コロナ禍でもリフォームは堅調。新生活の様式への対応も
コロナ禍によって生活スタイルは大きく変わったが、住宅やリフォームもその影響を受けている。住宅リフォーム推進協議会では、住宅リフォームの実態を把握するために、リフォーム事業者・一般のリフォーム消費者(実施者・検討者)向けにそれぞれ調査を行った。さて、コロナ禍においてリフォームの実態にどんな変化があったのだろうか?
【今週の住活トピック】
2021年度「住宅リフォームに関する消費者・事業者実態調査」令和4年1月公表/(一社)住宅リフォーム推進協議会
コロナ禍で変化した消費者のリフォームニーズ
まず、リフォーム事業者の調査結果を見ていこう。
回答した事業者の内訳を見ると、工務店が54.2%、リフォーム専業事業者が23.4%、ハウスメーカーが4.4%、デベロッパーが1.1%などとなっている。設計事務所などは回答事業者には含まれない。また、居住用物件のリフォーム工事の年間施工件数は、「10~100件未満」が41.6%、「100~500件未満」が30.1%となっている。
事業者に、消費者への情報提供件数について、2019年度と2020年度を比較してもらったところ、48.0%と半数近くが「変わらない」と回答した。一方で、「減少した」が35.9%、「増加した」が16.1%となり、なんらかのコロナ禍の影響があったことがうかがえる。
また、「増加した」と回答した事業者に、消費者ニーズの変化について聞いたところ、「テレワークのスペースの確保」、「換気設備の更新」、「非接触型器機への変更」、「温熱環境の改善」が多く挙がった。
事業者:コロナ禍による消費者ニーズの変化(出典/(一社)住宅リフォーム推進協議会「2021年度住宅リフォームに関する消費者・事業者実態調査」令和4年1月公開資料の結果をもとにSUUMO編集部作成)
「テレワークスペースの確保」は、テレワークの普及によるもので、「換気設備の更新」、「非接触型器機への変更」は、新型コロナ感染予防によるもの、「温熱環境の改善」は、在宅時間が長くなるなかで冷暖房効率のための断熱改修ニーズの高まりということだろう。
「築10年以上15年未満」では初回のリフォームが76.5%
次に、「リフォーム実施者調査」を見ていこう。調査対象は、過去3年以内にマイホーム(築10年以上)のリフォームを実施した25歳以上の人だ。
直近に実施したリフォームが何回目なのかを聞いたところ、「初回」という人が過半数の53.1%、次いで「2回目」の24.7%となった。それを物件の築年数別に見ると、「築10年以上15年未満」では「初回」が76.5%と最も多い。以降、築年数の長期化に伴い、リフォームの回数が増える傾向がある。
筆者が注目したのは、物件の取得とセットでリフォームしたか、もともと保有していた物件をリフォームしたかだ。物件の取得と合わせてリフォームした人では「初回」の割合は67.7%とかなり高いが、保有していた物件をリフォームした人では「初回」の割合は48.1%になる。調査対象となる築10年以上の物件を取得した人では居住する前にリフォームする意向が強く、居住中の人では物件の築年数が長くなって老朽化を感じたり不具合が生じたとき、その都度リフォームするという姿が見て取れる。
実施者:リフォーム実施回数(出典/(一社)住宅リフォーム推進協議会「2021年度住宅リフォームに関する消費者・事業者実態調査」令和4年1月公開資料の結果をもとにSUUMO編集部作成)
また、リフォーム実施者の検討時の平均予算額は261.0万円、実際のリフォーム平均費用額は341.3万円だった。予算を上回った人が挙げた理由は、「予定よりリフォーム箇所が増えた」(52.5%)、「設備を当初よりグレードアップしたから」(43.4%)が上位になった。
リフォームの「優遇制度」を自分から相談した活用者も多い
今回の調査では、リフォームに関する「税制優遇制度」についても事業者、実施者、検討者に聞いている。検討者の調査対象は、築年数10年以上の物件に住んでいて、今後3年以内にリフォームを実施する予定の人だ。
まず、7つの税制優遇制度についての認知度を見ると、リフォーム検討者では「耐震リフォーム減税」の61.0%が最も高く、次いで「バリアフリーリフォーム減税」の60.7%となり、最も認知度が低いのが「同居対応リフォーム減税」の44.0%で、意外に全体に認知度は高い。比較的新しい優遇制度である、同居対応リフォームや長期優良化リフォームの減税に対する認知度が低いようだ。
これに対して、リフォーム実施者の認知度は、最も高いのが「住宅ローン減税(増改築)」の36.7%、次いで「バリアフリーリフォーム減税」と「省エネリフォーム減税」の32.4%だった。検討者より実施者の方が認知度が低い理由は、実施者の認知度は「もともと知っていた、または自分で調べて知った」、「業者に勧められてはじめて知った」の合計であるのに対し、検討者は「内容を理解しており活用したいと考えている」、「内容を概ね理解している」、「制度は聞いたことはあるが内容は理解していない」の合計であることから、検討者ではまだ理解途中の人を含んでいることが要因になっているのかもしれない。また、リフォームを検討すると情報収集から始めるのに対し、実際にリフォームの必要に迫られている人には、優遇制度を調べる余裕はないといったこともあるのかもしれない。
さて気になるのは、事業者の優遇制度の認知度だ。認知度が最も高いのは「省エネリフォーム減税」の91.4%で、最も低いのが「同居対応リフォーム減税」の75.9%だった。事業者だけに認知度は高いものの、いずれも「制度を知らない」という事業者が少なからずいるうえ、「制度は知っているが概要を把握していない」と回答した事業者も多い。
事業者:税制優遇制度の認知・理解度(出典/(一社)住宅リフォーム推進協議会「2021年度住宅リフォームに関する消費者・事業者実態調査」令和4年1月公開資料の結果をもとにSUUMO編集部作成)
では、リフォーム実施者の税制優遇制度の活用率はどうだったのだろう?
優遇制度を認知している人では、「同居対応リフォーム減税」(51.4%)、「長期優良化リフォーム減税(固定資産税)」(49.4%)、「耐震リフォーム減税(固定資産税)」(48.2%)の活用率が高い。
調査では、「自分から業者へ相談して活用した」か「業者に勧められて活用した」かも聞いている。「耐震リフォーム減税(所得税)」、「住宅ローン減税(増改築)」を除いて、「業者に勧められて活用した」ほうが多いが、いずれの制度も実施者側から活用したいと相談した場合も多いことが分かる。
実施者:税制優遇制度の活用度(出典/(一社)住宅リフォーム推進協議会「2021年度住宅リフォームに関する消費者・事業者実態調査」令和4年1月公開資料の結果をもとにSUUMO編集部作成)
したがって、優遇制度を活用したい場合は、事業者任せにはせずに、自分でもよく調べて活用できるかどうか事業者に相談することも大切だということだ。
リフォームをする場合は、工事の費用や施工の品質が気になるところ。きちんとリフォームして、費用は安く、おまけに優遇制度についても詳しい事業者を選びたいと思うだろうが、すべてが同時には成立しにくいという側面もある。費用が安い理由が施工の品質が低いことにあったり、大きな事業者で丁寧な対応ができ、優遇制度などにも精通するスタッフがいる場合には、工事費用は高くなったりするからだ。
リフォーム事業者に一番求めるのは何かを考え、自身でも情報収集や確認などを怠らないことをお勧めしたい。
●関連サイト
2021年度「住宅リフォームに関する消費者・事業者実態調査」令和4年1月公表/(一社)住宅リフォーム推進協議会
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