【御朱印の旅】岩手・釜石線でのんびり花巻~遠野の神社を巡る
こんにちは。トラベルライターをしている大浦春堂です。毎日デスクに向かってタイプしていると、無性に広い空と木々の匂い、静謐(せいひつ)な神社が恋しくなります。今回は岩手県の釜石と花巻をつなぐ釜石線に乗って、のんびり車窓の景色を楽しみながら、花巻~遠野の神社巡りへ行ってきました。1泊2日で叶えるリフレッシュ列車旅をご覧ください。
東京駅
東北新幹線「はやぶさ」で新花巻駅へ
旅の始まりはJR東京駅から。エメラルドグリーンの車体が美しい東北新幹線「はやぶさ」の乗車時間は約3時間。一路、JR新花巻駅を目指します。
新花巻駅で下車したら、新幹線の駅舎を出てすぐのところにある地下連絡通路を通って釜石線のホームへと向かいます。
釜石線に乗り、JR花巻駅までは10分ほど。車窓から流れる景色を見ていると、あっという間に花巻駅に到着です。
花巻は『雨ニモマケズ』の詩や『銀河鉄道の夜』などの童話で知られる宮沢賢治が、その生涯で長く過ごした場所。
駅舎には宮沢賢治の世界観を投影した遊び心いっぱいのデザインがそこここに。明治時代の駅舎をイメージしてつくられた壁面には、宮沢賢治の作品にはおなじみのふくろうやみみずくの装飾が。ファンならずともつい写真をたくさん撮ってしまいます。
花巻神社
てくてく線路沿いを歩いて、花巻神社に到着
駅から歩くこと約5分。長い石段を登り「花巻神社」に到着しました。花巻の開町以来、里の守護神を祀り崇敬されてきた神社です。
花巻神社の御朱印帳は、宮司の手による美しい散らし書きを、贅沢にもはさみ紙にしています。
普段は非公開ですが、特別に見せていただいたのが御朱印帳の表装に描かれている御神輿です。随所に施された絢爛豪華な細工に思わず見惚れてしまいました。
花巻神社で授与している御朱印は「社名を書いたもの」と「右側に社名、左に和歌と季節の押し印を入れた見開きのもの」の2種類。萩の花と仔鹿は見返したときに神社の風景を少しでも思い出して欲しいという思いを込めて描かれているのだそう。
※編集部注:花巻神社で御朱印帳を新たに受けた方に限ります。また、直書きの御朱印は平日のみ(ご祈祷の時間は除く)、土日祝は書置きでの対応となります。詳しくはこちら
今が見頃とばかりに花を咲かせる萩。御朱印のモチーフを見つけに境内を散策するのも楽しいです。
めがね橋
再び釜石線に乗って、めがね橋を目指す
花巻駅から再び釜石線に乗って、次は「宮守川橋梁(通称:めがね橋)」の最寄り駅・JR宮守駅を目指します。
宮沢賢治は、釜石線の前身・岩手軽便鉄道が走る様子に着想を得て『銀河鉄道の夜』を書いたといわれています。宮沢賢治の時代を彷彿とさせるSL銀河が走るめがね橋は、同童話の雰囲気を味わうにはうってつけのスポットとなっています。
35分ほど列車に揺られて宮守駅へ。駅を出て左に曲がり、ひたすら道なりに歩いていくこと約10分。道の駅「みやもり」の駐車場の先にめがね橋の撮影スポットはあります。
SL銀河が運行する日(※)は、多くの観光客が写真を撮りにやってくるのだそう。
※編集部注:例年は4月中旬から10月下旬の毎週土日、祝日に運行。詳しくはこちら
この広場が、めがね橋の絶景ビューを写真に収められるスポット。なだらかな山と広い空、そして足元の芝生の緑と、日中だとこんな景色が撮影できます。
夜になると橋梁が緑色や橙色の光でライトアップされ、幻想的な雰囲気に変わります。『銀河鉄道の夜』の世界観を感じたい人は、夜に来るのもおすすめです(※)。
めがね橋を見た後は、本日の宿泊地のあるJR遠野駅へ。明日に備えて早めに休みます。
※編集部注:通年開催、ライトアップ時間は夕暮れ~22時まで。夜道に注意して訪問してください。詳しくはこちら
遠野駅
遠野駅から遠野郷八幡宮へ
2日目は遠野駅から。
遠野駅の開業は大正時代にさかのぼりますが、現在の駅舎は1950年(昭和25年)に建てられたもの。珍しい硬質コンクリートブロック造りの駅舎で、ノスタルジックな雰囲気が漂います。2002年(平成14年)に「東北の駅百選」に選定されているそうです。
