【召喚連載】メガテン大司教・鈴木一也の邪教の館 第13回「プーチンの戦争1」
鈴木大司教「我は汝を召喚す、生まれ無き者よ! ……アオス! アバオス! バスム! イサク! サバオス! イアオ! 汝、迅く来たりて我が前に従え! ソロモン王に封じられし戦を呼ぶ地獄の侯爵、魔神アンドラスよ!」
アンドラス「グガアァーーーー!!!!! 燃え上がれ戦火!! 迸れ鮮血!! 古き善き時代よ来たれ!」
大司教「偉大なる侯爵よ、そうあからさまに喜ぶな」
アンドラス「貴様には分かるまい! この血湧き肉躍る喜びは! 硝煙の匂い、血潮の匂い! 腸から溢れるクソの匂いと!」
大司教「それの何がいいのやら……」
アンドラス「ガアハハハハハハ!! 我は気分が良い!! 何でも答えてやろう!」
大司教「聞きたいことはたくさんある」
グラマラス・カルパッチョ
大司教「では今回の贄を賞味いただこう。サーモン、イカ、スズキのカルパッチョ、ルッコラ、イタリアンパセリ、バジル、ディルなどの香草を合わせ、黄色のプチトマトを添えた」
アンドラス「ガァ! 見た目も鮮やか! この赤い実は?」
大司教「ボアブルロゼ、ピンクペッパーと言われるが、胡椒とは別の種類の爽やかなスパイスだ」
アンドラス「見事だぁ! 魚も新鮮だが、香草がその味を際立たせている」
大司教「よく味わう者の糧となれ」
アンドラス「カァカァ! 満足だぁ。それで、ウクライナのことであろう?」
大司教「そうだ。この許しがたいロシアの暴挙を止めるにはどうしたらいいのだ!」
・プーチンの野望を砕け?
アンドラス「ガァッガガガガガガ!!! 甘い、甘いぞ大司教!!」
大司教「確かに……簡単には戦争は終えることはできないだろう……だが……」
アンドラス「があっ!! そこではない!!」
大司教「どういう意味だ?」
アンドラス「ロシアの暴挙と言ったがぁ? そも戦争を止めるには、なぜ戦争が起きたかを理解しなくてはなぁ!」
大司教「それは、ウクライナのNATO加盟を阻止するためではないのか?」
アンドラス「一面的には正しい。だがぁ、なぜこの時期に侵略に踏み切ったかだ!」
大司教「ウクライナのゼレンスキー大統領が、NATO加盟を言い出したからではないか」
アンドラス「大司教、お前もテレビの毒電波にやられてしまったがぁ? 戦争を始めるには入念な準備が要る。ロシアは何年もかけて侵攻作戦を練っていたし、そもそも紛争状態というのはクリミア侵略の前から始まっているがぁ!!」
大司教「理解はしている。それも強壮なる大ロシアを復活させるプーチンの野望であろう?」
アンドラス「オオモトはそうだぁ! その大ロシア幻想があったからこそ、プーチンは罠に嵌められたのがぁ!」
大司教「罠だと!? いったい誰が? ……まさか、バイデン?」
アンドラス「があ、そう急くなぁ! まずはバイデンとウクライナの関係から話してやろう」
ウクライナに浸透するバイデンファミリー
アンドラス「オバマ政権の時代、バイデンは副大統領として6度もウクライナを訪問し人脈を築く一方、ウクライナのNATO入りを強く推し、なんとウクライナ憲法に[NATO加入を目指す]と入れさせたガァ。そして対ロシアの対決姿勢を強めていったのガァ~」
大司教「なんだと? そのころからの因縁なのか!」
アンドラス「クリミアがロシアに奪われた直後の2014年4月には、息子のハンター・バイデンが、ウクライナのエネルギー企業最大手プリスマの取締役に就任したぁ。そしてウクライナとしては超破格の月500万円の報酬を得ていた。非常勤の癖に5年間もなぁ!」
大司教「なぜ、そんな高額の俸給を……?」
アンドラス「プリスマは脱税やマネロンでウクライナ当局の追求を受けていたがぁ……バイデンはそれを止めさせた。その代償としてオバマ政権はウクライナ政府に10億ドルの融資をしたのだガァ!」
大司教「バイデンの汚職ではないか、アメリカ議会はなぜ追求しない?」
アンドラス「大統領がトランプに変わり追求されたが、真相を究明するためウクライナを脅したとかで、逆にトランプが責められる始末だぁ」
大司教「アメリカはいったいどうなってるのだ?」
アンドラス「バイデン家だけじゃない! 何人もの有力な民主党議員の子息が、重要なウクライナ企業の取締役に就任しているガァー!!」
