『ギルティギア ストライヴ』レビュー:格ゲーコミュニティ発展のために! 間口を広げる一作

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長い人気を誇る対戦格闘ゲームシリーズ『GUILTY GEAR』。その最新作、『GUILTY GEAR -STRIVE-(ギルティギア ストライヴ)』がとうとうリリースされた。今作はシリーズの要素を引き継ぎながらも、システムを一新。発売前のβテストなどでも、これまでのシリーズとのプレイ感の違いが話題となっていた。

対戦ゲーム大好きな筆者も、もちろん自腹で即購入! プレイしてみたので、その魅力を「本作から対戦格闘ゲームを始める」という超初心者でもわかるように紹介したい。ちなみに筆者がプレイしているのはSteamで配信されているPC版だ。

史上最高レベルのアニメ的3DCG! 独自の魅力をもった対戦格闘ゲーム

先に書いた通り、『GUILTY GEAR』シリーズは長い歴史を誇る。その上「対戦格闘ゲーム(格ゲー)」は、覚えるべき技術が多く難易度も高いため、他のゲームと比べてハードルが高い。それだけに、まず本作の購入を考えるプレイヤーは、これまでのファン、ないし「『GUILTY GEAR』シリーズのプレイ経験はないが、他の格ゲーはプレイ済み」というプレイヤーだろう。

にもかかわらず、なぜこの記事を超初心者にもわかるように書こうとしているのか? そこには本作、『ギルティギア ストライヴ』ならではの理由がある。まずそのひとつが、パッと見ただけで伝わる本作の魅力。すなわち、ビジュアルだ!

『GUILTY GEAR』シリーズは前作『GUILTY GEAR XRD(ギルティギア イグザード)』から、3DCGを使ってアニメ的な2Dビジュアルを再現している。見た目はいわゆるアニメ絵なのだが、3DCGで作られているため、ぐるんとカメラが回り込むような動きも表現でき、それが本作独自のビジュアルを作りだしていた。本作も全作に引き続き、3DCGを使ってアニメ的な2Dビジュアルを再現しているのだが、その技術には磨きがかかっている。

バトルシーンでは3D特有のカメラアングルを最大限活かして見せ場を演出。さらに連続攻撃時や攻撃がカウンターヒットした時など、ゲーム的な見せ場にはド派手なエフェクトが加わるため非常に興奮度が高い。ゲームをプレイせず、配信などで見ているだけでも興奮度が伝わるのではないだろうか。

また、このビジュアル表現を活かしたストーリーモードは、「映画なみのクオリティ」を持っている。ゲームのレビューで「映画なみのクオリティ」という場合、ゲームの一部に映画的演出を組み込んでいる場合に使うことが多いが、ここで書いた「映画なみのクオリティ」という言葉はそういう意味ではない。

本作の場合、描き出したビジュアル表現そのものに独自の価値があり、映像表現としてのクオリティが高いのだ。このままストーリーモードだけを劇場で有料公開したり、映像作品として販売したりしても十分通用するだろう。

つまり、本作は見た目の時点でのビジュアルのクオリティが圧倒的に高い。それだけに、これまで格闘ゲームを一切プレイしたことがなくとも、ビジュアルで興味を持つことは大いにあるだろう。だからこそ、そうした人にも本作の魅力を伝えたいのだ。

より間口を広げるシステム改変! 読み合いタイミングを明確化

さて、ビジュアルがより美麗に進化を遂げた方、ゲーム性の方はどのようになったのか。そもそも『GUILTY GEAR』シリーズがどんなゲームだったのかというと、格闘ゲームの中でも連続技やスピード感、ド派手さといった点に特徴を持つタイトルだった。地上ダッシュはもちろん、空中ダッシュや二段ジャンプといったアクションで縦横無尽に動いて攻撃を当て、そこから多段連続技へと繋げる。非常に攻撃的。

そんな、いわば『GUILTY GEAR』というシリーズのアイデンティティともいえる部分に今回変更が入っている。「システムを一新」と記した部分がそれだ。

まず、これまでのシリーズにあった「ガトリングコンビネーション」に手が加えられた。「ガトリングコンビネーション」とは、「パンチ→S(斬り)→HS(大斬り)」という具合に、ボタンを押すだけで連続技を繋ぐことができた要素。しかし今作ではパンチやキックといった小技から「ガトリングコンビネーション」を始動することができなくなった。始動はS(斬り)からとなる。必然的に連続技のコンボ数が伸びない。

ただ、そもそも本作はこれまでのシリーズと違って連続技のコンボ数が抑える方向で調整されている。その代わり、一発一発のダメージは大きくなった。なので、パンチやキックなどのスピーディーな小技を当ててそこから操作技術で多段連続技へ持っていく……という方向から、相手の心理をしっかり読み、一発一発の技を当てたり返したりしていく……つまり、「差し合い」重視の方向へ転換した形だ。

また、壁際の攻防にも変更が入っている。相手を壁際に追い詰めて攻撃を当てていると、一定ダメージを与えた段階で壁が破壊され別マップへと移動、画面中央から仕切り直しになるのだ。『GUILTY GEAR』シリーズに限らず、一般的な格闘ゲームでは相手を壁際に追い詰めた方が有利となる。なぜなら、単純に追い詰められた側の選択肢が減るからだ。

