親ガチャ」という言葉の意味を考える機会になったと感じます。とはいえ、誤解して捉える人がいたのも確かです。
D:結果的にあのツイートはバズって多くの人に届いたので、あの短いツイートで文脈を理解する人、理解しない人、肯定的な意見を持つ人もいれば、そうじゃない人がいるのは仕方ないことだと思います。時事問題的な意味で「国ガチャ失敗国」と形容しやすいロシア人の私が言わなかったなら、あそこまでバズらなかったとも思います。
「ロシア側の報道や闇を知ってもらえるキッカケに」
ーー2022年3月にYouTubeを始めていらっしゃいますが、どういう思いで動画をアップしているのでしょうか?
D:私がYouTubeを開始したタイミングがウクライナに侵攻したタイミングとほぼ同じだったので、当初は「戦争で稼ぐな」といった声など賛否両論ありましたが、以前からずっとやろうと思ってました。YouTubeでの発信の考え方はTwitterと同じです。Twitterでは1年前から「パンケーキなう」みたいに適当に呟いていたものから、コンセプトを持たせ、ロシア人の私だからこそ発信できる意味のあるものに変えていきたいと思って方向性を変えてリスタートしました。その中で、既存のロシア人YouTuberと被らないものが良いと考えていました。
ーーディアナさんの場合、「おそロシア」という言葉が象徴するように、ロシアという国の内情について紹介する内容が多いように感じます。ロシア人インフルエンサーとのコラボを何本かアップされていますが、フランクでありながら、さまざまな悩みが垣間見えて興味深かったです。
D:今のロシア人YouTuberは、良くも悪くも「日本での生活、日本のここがいい」というポジティブな内容が多いです。20年以上ロシアに住んでいた私は、当然ロシアの悪い面も見てきました。そういう内容で発信した時にTwitterでの反応を見ると「知らなかった」と興味を持ってくれる声も多かったので、YouTubeも同じスタイルにしようと決めました。そして今、最もロシア・ウクライナ情勢の関心が高まるタイミングでロシア側の報道や闇を知ってもらえるキッカケになると思って、YouTubeをやってます。コラボする時も一応その軸がずれないように意識して発信してます。
ーー最後に、ご自身のこれからの活動について、どうしていこうと考えていらっしゃるのか教えてください。
D:これからもTwitterでの発信は今までのスタイルで変わらず続けていきますが、YouTubeにも力入れていきたいので、興味あればぜひ覗いてください。
ーーありがとうございました!
ディアナちゃんねる(YouTube)
https://www.youtube.com/channel/UCHngf89ISYnpfcMNlXOlFag [リンク]
ディアナさんのTwitter
https://twitter.com/_charisma_doll [リンク]
乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。
ウェブサイト: https://note.com/parsleymood
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