アンドラス「バイデン政権の外交の最重要ポストがすごいのだガァー」
大司教「どうすごいのだ?」
アンドラス「日本の外務大臣にあたる国務長官にアントニー・ブリンケン。こやつの父はウクライナ・ユダヤ人、母はハンガリー・ユダヤ人で、ガチガチの反ロシアだぁ。さらに国務次官のトップにはヴィクトリア・ヌーランド。この女もウクライナ系ユダヤ人の家系で、最強のロシア嫌いだガァ! ウクライナに入って親露の大統領を追放するデモに参加するという、前代未聞の内政干渉を堂々とやってのけた玉ダァ! そして現ウクライナ大統領ゼレンスキーもまたユダヤ人だガァ!」
大司教「スターリン時代のロシアでは、ユダヤ人はナチスの強制収容所以上に虐〇された。歴史的にもウクライナやハンガリーなどロシアの周辺国はみな、ロシアに酷い目に遭わされ続けている。日本とは違って恨みは世代を超えてゆくのだな」
アンドラス「人間という生き物は、感謝はすぐに忘れるくせに、恨みはいつまでも忘れないという、可愛い存在ダガァア!」
ウクライナの憎悪
大司教「そんな恨みがあるのに、なぜ親露政権が誕生するのだ?」
アンドラス「現実的な問題グァー。産業が発展した東部ウクライナにはロシア語を話すウクライナ人というガァ……ロシア系住民が多い。ロシアとの経済的結びつきも深い。さらにウクライナのエネルギーは、すべてロシアに依存しているガァ」
大司教「それでクリミア併合に続いて、ロシア東部の2州の一部、ドネツクとルハンスクが独立するのか」
アンドラス「プーチンは、ロシア系住民がファシストによって虐〇されたためと言っている」
大司教「世界中でそれはデマだと断じているようだが?」
アンドラス「ガァ……ホロドモールを知っているガァ??」
大司教「いや、知らぬが」
アンドラス「革命という血塗られた惨劇の結果、ソビエト連邦が誕生してまもなくの頃ダァ。独裁者ヨシフ・スターリンは貧乏国家を軍事強国にするために、外貨を稼がねばならぬガ~。そこでウクライナの小麦を根こそぎ奪い、外国に売り払ったのダァ!」
大司教「それは酷い。農民はひどく困窮したはずだ」
アンドラス「さらに不作も追い打ちし、飢餓で800万人ほどが死んだのガァ!」
大司教「そ、そんなまさか……800万だと!? まさに地獄だ……」
アンドラス「これが飢餓虐〇、ホロドモールだガァ!!!」
大司教「惨すぎる………」
アンドラス「馬糞を食って唯一生き残った少女もいた」
大司教「むしろ馬を食え!」
アンドラス「ウクライナのどこまでも広がるヒマワリ畑の下には、無数の餓死者の屍が眠っているガァガァガァ!」
大司教「スターリンは人間ではない、悪魔だ!」
アンドラス「一緒にするなグァ!!」
アンドラス「ウクライナ東部が特に酷かったらしいガ。人の消えた農地には、新たにロシア人を入植させた」
大司教「なん、だと? では、今の独立した二カ国というのは……」
アンドラス「入植したロシア人の末裔たちダァ」
大司教「それは、恨みも買おう」
アンドラス「悪魔もドン引きのホロドモールの後、ウクライナをロシアから解放したのは、だ~れダァ??」
大司教「時代からすると……ま、まさかのナチス・ドイツ!」
アンドラス「ガガガガ! 大司教大正解だガァ!! ドイツ占領下のウクライナ義勇兵は、自ら進んでドイツ軍に組み込まれ、喜んでロシア人を殺しまくったガァ! その思想的流れを組む極右民兵組織が、アゾフ連隊として今のウクライナ軍に組み込まれているのだガァ!!」
大司教「それでプーチンがウクライナをナチス呼ばわりするのか?!」
アンドラス「連隊のシンボルは、ナチのスワスチカと親衛隊のSS徽章の合体を思わせるデザインになっているガァ! 兵団としては、ウクライナ軍のごく一部だが、東部ウクライナで悪さをするには充分な兵力だぁ!」
※ウィキペディアより
アンドラス「東ウクライナの親ロシア暴動鎮圧によるロシア人虐〇だけじゃないのダガァ! トルコから殺〇ドローンを輸入して無差別殺〇を繰り返している。黒海沿岸の重要な港湾国際都市オデッサでは、親露派が立てこもる労働組合ビルに放火した。46名が亡くなり、200名以上を負傷させた愚連隊だぁ!」
大司教「憎悪の連鎖は断ち切れないのか……」
アンドラス「憎悪と恐怖が人類の文明を進歩させてきたのダァ! 人類は進歩を止めてはダメだガァ?」
戦争の理由
