「こてんぱんに叩きのめして前に進んで欲しいんです」 振ったことを悩む一途ビッチな後輩と先輩のマンガに考えさせられる「優しさ」 

中学の時から勉強を教えてくれていた先輩の久水悠生をグイグイ追いかけて、恋人になった後輩の百合野歩の心象を瑞々しく描き続けている色のんさん(@iro_ironon)のマンガ『一途ビッチちゃん』(KADOKAWA)。ここでは、歩の高校卒業が近くなって「告白ラッシュ」を受けることが多くなったエピソード「告白と涙の話」と、元気のない歩に悠生が何があったのか聞く「人を振ったあとの話」をお届けします。

※参考記事 「先輩が積極的」「末長く爆発して」 恋人になった一途ビッチな後輩から「ごほうび新制度」をおねだりされるマンガが甘すぎだった
https://otajo.jp/100043 [リンク]

「告白と涙の話」

「百合野さんのことずっと前から気になってて…」という男子に「無理」とばっさり断る歩。下駄箱の前で委員長こと松瀬美羽に「今年もすごいわね、『百合野詣で』。今日だけで5人じゃない?」と言われて「うぅ…」とぐったりしているところに、「お前振られたの!?」「ワンチャンやりたかったわ〜」「俺も記念に告ろっかな〜」という男子の会話が耳に入り激おこ。委員長も「最低ね…」と同情したところに、ラブレターがはらりと落ちます。

「う〜〜〜…」となり「頑張りなさい…」と委員長に送り出されて指定された場所に行くと……。「あの、俺…っ、ずっと百合野さんのことが好きで…」と告白され、いつも通り「無理」と切り捨てます。「そっか。そうだよね」という男子にイライラしますが、「…でも、伝えられてよかった。さよなら…」と涙目の笑顔で言われて心臓がズキッと……。

胸を押さえて「……?」となった歩。部室で「ただいまー」「おつかれさま」と迎えた委員長ですが、「なんか様子がおかしい気が…? 変なこと言われたのかしら…?」と察知。単純に疲れたのかもしれないと、「何か飲み物買っ」と行こうとしますが、「ねぇ」と腕を掴まれ、「私、ひどいやつかな」と尋ねられて「!?」となります。「委員長、それでも…」という歩、「そばにいて」と不安そうにお願いされ、尊すぎて大量の鼻血を出す委員長。「仕方ないわね…」「でも血が…」「こんなの平気よ」と強がり、ぽたぽたと垂らしながら「命尽きるまでそばにいる所存」と決意するのでした。

「人を振ったあとの話」

その後、なんやかんやで久永家にお邪魔して、尊み成分を過剰摂取することになった委員長。「大丈夫…?」と心配する悠生に「慣れてるので」といいつつ、「まったくもう、あなたたちがイチャつくから…」と文句を言いますが、歩がお母さんからの電話で離れたタイミングで、「あの…、あの子、実はさっきまで元気なかったの」と教えて、「…聞いてあげてください。あなたには話せると思うから」と伝えます。

「い…美羽、もう帰っちゃいました?」という歩の頭をなでなでする悠生。「!? せんぱ…!?」「歩、何があったの?」と優しく訪ねます。

ベンチに座って「今日、告白されたんですけれど、…たぶん本気だったのに、話も聞かずに断っちゃったんです」という歩。「…後悔してるの?」と聞いて「少し…」との答えに「えっ」と思う悠生ですが……。

「全力で断るべきでした」という歩に「……え!!?」と驚く悠生。歩は「やっぱり全力には全力で返さないとですよね…」と反省します。「『優しく断りたかった』とかじゃないんだ…」という悠生に、「だって、…フラれるのに優しくされたらつらいですよ。『望みがあるかも』って思っちゃうし、うだうだ期待させるより、こてんぱんに叩きのめして、前に進んで欲しいんです」と話します。

悠生は、高校の同級生の菊沢あまねのことを思い出し、「あぁ、そうか。優しさでも人は傷つくのか」と気づきます。

あまねとの会話を振り返り、「気付かないうちに菊沢をたくさん傷つけていたのかもしれないと思ったから、だから俺は友達としてでも優しくしたかった。でもそれは、俺のためでしかなかったのかもしれない。…『優しくしてた』なんて言うのはおこがましいけど」と考える悠生。「バカだなぁ俺…」と思っているところ、「せんぱーい?大丈夫ですか…」と心配げな歩をぎゅっと抱きしめます。

兄の遥太の「お前が思ってる以上にお前のこと好きなやつがいるってことくらいは知っておけよな」という言葉を反芻して、「せっ、先輩…?」ときょとんとした彼女に、「…歩は、優しいな」というのでした。

歩に対して「やっぱり強い子」という反応が多数寄せられていたほか、「優しさって難しい」「心に沁みる」という声が続出していたこのエピソード。色のんさんは「恋したきっくーの話を描いていくなかで、振った悠生自身が、彼女に対してどう接すればいいのか分からなくなっているんじゃないか、と感じていたんです」といい、「悠生はあまり人を振った経験がないから、そのあとどうするべきなのかずっと悩んでいて。一方で歩はよく告白されてきた経験があるので、歩なりのベストな対応を見つけてきていました。そんな歩の姿を見ることで、悠生は自分の中のずるさ――それは優しさでもあるんですけど――を自覚して、またひとつ成長する。そんな話を描いてみたかったんです」と話します。

「ずっと燻っていた悠生の迷いが、ひとつの結論に辿りつく瞬間を描くことができて満足する反面、”悠生が間違い”で、”歩が正解”になってしまわないか、少しだけ心配でした」という色のんさん。「どっちも優しい」「2人とも大切ななにかに気づけたんだね」という声が上がっていたことに、「私自身は恋愛に正解はないと思っているんです。だから、歩の“振られた後に優しくされるのはつらい”という言葉への共感の声もあれば、それでも悠生も優しいという声もあって、色んな視点から感想を言って頂けて、とても安心しました」と話してくれました。

2021年12月16日に第4巻が刊行され、晴れて恋人同士になった歩と悠生が描かれている『一途ビッチちゃん』。「これもひとえに読者の皆さんが応援してくださったおかげです…! 担当さんにもとても助けられていて……本当に、私一人の力ではここまで描けなかったと思っています。皆さんに感謝しかないです」という色のんさん。歩と悠生だけでなく、それぞれの家族や友人たちがどのような歩みを進んでいくのか、「これからも見守っていきたい」と思わせる作品になっているのでぜひチェックを!

※画像はTwitterより
https://twitter.com/iro_ironon [リンク]

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ふじいりょう

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

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