画面中央にいると、「攻撃する」「投げる」「ジャンプ」「間合いを調節する」という選択肢が取れるが、壁際に追い詰められてしまうと「間合いを調節する」という選択肢は失われる。これに対し、追い詰めている側は自由に「間合いを調節する」ことができるので、その分有利。なので、初心者プレイヤーが中級者以上のプレイヤーに壁際へと追い詰められた場合、状況を挽回できず一方的に倒されてしまうということも少なくない。

しかし本作では、壁際である程度攻撃を受けると仕切り直しになる。つまり、追い詰められた側が一方的に倒されるという状況が軽減されているわけだ。ただこれだと、上手いプレイヤーが割を食っているだけのようにも見える。有利な状況をリセットされてしまうのだから。この点は、相手を追い詰め壁を破壊した側にはボーナスがつくという措置が取られている。後述の「ロマンキャンセル」などに使える「テンションゲージ」がアップしやすくなるというボーナスだ。

続いて、壁際の攻防と同様、追い詰められた側が一方的に倒されてしまうという状況を軽減する方向に作用する変更が、「ダウン周り」の変更だろう。足払いや覚醒必殺技で壁を破壊した場合など、限定された状況を除いて、本作は攻撃を受けた側がダウンせず、自動的に受け身を取って立ち上がってくれる。このため、攻撃側は従来のシリーズ各作品と比べて「起き攻め」が仕掛けにくい。

「起き攻め」とは、ダウンした相手が起き上がってくるタイミングに強力な技をしかけるという格ゲーのセオリーのこと。格ゲーではボタンを押すと攻撃が出るが、実はボタンを押してすぐに攻撃が出ているわけではない。たとえばパンチで言えば、ボタンを押すと腕を伸ばし始め、腕が伸び切ったタイミングで相手にダメージを与える判定が発生する……という形。

ボタンを押してからダメージ判定が発生するまでどれくらいの時間が必要かは技によって異なるが、基本的にある程度のタイムラグが存在しているわけだ。これを踏まえると、ダウンしているキャラクターが攻撃するためには、まず起き上がって、それから攻撃動作に入るという2ステップが必要だ。

それに対して起き上がる相手を待っている側……すなわち追い詰めている側は、相手の起き上がる前から攻撃動作に入ることができる。このため、ダウンしている側は「ガードする」「技が出た瞬間から無敵効果を持った技を出す」「相手が投げてきそうな場合は投げに備える」といった形で選択肢が限られてしまう。

つまり、従来通りだと壁際の攻防のように、追い詰められている側(ダウン側)は、不利な状況をリセットできないまま負けてしまう可能性がある。しかし本作では、特定の状況以外で受け身をとってくれるため、こうした状況は発生しにくい。

そして「ロマンキャンセル」だ。これは、攻撃ボタン3つを同時押しすることであらゆる動作を「キャンセル」することができるというアクションで、これまでのシリーズでも同名のシステムが用意されていた。ちなみに「キャンセル」とは「キャラクターのアクションを中断」することをいう。

プレイヤーがボタンを押すと、ゲーム内でキャラクターは何らかのアクションを実行する。この時、基本的にはそのアクションが終わるまで、キャラクターに次の行動を取らせることは不可能だ。ボタンを押しても反応してくれない。「キャンセル」とはこうした状況でキャラクターにアクションを中断させ、即座に次の行動を取れるようにすること。

たとえば、パンチで相手を攻撃した場合、攻撃後に前へと突き出した腕を戻す動作が入るが、この戻す動作をキャンセルすれば、即座に次の攻撃が行える。これを活用したアクションが、いわゆる連続攻撃……コンボと呼ばれるものだ。

一般的な格闘ゲームでは、キャンセルが行える技と行えない技が明確に設定されており、どんな技でもどんな状況でもキャンセルできるわけではない。それは本作でも同様だ。しかしこうした状況をキャンセルできるようにしてしまう強力なコマンドが「ロマンキャンセル」だ。

強力なだけに、使うためには「テンションゲージ」が必要。しかし、どんな技でもキャンセル可能なので、本来なら繋がらない技が繋がって独自の連続技を作ることができる。まさしく、ロマンに溢れたアクションなのだ! 今回この「ロマンキャンセル」には4つのパターンが用意されており、それぞれに効果が異なるので以下で説明しよう。

「赤色ロマンキャンセル」
まず、相手へ攻撃をヒットさせた直後に行う「赤色ロマンキャンセル」。攻撃の戻り動作をキャンセルし、即座に行動可能になるだけでなく、「ロマンキャンセル」時に出るオーラが相手に当たると、相手のスピードを遅くする効果を持っている。このため、通常では繋がらない技でも自由に繋ぐことが可能。多段連続技が行いにくい本作であっても、これを使えばある程度までコンボ数を伸ばすことができる。

