雅な雰囲気のある「夏炉冬扇」、実はこの言葉の意味はあまりよくない

「夏炉冬扇」は、なんだか雅な雰囲気のある四字熟語ですが、実はあまりいい意味合いで用いられる言葉ではありません。
この言葉は「役に立たないもの」をあらわしているのです。
とても綺麗な響きをしているのになんだか肩透かしを食らってしまいますね。
そこでここでは、意外とよい意味ではない「夏炉冬扇」という四字熟語について見ていきましょう。
「夏炉冬扇」とは
まずは「夏炉冬扇」という言葉の意味について見ていきましょう。
「夏炉冬扇」の意味
夏炉冬扇の「夏炉」は、火をつけて暖をとる火鉢や暖炉などの道具を夏に用いることをあらわしています。
そして「冬扇」は、うちわや扇子を冬に使用することを指しています
暑い夏には火鉢や暖炉で部屋を温めようとはよほどのことが無いと思いませんし、寒い冬には扇子で涼む必要ありません。
つまり、夏炉冬扇は季節や時期が外れていて役に立たないものという意味になるのです。
転じて付け加えられた意味
季節や時期が外れていて役に立たないことをあらわす「夏炉冬扇」は、時期を限定せずに無用なもの・役に立たないもの自体を指して使われることもあります。
また、今は役目を求められていない者や人・寵愛を受けられなくなった女性という意味でも使われることがありますが、現在ではこちらの使われ方はほとんどありません。
「夏炉冬扇」の由来

「夏炉冬扇」という四字熟語は、古代中国に書かれた書物の一節から来ています。
「論衡」という書の一節から生まれた言葉
夏炉冬扇の由来は、古代中国・後漢の時代に「王充」という中国の思想家が書いた「論衡(ろんこう)」という書物にあります。
論衡の中に「作無益之能、納無補之説、以夏進鑪、以冬奏扇」という一節があります。
この文は、役に立たない無益な能力やつまらない意見を皇帝にすることは、夏に囲炉裏にあたることをすすめ冬にうちわを差し上げるようなものだ、という意味です。
由来となった一文でも、時期外れで役に立たないものという意味で用いられていたという事になりますね。
著者は生まれるのが2000年早かった?
「論衡」の著者である王充は後漢の時代の思想家です。
非合理的なことを批判し、合理的なものを追求した思想を持ち、その内容を「論衡」の中に記しています。
「論衡」の中では、当時の中国でもっとも珍重された思想である儒教に対して厳しい批判を行なっていました。
そのため、北宋以降は彼の思想は社会的に乖離見られない存在になったのだとか。
再び王充の考えが注目されるようになったのは、中国で儒教批判運動が起こった1970年代に入ってから。
彼は孔子批判の先駆者として評価されたこともありました。
もしかしたら、王充は生まれるのが2000年ほど早かったのかもしれませんね。
「夏炉冬扇」の類義語

ここからは「夏炉冬扇」の類義語について見ていきましょう。
類義語には「月夜に提灯」や「六菖十菊」「無用の長物」があげられます。
月夜に提灯
「月夜に提灯」は、明るい月夜に提灯を灯しても特段意味をなさないとされたことから、役に立たないもの」を指す際にもちいられる言葉です。
また、贅沢が過ぎる時に対して使われることもあります。
「月夜に提灯」の後には「夏火鉢」と続くこともあります。
夏に火鉢を用いることはない、ということをあらわしているので「夏炉冬扇」の夏炉と同じような意味合いな言葉を付け、より役に立たない事を強調する効果があります。
六菖十菊
「六菖十菊」は、端午の節句(5月5日)に1日遅れた5月6日に用意した菖蒲と、重陽の節句(9月9日)に1日遅れた10日に飾る菊の花をあらわしています。
重陽の節句とは、日本の季節を区切る二十四節気のひとつで、無病息災や子孫繁栄を願って祝いの宴が開かれていた日です。
その際には、菊の花を飾るのが習わしとなっています。
端午の節句の当日に入るはずの菖蒲湯の用意や重陽の節句で用いる菊の花を一日遅れで用意しても意味を成しません。
時を逸してしまっていることから、「六菖十菊」は時期が過ぎて役に立たないものを意味する言葉となっています。
無用の長物
「無用の長物」は、もともと仏教に由来する言葉でした。
仏教において僧侶が身につけるものは「十八物(じゅうはちもつ)」と呼ばれ、「三衣」と呼ばれる衣服やお経、鉢などに限られています。
仏教の世界ではそれ以外のものを「無用の長物(じょうもつ)」と呼んでいました。
これが、役に立たないもの、むしろあるとじゃまになるものをあらわす言葉として使われるようになり、「無用の長物」に変化したとされています。
まとめ
「夏炉冬扇」は、季節や時期が外れていて役に立たないものをあらわす四字熟語です。
夏には暖炉は不要ですし、冬には扇は必要ありません。
時期外れで不要な物を指す言葉となりました。
「夏炉冬扇」は後漢の時代の思想家である王充が記した「論衡」の一節に由来しています。
雅な雰囲気こそありますが、実はあまりよい意味は持ち合わせていなかったのですね。
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