大司教「では、本当にプーチンは東ウクライナにおけるロシア人虐〇を止めるために戦争を仕掛けたのか? そしてその虐〇がバイデンの罠だというのか?」
アンドラス「ガァーガッガッガッガ!! 確かにバイデンの罠かも知れんが、虐〇を止めるはあくまでも大義名分ダァ」
大司教「バイデンがウクライナに肩入れしていたのは分かった。ではなぜ、バイデンとプーチンはそこまでウクライナで争うのだ?」
アンドラス「まさにそこダァ!! この戦争は、バイデンとプーチンのウクライナの奪い合いなのガァー!!」
大司教「ほんとうに、そんな単純なことなのか? だとしたら、ウクライナの民は余りに悲惨だ」
アンドラス「とはいえ、ウクライナがアメリカの手に落ちれば、ウクライナと密接なロシアにも、アメリカの触手は感染するかのように伸びてくるガァ」
大司教「それはそうだが、結局はそれが経済発展につながるのではないか?」
アンドラス「プーチンがどれだけユダヤ系企業を恐れているか! ロシア人が金持ちユダヤ人を恐れるのは、もう病気と言っていいダガァ!」
大司教「それほどなのか?」
アンドラス「かの文豪ドストエフスキーも、金拝主義のユダヤがロシアを滅ぼすと考えていたガァ! プーチンもロシアのユダヤ系新興財閥を次々潰して資産を奪い、おのが配下の者に企業ごと与えているのダァ!」
大司教「ならば今は、ユダヤ人による復讐を恐れているのかも知れぬな……」
アンドラス「ロシアは図体はデカイが、臆病な国ダガァ! そこに罠を仕掛けられた。今ウクライナを失うと、ロシアも失われるぞと……」
大司教「NATOに加盟したいというゼレンスキーの発言、これも罠の一部なのか?」
アンドラス「NATO加盟はすでに憲法に書かれているくらいだぁ! 本質はそこではない」
大司教「ではなんだ?」
アンドラス「バイデンは、去年からウクライナ問題でアメリカは派兵しない、と何度も明言しているのダァ!」
大司教「みえみえの罠ではないか?」
アンドラス「トランプが行っていたウクライナへの軍事支援も止めていた」
大司教「しかもNATOの大陸諸国はロシアから格安の天然ガスの供給を受けているから、ロシアと強く敵対できない!」
アンドラス「そう、バイデンの発言は、ロシアのウクライナ侵攻をアメリカは容認する、と取れるのダァ!! そして今なら妨害なくウクライナに進めると、プーチンの目の前に視界が開けた」
大司教「たとえ罠だとしても、それを敢えて踏み、そして踏み破り突き進んで勝てばいい」
アンドラス「こうして、状況は整えられた……ガァ」
<第14回に続く・・・>
イラスト:闇雲大佐
悪魔:アンドラス(Andras) 古代ユダヤのソロモン王に封じられたという72柱の悪魔のうち63番目の1柱。不和の侯爵として知られる。地獄では悪魔の30の軍団を率いる大侯爵である。フクロウかカラスのような凶相の鳥の頭部を持ち、鞘走れば燃え上がる鋭利な剣を携え、巨大な黒狼に騎乗する堕天使の姿で現れる。争いと不調和を人々の間にもたらす権能を持つ。その本質は残虐で暴力的とされる。召喚者の敵を仲間割れで自滅させる。しかし召喚者自身が不適格ならば、その能力を使って召喚者とその仲間を引き裂き、殺し合わせるという。『真・女神転生 ―東京黙示録―』では、吉祥寺ライブハウス、ゴールデンエレファントで行われたサバトに於いて、小林章人によりロックギタリストの肉体を触媒にして召喚される。
筆者:鈴木一也(すずきかずなり) 1960年11月1日東京生まれ。ゲームクリエイター。代表作『女神転生』『女神転生Ⅱ』『真・女神転生』『モンスターメーカー』シリーズ。『偽典女神転生』『新世黙示録TRPG』『ジェットインパルス』『つきびと』など多数。デジタルデヴィル(株)代表。専門学校TECH.C.にてゲーム講師を務める。父にアナログゲームのクリエイターである鈴木銀一郎がいる。
もっと詳しく読む: 【召喚連載】メガテン大司教・鈴木一也の邪教の館 第13回「プーチンの戦争1」(バズプラス Buzz Plus) https://buzz-plus.com/article/2022/03/27/megaten-suzuki-putin-news/
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