関心が高まる地方移住。都民では「都心まで2時間以内」までが分岐点に
コロナ禍で「地方移住」への関心が高まり、地方移住に関する調査もいくつか実施されている。リクルートの調査では、東京都内在住の会社員は46.6%もの人が地方移住に関心を示したという。地方移住をするメリットやデメリットはどういったことだろうか?新しい調査結果をいくつか見ていこう。
【今週の住活トピック】
「地方移住および多拠点居住の考え方についてのアンケート調査」を公表/リクルート
【最新移住事情 2021】を公表/高知市
コロナ禍で地方・郊外への移住を検討する人が増加
コロナ禍でテレワークが普及し、通勤をする機会が減った人もいるだろう。感染の長期化で、家族で家にいる時間が長くなったという人も多いだろう。自宅周辺で過ごす機会も多くなり、「わが街」に求める条件が変わったり、より子育て環境の良好な立地を求めたり、近くにリフレッシュできる場所を求めたりと、「どこに住むか」のニーズに変化が生じている。
加えて、人口が減少している地域の自治体の中には、移住者の受け入れを積極的に行っている例も多い。高知市もそのひとつだが、【最新移住事情2021】と称した全国調査を実施し、その結果を公表している。
全国の1766人に「地方移住」の予定や関心の程度を聞いたところ、31.2%が関心ありと回答した。内訳は、これまでに「地方移住をした」が7.2%、「地方移住の予定あり」が2.0%、「地方移住に関心があり、情報収集をしている」が3.5%、「地方移住に関心はあるが、検討に至っていない」が18.5%だ。
出典/高知市【最新移住事情2021】リリースより転載
地方移住に関心がある(移住済みを含む)552人を分析すると。20代・30代の若者や男性で関心が高い傾向が見られたが、リモートワークの頻度などの勤務体制ではそれほど差が見られなかったという。
一方、リクルートが東京都在住の会社員2479人に調査を行ったところ、「地方や郊外への移住に興味がある」と回答したのは46.6%(とても興味がある11.5%+興味がある35.1%)にも達した。高知市の全国調査と比べると、東京都在住の会社員はかなり関心の度合いが高い。
ただし、興味があると回答した人に、興味があるのは「都心までどの程度で行ける地方や郊外か」を聞くと、最多は「都心まで1時間から2時間」の43.3%、次いで「都心まで1時間程度以内」の31.8%と、比較的近距離の移住に興味を持っていることが分かった。
出典/リクルート「地方移住および多拠点居住の考え方についてのアンケート調査」より転載
高知市の調査では、回答する側は遠距離の地方に移住をすることを想定していたと思われるが、リクルートの調査を見ると、東京都在住の会社員は都心から2時間以内の近距離への移住に興味を持っており、その違いが関心の高さにも表れていると見てよいだろう。
また、高知市の調査で、地方移住に関心がある人の中で、「コロナ前後での地方移住への関心が高まった」人を見ると、一人暮らしの場合で41.7%、友人と住んでいる場合で75.0%となり、家族や夫婦で住んでいる人の場合よりも「単身者」のほうが、地方移住への関心が高まったという結果になった。
出典/高知市【最新移住事情2021】リリースより転載
単身の場合は身軽に地方移住が検討できるが、家族の場合は通勤や通学のハードルを考えて近距離の移住を検討するという見方ができるのかもしれない。
ゆとりや豊かな自然が魅力の地方移住、交通利便や仕事などのハードルも
次に、それぞれの調査で、移住に興味を持つ理由について見ていこう。
まず、高知市の調査では、「地方移住をしたい理由」で1位「ゆとりのある生活をしたい」と2位「自然の多い環境で生活したい」が40%以上となり、ゆとりと自然が大きな要因になっている。また、「地方移住の不安」については、「交通の利便性」「人付き合い」「仕事」「医療の充実」が上位に挙がった。
出典/高知市【最新移住事情2021】リリースより転載
次に、リクルートの調査で、「移住を考えたきっかけと新型コロナウイルス感染拡大の関係」を聞いたところ、新型コロナの影響により、「テレワークなどの柔軟な働き方が可能になった」や「より良い住環境で生活したいと思った」が上位に挙がった。
出典/リクルート「地方移住および多拠点居住の考え方についてアンケート調査」より転載
また、「地方や郊外への移住の不安や心配事」については、「仕事面」が64.0%、「経済面」が56.7%と上位に挙がり、リクルートの調査においては「働き方」や「仕事」の占めるウエイトが高くなっている。
移住実践者が感じた課題は、知り合いがいなくて寂しい!?
さて、最後に、直近3年以内に移住(移動前後の居住都道府県が異なる移動)をした人への調査結果を見ていこう。
ウォンテッドリーが自社のビジネスSNS「Wantedly」ユーザー(1968人)に調査したところ、20%に当たる395人が直近3年以内に移住していた。年代で見ると20代と30代前半の若い層が多い。
移住した人に「移住して良かった点」を3つまで選んでもらったところ、1位が「家賃などの生活コストが下がった」(42%)、2位が「生活のペースがゆっくりになった」(39%)、3位が「満員列車に乗らなくて良くなった」(35%)という結果になった。
一方で、「移住して課題に感じる点」を3つまで選んでもらったところ、1位が「知り合いがいないのが寂しい」(39%)、2位が「都心と比較して仕事が少ないので、今後のキャリアが不安」(27%)、3位が「車がないと何も出来ないのが面倒」(21%)という結果になった。
出典/ウォンテッドリー「コロナ禍における移住と働き方に関する調査結果」より転載
この結果をさらに、移住先が地元か地元以外かによって分類したところ、「地元への移住者」では「今後のキャリアが不安」が最多であるのに対し、「地元以外への移住者」では「知り合いがいないのが寂しい」が最多となった。地縁のない土地に実際に移住した人は、知り合いとのコミュニケーションが取れずに寂しいと感じるのが実態のようだ。
こうしていくつかの調査結果を見ていくと、一口に地方移住といっても、地縁のない遠距離の地方に移住するのと、都心にも通える近距離の移住とでは、かなり状況が異なることが分かる。近距離であれば、これまでの仕事や人間関係を継続する方法もあるが、遠距離となると仕事や生活、人間関係が様変わりすることもある。
そうした実態をよく理解したうえで、働き方や価値観がコロナ禍で変わった今、自分が望む暮らしが送れる場所を拠点に選び、より満足できる人生へと一歩踏み出すのもよいだろう。
●関連サイト
リクルート「地方移住および多拠点居住の考え方についてのアンケート調査」
高知市【最新移住事情 2021】
ウォンテッドリー「コロナ禍における移住と働き方に関する調査結果」
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