『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』マイケル・チャベス監督インタビュー 「みんなが期待している“死霊館体験”には忠実でありたい」

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「つまるところ“悪魔”というのは、目に見えない人間の“葛藤”だったりするんじゃないかと思います」

『死霊館』ユニバース最新作『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』マイケル・チャベス監督がインタビューに応じ、そう語った。実在した心霊研究家エド&ロレイン・ウォーレン夫妻が調査に当たった事件を描く本シリーズ。今作で題材となったのは、殺人を犯した男が、“悪魔に取り憑かれていた”ことを理由に無罪を主張した異例の事件だ。男の名はアーニー・ジョンソン。1981年にアメリカで実際に起こり、全米を震撼させた恐ろしい事件だった。チャベス監督は“悪魔”が関わるとされるこの事件をどう解釈し、物語に落とし込んだのだろうか。

「僕自身もカトリック教徒として育っているので、なにか“悪魔的な存在がいる”というふうに思考がプログラミングされているんですね。ただ、現代のカトリック教は教えも進化していて、“悪魔”というのは、心やマインドを巣食う“自分自身が戦っている何か”である、という見方になっているんじゃないかなと。実際にあの事件に“悪魔”が関わっていたかというと……それはさておき、なんだけれど(笑)。僕が意識したのは、事件に関わった人たちの心情に寄り添うことなんです」

事件の発端は、アーニー・ジョンソンではなく、その恋人の幼い弟・デイビッドが悪魔に取り憑かれたことだった。取り憑かれたデイビッドは、少年とは思えないような不気味な声を発した。その様子はテープに収められており、以下の動画でもその声を聴くことができる。そして、彼を不憫に思ったアーニーが悪魔を自分のなかに取り込み、のちに殺人事件を起こすのだ。

チャベス監督は、こういった当時の資料に触れた際、その真偽よりも“関わった人々の感情”に注目したという。

「悪魔祓いのテープを聞いたとき、この家族はどういう経験をしてどういう感情を持ったのか、どういう心持ちだったのかについて考えました。とにかくアーニーと一家が苛まれているという状況だった。そして残念ながら被害者が出てしまい、アーニーは裁判にかけられた。その結果は調べればすぐ分かることだし、映画のなかでも描いているけれど。そういった事実も描きつつ、この登場人物たちの感情に寄り添った作品にしようと思って作ったのです」

センセーショナルな事件を扱っていることも大きなポイントだが、シリーズのファンとして気になるのは、やはり監督の交代だろう。シリーズの生みの親であるジェームズ・ワンが、初めて『死霊館』のメインストーリーを自分以外の監督に任せたのだ。ユニバースを拡張するスピンオフ作品こそ他の監督に委ねてきたものの、ウォーレン夫妻を中心に据えた『死霊館』『死霊館 エンフィールド事件』はワンが手掛けたものであり、その作風が強く押し出たものだった。バトンを受け取ったチャベス監督は、どんな想いでシリーズを引き継いだのだろうか。

「僕自身、このシリーズのファンなんです。これが確固たる世界観を持ったユニバースであることは意識しているし、固定のファンがいることも重々承知しています。監督としてはなるべく“透明な存在”でありたいと考えて臨みました。ただし、今回はこれまでと毛色の違うストーリーを語っている作品でもあるんですね。そんななかでも、みんなが期待している“死霊館体験”には忠実でありたかった。僕が好きな(映画の)フランチャイズもたくさんあるけれど、進行していくにつれて少しずつ色が変わってくることがありますよね。今回も同じ具合に、「『死霊館』の世界を捻じ曲げた!」と思われるのは嫌だったんです。有機的にユニバースを進化させることが目標でした」

チャベス監督が“ユニバースの進化”と表現するように、今作では『死霊館』の核となる部分を維持しながら、これまでよりスケールアップした展開を見せている。前2作では、ウォーレン夫妻が怪奇現象に悩まされる一家を訪れ、悪魔祓いで事態を解決してきた。今作で夫妻は、事件の真相を究明し、悪魔との関わりを裏付ける証拠探しに奔走するのだ。この新たな方向性の中で、チャベス監督がシリーズに持ち込んだ“こだわり”を聞いてみた。

「『死霊館』『死霊館 エンフィールド事件』はとにかくウォーレン夫妻の物語ですので、そこは大事にしようと思いました。今回、僕がどうしてもやりたかったのが、ロレインが視る“ヴィジョン”と、我々が生きる現実世界とを観客に行き来させることです。ロレインには霊視能力があり、“向こう側”の世界をヴィジョンとして視ることができますよね。そのヴィジョンと現実の対称性を出したかった。
そして、明るい昼と暗い夜の対称性にもこだわりました。これが顕著に出ているのが、森の中で調査をするシーンです。予告編でも見ることが出来るシーンですが、ロレインのヴィジョンが見えてくると急に日が沈みますよね。これは全部CGではなくインカメラでやっているんです。『死霊館』の前2作もそうなんですが、やたらCGを使うのではなくて、カメラで撮れるものはカメラで撮る。大きい照明を使い、それを動かすことで、木の陰も動いていくんですね。照明に関して言えば、私自身の監督としてのこだわりでもあります。今までのシリーズで一番ダイナミックな照明の使い方になっていると思いますよ!」

『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』
2021年10月1日(金)
2D/4D 同時上映 ※一部劇場を除く

配給:ワーナー・ブラザース映画

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レイナス

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