「今は不動産の買い時」。あえてそう考える人の理由とは?

あえて「今は不動産の買いどき」。そう考える人の理由とは?

全宅連・全宅保証協会では、毎年9月23日を「不動産の日」と定め、消費者向けに、住居の居住志向及び購買等に関する意識調査を実施している。今回公表した、2021年9月23日~11月30日までに実施した調査結果(有効回答数2万3349件)を見ると、買い時について揺れている消費者の様子が見てとれる。

【今週の住活トピック】
2021年「不動産の日アンケート」結果公表/全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)・全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証協会)

不動産の買い時かどうか、判断できない人が多い?

東京都に出された4回目の緊急事態宣言は2021年7月12日~9月30日まで。この間の7月23日~8月8日は、東京オリンピックが開催されていた。全宅連・全宅保証協会の調査時期は、この緊急事態宣言の終盤から宣言が明けて新型コロナウイルス感染者数がかなり抑制されていった時期に該当する。

この時期に「いま、不動産は買い時だと思いますか?」(単一回答)と聞いたところ、「買い時だと思う」が10.5%、「買い時だと思わない」が25.6%、「分からない」が63.9%となった。これを前年と比べると、「買い時だと思う」が減少して、「分からない」が増加する形となった。

「分からない」という回答は6割を超え、過去最高水準の数値になったという。市場が読み切れず、判断ができない人が多かったということだろう。

Q1.いま、不動産は買い時だと思うか?(単一回答)(出典:全宅連・全宅保証協会「2021年『不動産の日』アンケート結果」より転載)

Q1.いま、不動産は買い時だと思うか?(単一回答)(出典:全宅連・全宅保証協会「2021年『不動産の日』アンケート結果」より転載)

「買い時だ」VS「買い時でない」それぞれの理由

では、「買い時だ」「買い時でない」と思った理由はなんだろう?

買い時だと思う人に対して「買い時だと思う最も近い理由は何ですか?」、買い時だと思わない人に対して「買い時だと思わない最も近い理由は何ですか?」とそれぞれに聞いて、選択肢を1つ選んでもらった結果が次のものだ。

不動産が買い時だと思う理由(買い時だと思う人のみ)  不動産が買い時だと思わない理由(買い時だと思わない人のみ)

「買い時だと思う」「買い時だと思わない」理由(出典:全宅連・全宅保証協会「2021年『不動産の日』アンケート結果」より転載)

まず、「買い時の主な理由」から見ていこう。
■「住宅ローン減税など住宅取得の為の支援制度が充実しているから」41.4%
■「不動産価値(価格)が安定または上昇しそうだから」25.4%
■「今後住宅ローンの金利が上昇しそうなので(今の金利が安いので)」22.5%

次に「買い時ではない主な理由」を見よう。
■「不動産価値(価格)が下落しそうだから」が28.8%
■「自分の収入が不安定または減少しているから」26.5%

不動産価格が横ばいまたは上昇と見るか、下落と見るかで、買い時感が変わっている点が興味深い。価格の件を除くと、「買い時」では「支援制度が充実」や「金利が上昇しそう」、「買い時ではない」では「収入が不安定など」が主な理由になっている。

さて、買い時理由1位に挙げられた住宅ローン減税だが、実は2022年からは2021年と制度内容が変わっている。住宅ローン減税の控除率が1%から0.7%に下がり、控除期間が10年から13年に延びるなどの制度変更があったが、2025年末まで延長される。制度変更によって減税額が2021年より減ってしまう人もいるが、それでも当初13年間あるいは10年間にわたり、ローンの利息に相当する程度の額が還付される効果は大きい。

また、住宅取得資金として贈与をした場合の非課税枠についても、2022年から限度額が下がるが、2023年末まで延長される。ほかにも、リフォームに関する減税や各種の補助金などもいろいろあるので、購入を支援する制度は多いと言えるだろう。

一方、買い時ではない理由2位の「収入の不安定や減少」については、その程度にもよるだろうが、住宅ローンを組むにはリスクがある。たしかに、買い時ではないと思う大きな理由になるだろう。

買い時に影響する、金利は?住宅の価格は?

では、住宅ローンの金利や住宅価格はどうだろう?

まず、住宅ローンの金利については、日本銀行が政策金利をゼロあるいはマイナス金利に誘導し、景気や物価を押し上げる政策を取っているので、住宅ローンも長期間低金利が続いている。

一方で「金利の先高感」を持つ人も多い。実際に、2022年の2月、3月と長期間金利を固定する【フラット35】や固定期間選択型の当初10年間だけ金利を固定する「10年固定」などの金利が上がっている。これは、市場の短期金利と長期金利の動きの違いによるものだ。市場の長期金利が、コロナ禍でも先行して経済が活性化したアメリカの物価上昇(インフレ)と利上げの動きなどによって上昇したことで、長期金利と連動する【フラット35】や10年固定の金利が上がったという構図だ。市場の短期金利に連動する「変動金利型」の金利は変わっていない。

金利については、この先を予測することは難しいが、これ以上はもう下がる余地がないところまで来ているので、上がることはあっても下がる可能性は低いと言ってよいだろう。

次に、見方によって買い時感が変わる「不動産価格」だ。不動産価格が下落すると見た人のなかには、一部に「東京オリンピックが終わったら不動産価格が下落する」といった噂が流れており、そうした影響もあるのかもしれない。筆者の専門は住宅なので住宅価格について見ると、現時点で住宅価格は下落していないし、コロナ禍のテレワークの普及などによる新たな需要も生まれ、新築も中古も上昇傾向にある。

特に新築の価格は、土地値や建築費用、金利などの影響を受ける。いずれを見ても、今後下がる見込みのものはないので、住宅価格も下落するよりは横ばいか上昇する可能性のほうが高いだろう。

さて、金利も住宅価格も、グローバル経済の影響を強く受けるものだ。数年前は、新型コロナウイルスなどの感染爆発が世界中で起きるとは想像もしていなかったし、直近でも、軍事力で他国に侵攻する事態を想像できた人も少なかっただろう。たとえ専門家といえども、金利や不動産価格を予測することが難しいのが現実だ。

となると、買い時かどうかは、子どもの成長や家族構成の変化、生活環境の変化などで「自分自身に住宅を買う理由があるかどうか」、が一番の決め手になるのだろう。子どもの成長は待ったなしだし、不満のある住宅に住み続けるのは不便だろう。思い立った時が買い時、と考えれば、予測が難しい金利や価格をそれほど気にする必要はないかもしれない。

●関連サイト
「2021年「不動産の日アンケート」結果公表/全国宅地建物取引業協会連合会・全国宅地建物取引業保証協会

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