コロナ禍で進む「オンライン内見」、利用者から「実物の物件のほうが良かった」との声も

コロナ禍で進む「オンライン内見」、利用者から「実物の物件のほうが良かった」との声も。

MMD研究所は、2021年6月に「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」を実施した。コロナ禍の2020年4月以降に物件を探した人の中で、オンライン内見をした人にも調査を実施している。どんな人がオンライン内見をしているのだろうか。【今週の住活トピック】
「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」結果を公表/MMD研究所

オンライン内見とは?今なぜ注目されている?

まず、オンライン内見とは何か説明しよう。
「オンライン内見」とは、内見希望者に代わって、不動産会社のスタッフが現地へ行き、オンラインを使って映像や音声で物件内の紹介をするサービスのこと。ネット環境のある場所なら、自宅や会社などどこにいても物件見学をすることができる。

新型コロナウイルス感染の対策として、外出を避け、不動産会社のスタッフと密にならないで物件を確認できるオンライン内見が注目を集めている。オンライン会議などの経験が増えて、インターネットを介して動画でコミュニケーションを取ることに慣れてきたことも要因だろう。

MMD研究所の調査結果で、どのオンラインサービスを利用したかの結果(複数回答)を見ると、「Zoom」が50.5%と最も多く、「LINE」(47.4%)、「Skype」(35.8%)、「Microsoft Teams」(33.5%)、「Google Meet」(30.9%)だった。

20代が最もオンライン内見をしている

さらに調査結果を見ていこう。2020年4月以降に物件を探した1159人を対象に、物件を内見した方法を聞いた(複数回答)ところ、全体平均では「訪問内見」が53.0%、「オンライン内見」が37.9%となった。

出典:MMD研究所「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」より転載

出典:MMD研究所「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」より転載

「オンライン内見」が高い性別・年代別をピックアップすると、次のようになった。
20代男性(n=196) オンライン内見:55.1% 訪問内見:57.1%
30代男性(n=174) オンライン内見:47.7% 訪問内見:55.2%
20代女性(n=193) オンライン内見:33.9% 訪問内見:56.5%

オンライン内見については、「20代」と「男性」がカギになっている。まず、男性では、20代男性が最多で、年代が上がるにつれてオンライン内見の利用は下がっていく。また、女性では、20代こそ55.2%と高いものの、30代では23.4%まで下がるなど、全体的に男性に比べるとオンライン内見の利用は多くはない。

また、どの性別・年代別を見ても、訪問内見のほうが多く利用されており、訪問内見とオンライン内見を併用していることもうかがえる。

オンライン内見経験者の利用意向は高い

この調査では、オンライン内見で契約をした378人に、「実際に物件を見た際にオンライン内見とのイメージの差があったか」を聞いている。その結果、「実際の方がオンライン内見で見たより良かった」が最多の54.2%で、「実際の方がオンライン内見で見たより悪かった」が34.9%、「実際とオンライン内見のイメージの差はなかった」が10.8%となった。

オンライン内見と実際の物件を見比べると、実際のほうが良かったという人もいれば、悪かったという人もいるなど、必ずしも同じ印象をもつとは限らないということのようだ。

出典:MMD研究所「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」より転載

出典:MMD研究所「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」より転載

そうしたこともあってか、オンライン内見経験者430人に、「今後も物件を探す際にオンライン内見を利用するか」を聞いたところ、「実際に物件を内見するのとオンライン内見、どちらも利用すると思う」という“併用派”が52.3%と最も多くなった。一方で、「オンライン内見だけで物件を探すと思う」が37.4%と、“オンライン内見派”も4割近くいた。併用、単独合わせて89.7%が今後も利用すると支持しており、オンライン内見で効率よく住まい探しをしたい人が多くいることが分かる。

出典:MMD研究所「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」より転載

出典:MMD研究所「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」より転載

オンライン内見のメリット・デメリットは?どう利用するとよい?

オンライン内見のメリットとデメリットを整理しておこう。

オンライン内見の最大のメリットは、内見をするために現地に足を運ぶための時間や手間が減るという“効率の良さ”だろう。特に、転勤などで遠方から住まい探しをする人、一人暮らしの子どものために親子で住まい探しをする家族などには、効率の良さのメリットが大きい。

かたやデメリットとしては、カメラを通して物件を見るために、現地の日当たりや音、空間の広さ、部屋の雰囲気、細かい内装の質感などが確認しづらいという点が挙げられる。また、最寄駅から実際に歩くことで得られるアクセスや周辺環境の情報が不足するなど、現地に行ってこそ得られる情報も多い。

また、通信環境が整っていないと映像や音声が不安定になったり、通信の契約形態によっては通信費がかさんだりする場合があることなどにも注意したい。

では、どのようにオンライン内見を活用したらよいのだろう?

まず、訪問内見と同様ではあるが、何を重視して住まい探しをするかをあらかじめ決めておき、内見時には確実にその点をチェックすることだ。オンライン内見では、不動産会社のスタッフの案内で見ることになるので、気になる点は「収納の戸を開けてサイズを教えてほしい」「コンセントの位置を見せてほしい」「しばらく音を聞かせてほしい」など、さまざまな注文を付けて見落とすことのないようにしたい。

また、現地に行かないと得られない情報もあるので、オンライン内見を利用して物件を絞り込んだら、最終的に決める際には訪問内見をすることなども検討してほしい。

コロナ下で急速に増加した「オンライン内見」ではあるが、コロナ終息後もその効率性から継続されることが想定される。これからは住まい探しで、オンライン内見を賢く利用する時代になっていくことだろう。

MMD研究所「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」

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