「男子ってバカだよね」問題、このままでいいのか… 2人の息子を育てる弁護士が警鐘を鳴らす

「男子ってバカだよね」問題、このままでいいのか… 2人の息子を育てる弁護士が警鐘を鳴らす

 女性は「女らしく」、男性は「男らしく」、そうあることがいいとされてきた時代から、今はどんどん変化してきました。そうした価値観に苦しめられた人々が一生懸命に声をあげてきたからです。しかし一度植え付けられた価値観はそう簡単に拭い去れるものではなく、悪気なく性別で判断するような発言をしてしまう人もまだまだ見られます。

 大人を変えるのは容易ではありません。でも、そうした価値観を持たない子どもたちに「性別だけで決めつけられるのは不当なことなんだよ」と伝え続ければ、もしかしたら未来はもっと自由な社会になっているかもしれません。

 そうした点に着目し、まさに2人の男の子を育てている弁護士・太田啓子さんが執筆したのが、『これからの男の子たちへ :「男らしさ」から自由になるためのレッスン』です。

 太田さんは離婚事件を多く扱う弁護士で、セクシャルハラスメントや性暴力被害に遭った方の代理人などの仕事も多いといいます。私生活では2人の男の子を育てるシングルマザーで完全ワンオペ育児歴は約8年。太田さん自身は3人姉妹の長女で、同居家族のなかで父親しか男性がいない環境で育ちました。そのため、息子たちを育てるうえで、これまであまり縁のなかった男の子を取り巻く環境に身を置くようになり、違和感を覚える出来事に何度も直面したそうです。

 そのなかでも特に引っかかった「三大問題」として、太田さんは以下のように記します。

「ひとつめは、『男子ってバカだよね』問題。
 ふたつめは、『カンチョー放置』問題。
 みっつめは、『意地悪は好意の裏返し』問題」(本書より)

 どれも男の子と関わりのある人ならピンとくるのではないでしょうか。なかでも今回注目したいのが「男子ってバカだよね」問題です。

 子どもは幼いがゆえに、大人が考えもしない突拍子もないことをたまにします。「バカだなあ」と笑ってしまうような出来事は、性別に限らず起こります。それに対して、性別によって受け止め方が違っていないか、周囲の大人は注意が必要であると、太田さんは以下のように指摘します。

「言葉ではっきり『女の子がそんなことするなんて行儀が悪いよ!』とまで言わなくても、無自覚のうちに一定方向に誘導するような言動を大人自身がしているかもしれません。(中略)『おバカ』と笑い飛ばされる行動に、他者への暴力的なふるまいの萌芽があった場合でも『男子にはよくあること』として済ませてしまっていないか」(本書より)

 他者への乱暴な振る舞いは、本当なら大人が真摯に向き合うべきなのに、「男の子はそんなもんだよ」「男子はどうせ言っても聞かないよ」「やんちゃだねー」と周囲の大人が容認していてよいのでしょうか。その結果、困るのは大人になったときの子どもたちなのではないかと太田さんは警鐘を鳴らします。

 もちろん、育児や仕事に日々追われている大人たちが、いつも正しい行いばかりできるわけではありません。しかし太田さんの言葉を頭の片隅に残しておくだけでも、これまでと対応の仕方が変わってくるのではないでしょうか。

 本書にはほかにも、男性を苦しめる「有害な男らしさ」や「バレンタインデーの罪深さ」、「『男の人を気持ちよくさせる』女子がモテる?」や「女の子に伝えたいこと」など、男性・女性両方の苦しみに寄り添った内容が記されています。また、子を持つ親が頭を悩ませがちな「性教育」にも触れています。

 今が一種の変革期であるため、多くの意見が飛び交い、本書の内容すべてには賛同できないかもしれません。でもいつか「男だから」「女だから」という鎖から解放されて、多くの人がたくさんの選択肢を持てる自由で楽しい社会になるようにと願わずにはいられません。

 「男だったら~」「女なら~」と表現しそうになったり、そういう表現を見聞きして違和感を覚えたりしたら、本書のことをぜひ思い出してみてください。

[文・春夏冬つかさ]

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