江戸の町は動物だらけ! 約160点の浮世絵から読み解く、江戸の人々と動物の深い関わり方
皆さんは、江戸時代にどんな動物が親しまれていたと思いますか? 日々の暮らしをともにする存在といえば、現代でも人気の猫や犬はすぐに想像がつくかもしれません。でも実は、ほかにも馬や牛、鶴、亀、魚、虫、そして舶来の珍獣まで!? 江戸の町にはさまざまな動物の姿が溶け込んでいた様子。当時描かれた浮世絵には、動物たちの姿が数多く描かれています。
その種類の豊富さ、多彩な表現方法は眺めているだけでも面白いものです。書籍『浮世絵動物園:江戸の動物大集合!』では、東京・原宿にある浮世絵専門の「太田記念美術館」が所蔵する約160点の浮世絵を掲載し、江戸の人々と動物の深い関わり方を紹介しています。
第1章「江戸の町は動物だらけ」には、猫や犬のほか、小鳥、金魚、虫など、ペットとして愛された動物や生き物が大集合。そうした動物たちを愛おしそうに眺めたり笑いかけたり、ときには怒ったり困ったりと、浮世絵に描かれた人々の表情にも注目です。動物や生き物たちがどれほど人間にとって身近な存在であったかが浮世絵を通して感じられることでしょう。
いっぽう、牛や馬は人や荷物を運ぶ”はたらく動物”として重宝されていました。たとえば葛飾北斎の作品「諸国瀧廻り・和州吉野義経馬洗滝」には、馬の体を丹念に洗う2人の男性とおとなしく身を任せる馬の姿が描かれており、両者の信頼関係が見てとれます。このように、第1章を読むと、動物たちが「愛情を注ぐ対象であり、労働のパートナーでもあった」(本書より)とよくわかります。
日常生活に欠かせない動物たちの姿をファッションに取り入れるのも自然なこと。第2章「動物のもつ美と力」では、動物モチーフのファッションやインテリアが描かれた浮世絵を掲載。着物には金魚やタコ、亀などのデザイン、団扇(うちわ)にはコウモリやカタツムリ、簪(かんざし)の先にちょうちょや猫など、江戸の人々が思い思いにアニマルファッションを楽しんでいたことがうかがえます。
第3章「動物エンターテインメント」では、象や虎といった見世物として注目を浴びた動物や、ユーモアを交えて擬人化された動物などの浮世絵を紹介。バラエティ豊かな動物表現を目にして、当時の人々の好奇心やエンタメ精神に驚かされる人も多いでしょう。
最終章の第4章「物語のなかの動物たち」で取り上げられているのは、歌舞伎や小説、古典、伝承など物語の題材として描かれた動物たち。犬や猫、兎、猿、狐といった現実に存在するものから、大蝦蟇(おおがま)、妖狐、龍、獅子など架空の動物まで、そのバリエーションは実にさまざまです。
「浮世絵を読み解いていくと、当時の人々の暮らしは動物とともにあり、また、時に神聖で時に怖ろしい、動物のもつさまざまなイメージも含めて、人々が動物たちを愛でていたことが見えてきます」(本書より)
江戸に生きる人々と動物たちとの深くバラエティに富んだ関係性は現代にも通じるところがあります。かわいい動物たちの姿を介して、江戸の歴史や浮世絵を楽しんでみてはいかがでしょうか。
[文・鷺ノ宮やよい]
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