「紫色ロマンキャンセル」
次に、攻撃を空振りさせた直後に行う「紫色ロマンキャンセル」。空振りした攻撃の戻り動作をキャンセルし、即座に行動可能になるため、ミスをなかったことにできてしまう。赤色同様、相手のスピードを遅くできるが、その時間は赤色より少ない。

「青色ロマンキャンセル」
そして、技を出していないニュートラルな状況で行う「青色ロマンキャンセル」。ニュートラルな状況なので何の動作もキャンセルしないが、相手を遅くすることができる。たとえば、スピードが速く対応しづらい技を相手が出してきた場合などに使うと、相手の行動がスローモーションになるので、とっさに迎撃技を出したり回避したりなど、有効な対応をとりやすい。

「黄色ロマンキャンセル」
最後が「黄色ロマンキャンセル」。ガード中に行うことでガード動作をキャンセルすると同時に、相手を遅くしつつ、吹き飛ばすことができる。相手がパンチやキックなど速い攻撃の連携で攻めてきて、ガード状態からなかなか打開できないといった場合に使うと、状況をリセットしやすい。前作まで存在した「デッドアングルアタック」が本作には存在しないため、その代用と言えるシステムだ。

他にも本作には様々な変更点が存在しているが、特に大きな変更点は、これまでに挙げてきたものが代表的なものだ。それぞれどんな変更なのか、個別の要素としては分かってもらえたと思う。では、こうした変更によって本作がどんな作品となっているのか? 筆者は本作のポイントを「攻守を巡る読み合いがバトルのメイン」「攻守の入れ替わりがビジュアル的にわかりやすい」だと感じている。

「ガトリングコンビネーション」の話で触れた通り、本作は連続技を多く繋ぐことができないが、そもそも連続技とはどういうものだろうか?

ゲームデザイン的には「操作の巧さによって、一発のヒットのダメージをアップできる要素」といえるだろう。格ゲーによっては、一発ヒットしたら操作ミスしない限り相手が負けるまで続いてしまう、いわゆる「即死コンボ」なんてものもある。これはつまり、「操作の巧さ」が勝敗を決するシステムといえる。連続技があまり繋がらないようにしている本作は、「即死コンボ」などが可能な作品の逆に位置している。

操作の巧みさだけでなく、いかに攻撃を当てるか? つまり、「攻守を巡る読み合い」がバトルのメイン。壁が破壊される「ウォールブレイク」や自動受け身による「起き攻め」の軽減なども、ゲーム中の読み合いを行う回数を増やすためと考えていいだろう。

そして、「攻守を巡る読み合いがバトルのメイン」である以上、どちらが攻撃側でどちらが守備側か、いつが読み合いのタイミングなのかが分からなければならない。この点、本作は「ウォールブレイク」や「ロマンキャンセル」、カウンターヒット時の文字演出など、ド派手演出の数々によって読み合いのタイミングをこれでもかと描いている。

では、攻守を巡る読み合いの何が楽しいのか? それはズバリ、駆け引きのアツさ。本作に限らず、格ゲーのゲーム性を表現した言葉として「ジャンケン」というものがある。グー、チョキ、パーを出すあの「ジャンケン」だ。「ジャンケン」に必ず勝てる手は存在しない。グーはパーに負け、パーはチョキに負け、チョキはグーに負ける。格ゲーも基本的にはこれと同様、どんな状況でもこの手を出しておけばOKという行動はない。

追い詰められたとしても、たいていの状況で対策となる行動が2パターン以上存在しており、追い詰められている側の行動選択次第で攻守を逆転できる。ということは、逆に言えば行動の成否に運が絡むということ。だからこそ「ジャンケン」と呼ばれるのだ。ただ、この表現は間違ってこそいないものの、正確でもない。

「ジャンケン」には状況がない。いっせーのせで同時にグー、チョキ、パーを出す。だからグー、チョキ、パーの選択は1/3だ。これに対し格ゲーでは、間合いや残り体力、「テンションゲージ」などといったゲージ類の貯まり具合といった状況によって有利な選択肢は変化する。なので、「この状況ではこの行動を取っておくのがセオリー」というアクションが存在する。つまり格ゲーでは相手がどんなアクションを取ってくるかが、「ある程度予測できる」のだ。

そして、予測と同時に誘導も行える。たとえば意図的にある技だけを何度も繰り返し出す。すると相手はその技に意識を集中し、次に出るタイミングを「予測」するようになる。そこを見計らって、別の技で攻撃! これが見事ヒットすると、「してやったぜ!」という達成感が味わえる。もちろん、外れたら「やられた!」悔しさを味わう。相手の心理を読むスリルと、裏をかくための駆け引きの妙……これが面白いのだ!

ところで、どうして本作はこのような仕様になったのだろうか? 「差し合い」による駆け引きが楽しいのはいいとして、「優れた操作技術によって多段連続技を駆使する」というこれまでの「ギルティギア」シリーズも、爽快感溢れる楽しさを持っていた。今回の変更点は、見方によってはこれまでのシリーズのアイデンティティを捨ててしまったようにも見える。

実は、本作が何を目指しているのかについては開発スタッフが様々なメディアで繰り返し語っている。その中にあるのが、「格ゲーコミュニティ」の拡大という観点だ。

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