日本のみなさんへ

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日本のみなさんへ

 今回の震災と津波、それに伴う二次災害に直面している皆さん、特に、三陸地方や北関東沿岸部で直接大きな被害に遭って、ご家族を亡くされた方々、家や財産を全て失って避難生活をしている皆さんに、心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。 

 僕は Twitter で、主に東京周辺にいる友人たちのツイートから地震が起きたことを知りました。地震が起こった時に、皆さんも、まずは一番大切な家族や恋人の無事を確認したことでしょう。そして次には、友人たちを思い出したり、仕事で関わりのある人々を気遣う気持ちが湧いてきたと思います。そこから次第に、見ず知らずの大勢の人々が災害によって自分よりももっと苦しんでいることや、日本語が分からない外国人が不安を感じていることに思いを馳せようという呼びかけが広まりました。数日後に、無事が確認できた被災地の友人たちとも連絡が取れるようになり、時折お互いを励ましあう言葉を交わせるようになったことは、うれしいことでした。その後も経過を注視しているのですが、地震が起きた直後から現時点まで、皆さんが冷静さを保ち、お互いにおもいやり、助け合って、この事態を乗り越えようとしていることが伝わってきます。 

 そのような様子を見ていると、日本人の精神性の欠陥について、これまでいろいろなことが言われてきたけれども、日本という国で暮らしている人々の中には、危機的な状況に直面したときに、個々人の心の中から、利他心や公共性と呼ばれるようなものを生み出す精神文化がしっかり根付いているのを感じます。こういう危機を乗り越える力というものは、政治・宗教のような権力機構や、市場原理の中からではなく、個々人が自分の心を見つめるところから湧き上がってくるものだという知恵を、とくに誰からも教えられることなく知っているのではないでしょうか。そう思うと、あまり心配しすぎなくてもいいとも思えるのです。 

 いま現在も、余震や原発事故の危険にさらされて恐れを感じたり、被災して亡くなった方や今も苦しんでいる人々に対して、自分には何も出来なかったという思いに悩まされている方も多いことでしょう。そのような時は、感情や思考が、心の中のどこから生じてきて、どこに留まって、どこに消え去っていくのか、ということをただ見つめることで、だんだん心が静まっていくことを感じるように心がけてみてください。皆さん、知らず知らずのうちに身体に緊張を感じているとおもいますから、くれぐれも身体をいたわって、無理をなさらぬようにしてください。 

 僕も、ここネパールで研究生活を送る中で、自分に出来る限りのことをやっていきたいと思います。次回からは、ようやくヒマラヤ周辺地域の文化をレポートするような内容の記事をお送りします。 

※写真:中央に観音菩薩、右手に緑ターラ、左手に白ターラの石像。黄色く塗られていますけれど。

ヒマラヤデッドオアアライブ

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佐藤剛裕

佐藤剛裕:彼岸寺

ウェブサイト: http://www.higan.net/himalaya/

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