駅舎を堪能したら「遠野郷八幡宮」へ。遠野駅からは路線バスの「坂の下行き」に乗車して12分ほど。最寄りの停留所「八幡宮前」で下車します。
江戸時代、この地方を治めた南部家からも崇敬された遠野郷八幡宮。源氏の氏神様である八幡様をお祀りするほか、岩手県では唯一となる出雲大社の御分霊である大国主神を合祀しています。また、現在の屋根は東日本大震災で被災し、瓦から鉄板に葺きかえられましたが、瓦屋根を飾っていた鬼瓦が境内に展示されています。
境内には、遠野市指定無形民俗文化財「遠野南部流鏑馬」で使用される馬場が。古式ゆかしい騎乗の武人が疾走し、的を射る「流鏑馬」は9月に執り行われます。
遠野郷八幡宮の御朱印で人気なのが、地域の名産である「ホップ」を使って漉かれた和紙を用いた限定の「ホップ和紙御朱印」です。和紙は地域の高校生が手づくりしているとのことで、それぞれ厚みに違いがあるのも味わい深いです。
このほかにも、見開きサイズの「妖怪御朱印」など種類がいっぱい。折々に参拝して、集めてみてはいかがでしょうか。
獅子のような特徴的な押し印は、この地の民話を集めた柳田国男の『遠野物語』、110話に出てくるゴンゲサマ。
南部神社
遠野駅に戻り、南部神社へ
再び遠野駅に戻り、お次は遠野南部家歴代の当主を祀る「南部神社」へお参りに行きます。駅からはまっすぐ歩いて10分ほど。
フーフーいいながら急な石段を登り切ると、市街を一望できる境内に到着です。涼しい風が吹いて気持ちがよかったです。
南部神社は鍋倉城跡の中腹に鎮座する、1882年(明治15年)に創建された神社です。南北朝時代に南朝方に相次いで忠誠を尽くしたことから「勤王八世」として尊崇される遠野南部家の初代・実長公から8代・政光公を御祭神としてお祀りしています。南部神社を中心とした鍋倉公園は、市民の憩いの場所となっています。
御朱印は社名のものと、境内に七神体揃って鎮座する遠野南部七福神の2種類があります。
On-cafe(オンカフェ)
ランチはアンティークな雰囲気のカフェで
ほどよく歩いたところでお腹が減ってきました。遠野には素敵なカフェが何軒かありますが、今回は南部神社の境内を出て、歩いて8分ほどの場所にある「On-cafe(オンカフェ)」でお昼をいただくことにしました。
外観からはソレとはわかりませんが、古い長屋を改築したカフェで店内のインテリアもアンティークな雑貨がずらり。
一番人気だという「ぷりぷりえびのクリームパスタ」をオーダーしました。スープやサラダ、デザートがついて税込1,200円。
濃厚なクリームにぷりぷりっとした大ぶりのえびがどーんと入っていて、これだけで満腹に。藍色のお皿は明治~昭和初期に生活雑器として広く流通した「印判」と呼ばれるもの。
食事のお皿だけでなく、店内のあちらこちらに懐かしい家具が並び、お料理を待つ時間に楽しく拝見しました。
テイクアウトできるスイーツもあり、食事だけでなくティーブレイクにも立ち寄りたくなります。
さて、1泊2日のリフレッシュ列車旅もそろそろ帰京の時間です。自然が一杯の岩手へ行き、のびのびと2日間を過ごすことができました。
目的地まで、新幹線でビュンと移動するのも時間を有効活用できて好きなのですが、たまにはローカル線でゴトゴト時間をかけて駅から駅へとゆっくり旅をするのもいいものですね。草木の匂いや、深い緑、広い空をめいっぱい感じながら過ごせたことで、溜まっていた疲れが抜けるようでした。
東京駅
掲載情報は2021年12月8日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
旅するメディア「びゅうたび」は、ライターが現地を取材し、どんな旅をしたのかをモデルコースとともにお届け。個性たっぷりのライター陣が、独自の視点で書く新鮮な情報を、臨場感たっぷりにご紹介します。
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。