【インタビュー】賃貸戸建て市場の醸成に、スマートホームが活躍する理由

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【インタビュー】賃貸戸建て市場の醸成に、スマートホームが活躍する理由

〜ケネディクス株式会社 KoletへのSpaceCore導入ケース〜

2021年8月、アクセルラボ(東京・渋谷)が提供しているスマートホームのプラットフォーム『SpaceCore』が、様々な不動産ファンドの運営を手掛けるケネディクス(東京・千代田)により新たに組成された賃貸戸建住宅ファンドに導入された。

ケネディクスが取り組む「レントハウス」という新しい住宅ニーズについて、『SpaceCore』の導入に至った経緯やきっかけとともに紹介する。

戸建住宅を借りる レントハウスという考え方

ケネディクスは、600棟以上の物件、総額で2.4兆円を超える資産を運用する大手不動産アセットマネジメント会社だ。1997年の創業以来、不動産ファンドビジネスのパイオニアとして常に第一線を走り続けている。

これまで賃貸マンションやオフィスビルだけでなく、商業施設や物流倉庫、老人ホームやホテル、再生可能エネルギー発電所など様々な物件のファンドを組成し運用している同社が、2021年8月に発表したのが戸建住宅を賃貸するレントハウス「Kolet(コレット)」だ。

「Kolet」は大手ハウスメーカー協力のもと、戸建住宅を取得しファンド化するというもので、戸建住宅を賃貸物件として提供する。

これまでの日本の賃貸マーケットではあまり馴染みのない取組であるが、その背景には、コロナ禍における人々の住まいに対するニーズの変化があった。

「Kolet」

ケネディクスグループでは9,000戸以上の賃貸住宅を運営しており、そのほとんどが単身者向けの物件だという。リモートワークや在宅勤務などを目的とした入居者のより広い住宅へのニーズが顕著になっていくことで、退去・退室が発生することも少なくなかったようだ。

その一方で、戸建住宅の売れ行きが非常に好調であったことから、日本でもきちんとした戸建住宅を用意し賃貸すれば十分な需要が見込めるのではないか、という発想から「Kolet」がスタートしたという。

「Kolet」を実際に企画した戦略投資本部・投資第四部・市川悠部長に話を聞いた。

ケネディクス 戦略投資本部・投資第四部・市川悠部長

―「Kolet」について詳しく教えてください。

「Kolet」は、新しいライフスタイルを提供する賃貸戸建住宅のブランドです。「レントハウス」という、日本にはこれまであまり無かった、戸建住宅を借りて住むことをコンセプトとしています。

一都三県にある賃貸物件の凡そ90%以上は、70平米未満の物件です。

70平米以上の物件に住むには、ファミリー向けの賃貸マンションを何とか見つけ出すか、戸建住宅や分譲マンションを購入するしかありませんでした。

賃貸できる戸建住宅があったとしても、転勤などを理由とした定期建物賃貸借のリロケーション物件であることがほとんどで、決められた期間しか借りることができませんでした。

「Kolet」は、普通賃貸借で契約の更新ができ、ずっと住み続けることも可能です。

 

―新しいライフスタイルという部分では、その他にも特色があるのでしょうか。

「Kolet」は非化石証書等を活用し、実質再生可能エネルギー100%の電力を使用するクリーンな住宅です。今後、設置可能な物件の屋根には太陽光パネルを設置する予定で、再生可能エネルギーを使うだけではなく、創る家を供給することで脱炭素社会実現への貢献を目指しています。

また、「Kolet」は原則として2~3階建ての木造建築物です。同規模の住宅1棟を建築する際の木造住宅のCO2排出量は、鉄骨造、鉄筋コンクリート造と比較して約40%以上も少ない一方で、日本の賃貸住宅の約77%が非木造構造であるのが現状です。「Kolet」を通じてよりサステナブルな木造賃貸住宅の供給と市場の拡大に取り組みたいと考えています。

SDGsや再生可能エネルギーに興味を持っている人でも、個々人で取り組むには手間やコストもかかります。持続可能な住環境を「Kolet」が提供し、「Kolet」に住んで頂くことで、入居者の方々と一緒にサステナブルな社会の実現に取り組んでいけたらと考えています。

また、アクセルラボの『SpaceCore』を活用したスマートハウスも、新しいライフスタイルの1つですね。

新しいライフスタイル 『SpaceCore』に求めた機能

―「Kolet」には『SpaceCore』が導入されていますね。

スマートホームの導入は、「Kolet」の企画段階から非常に重要な要素だと考えていました。

先ほども言ったように、日本で賃貸といえば、ほぼマンション一択です。

そういった賃貸市場においてまだまだ消費者の方に馴染みのない賃貸戸建住宅を浸透させるには「戸建住宅は、マンションよりも不便でコストがかかる」といった戸建住宅に対する負のイメージを払拭したいと考えていました。それが『SpaceCore』の導入に至っています。

「Kolet」で採用された『SpaceCore』のスマートホームデバイス

 

―具体的に、どのような部分がポイントだったのでしょうか。

一般消費者へのヒアリングを進めていく中で、マンションと戸建住宅を比べたときに、戸建住宅に対してセキュリティが不安と感じている人が非常に多いことが分かりました。

最近のマンションにはオートロックがあり、居室に入るドアにも鍵がある。ここに対して『SpaceCore』であれば、スマートロックや人感センサーを戸建住宅に取り付けることで、人の出入りをスマホに通知させることができ、セキュリティが向上します。

