派遣労働なくすのがグローバルスタンダード

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基本的人権の尊重について疑問を抱いてしまいます。日本人はそんなに豊かではないし幸せではないのかもしれません。今回はすくらむ さんのブログからご寄稿いただきました。

派遣労働なくすのがグローバルスタンダード

昨日寄せられたコメントで知ったのですが、ホリエモン氏(堀江貴文氏)が自身のブログ「六本木で働いていた元社長のアメブロ」 (http://ameblo.jp/takapon-jp/entry-10342127545.html)で、「製造業派遣が全面禁止ということになれば、全面的に海外進出ということになるでしょうな」、「マーケットも海外、優秀な人材も海外調達、そして工場も海外ということになっちまうんじゃないでしょうか。そうなると日本には、脱出できない人たちが残って困窮することになるでしょう」と言って、派遣法の抜本改正を求めている反貧困ネットワーク事務局長・元年越し派遣村村長の湯浅誠さんらを指して、「江戸時代に戻ってみんなで農本主義でやっていこうとでも思っているのでしょうか?」などと批判しています。

しかし、そもそも日本における「派遣労働」は、現代に『蟹工船(かにこうせん)』をよみがえらせる、世界でも異常な“働かせ方”であることが、まずもって大きな問題なのです。

大分キヤノンの派遣労働者の時給は1000円。フルに働いても月収17万円に届きません。派遣元の日研総業は、その月収からマンション代4万5000円、光熱費1万5000円などを差し引き、派遣労働者の手取りは10万円を切ります。派遣会社は、企業に「正社員1人分の給料で派遣を2~3人雇えます」と売り込み、企業は安価な労働力として、生身の人間を部品のように、必要なときだけ調達し、景気が悪くなったら路頭に放り出すのです。これがブラックな企業の仕業でなく、日本経団連の会長企業の日常なのです。また、無権利状態に置かれているがために、派遣労働者の労働災害も激増し、2005年から2008年の4年間で、死者128人、死傷者1万7608人にのぼっているのです。

欧米諸国では、日本で言うところの「派遣労働」は、「テンポラリー・ワーク(temporary work)」=「一時的労働」として存在しています。欧米諸国では、臨時的・一時的に業務量が増えたときにだけ使ってもよい「一時的労働」として認められている“働かせ方”で、「業務が恒常化した場合は正規労働者として雇用する」のが当たり前のルールになっています。

欧米諸国では「一時的労働」に限定されている“働かせ方”なのに、日本では、最初から人件費が安い労働者を、細切れでも長期でも可能な形で使おうというねらいで導入されたため、「一時的労働」と訳さず、意図的に「派遣労働(dispatch work)」と“誤訳”して、「一時的労働」ではない「恒常的労働」に「派遣労働」を活用し、正規労働の置き換えに利用したわけです。

日本で言うところの「派遣労働」は、世界には通用しない働くルール破りなのです。ですから、そもそも「グローバルスタンダード」と言うのなら、「派遣労働」をなくして「一時的労働」にしなければならないのです。

ヨーロッパ諸国では、同一労働同一賃金、均等待遇が貫かれていますから、企業にとっては、もともと「一時的労働」であるという位置づけと、「派遣労働者」を使っても正規労働者を使っても人件費は変わらないので、派遣の比重は大きく増えないのです。

こうして、現代によみがえった『蟹工船(かにこうせん)』=「派遣労働」が、「貧困スパイラル(http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10214615375.html)」 を生み出して、労働者の低処遇化と無権利化が進行し、下のグラフのように、日本の労働者の賃金は世界的に見ても低くなっているのです。

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図1:時間当たり賃金 製造業 ※日本の数字は2007年
労働政策研究・研修機構『データブック国際労働比較2009』 より引用
http://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/

また、下のグラフのように、国際比較でも労働分配率が低くなっています。

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図2:労働分配率の国際比較
IMF『World Economic Outlook 2008』より引用
http://www.imf.org/external/pubs/cat/longres.cfm?sk=22028.0
http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2008/02/pdf/text.pdf

9月4日に財務省が発表した『法人企業統計(http://www.mof.go.jp/ssc/kekka.htm)』 によると、資本金10億円以上の製造業大企業の1998年度の数字を100として、2008年度の数字を見ると、経済危機の影響で経常利益は99まで落ち込んでいますが、利益剰余金は121、配当金270で、依然として製造業大企業の体力は十分にあるのです。

それから、下の表のように、製造業だけで見ると、必ずしも、海外現地法人の方が、常に利益率が高いわけではないのです。2005、2006年度は、国内法人の方が、海外現地法人よりも利益率は高くなっています。製品の品質性が競争力の重要な要因となっている製造業においては、人件費の高低のみでは市場競争力は規定できず、労働力の質を含む企業の競争力が問題になっているのです。ですので、ホリエモン氏が言うところの「製造業派遣が全面禁止ということになれば、全面的に海外進出ということになるでしょうな」というような、そんな単純な話ではないのです。

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図3:現地法人売上高経常利益率の推移
経済産業省『海外事業活動基本調査結果(2007年度)』より引用
http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kaigaizi/result/result_38/result_38.html

また、そもそも日本の大企業は、ヨーロッパに進出していますが、そこでは、現地の派遣労働者に対して正規労働者との均等待遇を当然保障しています。それでも、国際競争力がなくなって、ヨーロッパから日本企業が撤退するというようなことはないのです。

東京商工リサーチの2003年の調査によると、「自社の最大の強みは?」という質問に対する企業の回答は、「信用力」が54%でトップ、つづいて、「商品・サービス力」、「技術力」、「ブランド力」の順で、「価格競争力」はわずか3%です。この調査へのコメントとして、当時のシャープの町田社長は、「日本企業が国際競争力を強化するには、なによりも独自技術にこだわる決意が必要」(『日本経済新聞』2003年5月8日付)と語っています。

それでもなお、あくまで企業は低コストを求めて、グローバル展開をするだろうという点については、各国における企業への規制が現在動き出しています。大企業が本国での課税を逃れるために国外に逃げ出すことについて、それを阻止する国際課税の強化が各国の共通課題になっているのです。アメリカやヨーロッパ諸国は、ケイマン諸島などのタックスヘイブン(租税回避地)を利用する課税逃れを厳しく摘発し始め、タックスヘイブンを利用した多国籍企業の利益隠しへの課税強化を進めています。

最後に、このブログで以前取り上げた(http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10230255889.html)、第一生命経済研究所主席エコノミストの熊野英生さんの主張を紹介しておきます。

———–以下引用
非正規雇用を増やしてきたということは、実は、労働コストの面ではそれが低下したんですが、所得の面でも同時に低下した。つまり、賃金というのは企業にとってはコストであるんですが、家計にとっては総需要の基になる所得になるんですけれども、この労働コストについては、例えば卑近な例で時間給で表してみますと、非正規雇用の人たちの時間給は、去年の6月のベースの調査では、大体ざっくり言うと1時間当たり1200円、これに対して正社員については2400円、倍ぐらい違うんですね。

つまり、ウエートが26%から32%に増えたということは、それだけ時給の低い労働者の数が増えたということなので、その効果によって全体の労働コストが下がってきた。

こういう非正規雇用の人たちが増えたことに対しては経済論壇を始めとしていろいろな議論があります。例えば、時給が低い人たちが増えないと、日本は海外に比べると労働コストが高過ぎて日本から海外へ産業空洞化が起こる、企業が移転してしまうんじゃないか、だから非正規雇用化は正当化されるべきだという意見があるんですが、私は意見を異にします。

なぜならば、私がいろいろ輸出企業の経営者から聞いている話はそれと違います。日本の労働コストが高いから海外に移転するというよりは、日本の内需にいつまでもしがみついていても輸出企業は、製造業は成長しない。したがって、インドや中国、ベトナムの方が内需の成長ペースが高い、つまり労働コストではなくて市場の成長力に注目しながら海外へ進出する企業は増えている、つまり、非正規雇用が増えるということは裏表の関係として日本の内需の成長力を落としていると。折しも、2005年以降は日本の人口の減少がだんだん広がってきた時期です。つまり、労働の単価が低いとその分だけ人口減少に引きずられる形で内需の成長力は弱くなる、したがって企業は成長力の乏しい日本から海外へ行ってしまうと。

つまり、これは恐らく中長期的な構造改革として、正社員を増やす、つまり時給の倍ぐらい違うその倍の部分というのは、これは人的資本というんですけれども、スキルの部分、あるいはいろいろな労働のクオリティーに対する高い対価を得る、そういうふうな正社員、つまりスキルを高めるような形で賃金を上げていくことが恐らくは内需の成長力を復活させ、海外に出ようとしている企業を国内に押しとどめ、それが日本の経済活性化につながっていくと。そういうふうなビジョンからいうと、2002年から現在に至るまでの労働市場における構造改革というのは課題が残っているんではないかということが言えると思います。
———–引用ここまで
※『第一生命経済研究所主席エコノミスト・熊野英生さんの参考人意見陳述』
「3月13日、参議院予算委員会の国会議事録」より引用

(byノックオン)

執筆: この記事はすくらむ さんのブログより寄稿いただきました。
文責: ガジェット通信

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