また、室内にはスマートカメラもついているので、誰が来たのかを即座に見ることができます。

他にも、マンションよりも「戸建ては暑い」「寒い」といったイメージを持っている方もいらっしゃいました。『SpaceCore』なら、遠隔でエアコンを操作することが可能です。家に帰る前に、エアコンを点けておくこともできます。

また、物件管理の点でも『SpaceCore』が活躍すると考えています。
分譲マンションには管理組合があり、管理組合が雇った管理会社等が共有部分をきれいにしたり、定期的なメンテナンスを行ったりしていますが、戸建住宅ではすべて自分で行わなければならず、「戸建は管理が面倒」と考える人も非常に多かった。

「Kolet」では、我々不動産のプロが物件の価値を保つために、しっかりとした管理を提供し、入居者の方の負担を無くしたいと考えています。

その方策の一つとして、『SpaceCore』のリレーション機能を活用して、入居者の方からメンテナンスや修繕に関するお問い合わせを受け付け、修繕箇所の写真などを添付してもらうことで、タイムリーにシームレスな対応をしていきたいと考えています。

リレーション機能は、「Kolet」があらゆる地域に分散して立地している中で、効率化な管理・運営にかなり寄与する機能だと感じています。

―数あるスマートホーム・IoTサービスがあるなかで、『SpaceCore』に決めた理由は何だったのでしょうか。

「Kolet」のスマートホーム化にあたり、アクセルラボも含めて複数社と話をしました。

これは私見ですが、スマートホーム市場は、メーカーとプラットフォーマーの2つに別れていると感じています。

メーカーは、良いモノを作れば顧客が使ってくれるだろうという、日本的なものづくりの発想で製品を提供しています。対して、プラットフォーマーは、自分たちではモノを作らず、様々なメーカーの機器を繋げて、サービスを広げています。

アクセルラボは、プラットフォーム機能を充実させて、世界中のメーカーの製品と繋がり、より早くたくさんのモノに繋げられるスマートホームサービスを提供できると考えられていた。

そういった中で、アメリカのスマートホームマーケットを調べてみると、アクセルラボのようなプラットフォーマーが寡占化していて、そこに様々なメーカーがモノを提供しているという構図があることが分かりました。

不動産に限りませんが、アメリカで起こっていることが数年後日本でも起こるということがよくあります。

賃貸マンションに劣らない生活利便性を入居者の方に提供する為には、既に多くの製品と繋がることができ、今後のサービス拡充や展開なども期待できるプラットフォームサービスの方が良いと思いました。

 

―アメリカの市場では、既にプラットフォーマーが主流だったのですね。

2つ目が、『SpaceCore』には、入居者とのリレーション機能や管理上の通知機能が既に備わっていたという点でした。

『SpaceCore』を知る前から、1軒1軒が分散して立地する「Kolet」には、管理を効率化し、入居者の方への対応が遅れることのないよう、入居者と遠隔でタイムリーにコミュニケーションを取る機能が必要だと思っていました。

実際に、不動産賃貸業のことがよく分かっている方が作っているサービスだと感じました。

 

―『SpaceCore』やアクセルラボに対しての不満点や要望はありますか。

こちらの要望に対する理解力や提案力が高く、不満はありません。

あえて挙げるとするならば、担当者が忙しすぎるのか、たまに連絡がつかないことがあるぐらいですね(笑)

他に不満は何もないですね。「Kolet」で実現したかったスマートホームサービスについて、自分で言っておきながら「難しいだろうな」と感じることもあったのですが、1つ1つの要望の背景や理由、大切さも理解していただき、かなり踏み込んで対応していただきました。

ただ、これからリーシングを始めるので、やってみないと分からないことは多い。実際に始めてみて、SpaceCoreのサービスに対してどのようなフィードバックがあるのか期待しています。

 

―IoTやスマートホームなど、新しい技術をいち早く活用しているケネディクス社ですが、それ以外にもケネディクス社が取り組んでいるDXやテクノロジー活用はあるのでしょうか。

当社は住宅だけでなく、オフィスや商業施設を多数所有しており、管理システムを導入して、管理を効率化するためのプロジェクトが動いています。

また、直近ではブロックチェーン技術を使ったセキュリティトークンを活用し、不動産ファンドのデジタル証券化などにも取り組んでいます。

不動産ファンドをデジタル化することにより、透明性と流動性を高め、個人の方にも身近に不動産投資に参加してもらうことを、当社全体の大きなミッションに掲げています。

これからも運営・管理面のDX化による効率化や、我々のビジネスの幅を広げていくために、デジタル技術の活用に関して積極的に取り組んでいきたいと考えています。

 

―「Kolet」を通じて、将来的に見据えているビジョンはありますか。

働き方、通信、交通手段、ショッピング、物流、あらゆる分野で革新的な変化が起きている世の中において、これからの不動産業界は、「物件が良い場所にあれば上手くいく」という考えでは成り立たなくなっていくだろうと考えています。

不動産は、そのスペースを求める人がいてはじめて成り立つビジネスであって、働く場所や住む場所、買い物をする場所など、人が生活に求めているニーズは常に変化しています。

そこに先んじて、消費者のニーズを汲み取り、本当に顧客が求めているスペースを提供していくことが重要だと感じています。

広い家を借りて住むことができないという現状があるということは、そういったものがあれば喜ぶ人がいる。「Kolet」は、そういった賃貸戸建住宅の市場をしっかりと作って、求めている人の需要に応えていくという、社会的意義のあるプロジェクトだと思っています。

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