完全版無料配布も当たり前!競争激化のPCゲームプラットフォームに見るビジネスモデル

新型コロナウイルスの影響や首都圏を中心とした緊急事態宣言の延長などで、巣ごもり需要が伸び続けている現在、ステイホームで余暇をゲームで過ごす方も多いでしょう。

少し前までは、ゲームといえばPlayStation(プレステ)などの家庭用ゲーム機やスマホで楽しむものという認識が一般的でした。ですが、ノートPCの高性能化やeスポーツの拡大など、近年ではパソコン(PC)でゲームを楽しむPCゲーマーが増加しています。

実際、大型家電量販店などではゲーミングPCが普通に販売されていますし、ヘッドセットやゲーミングチェアなどの展示販売も盛況です。

中古市場が確立している家庭用ゲーム機ではパッケージ版が根強い

家庭用ゲーム機向けのゲームは、パッケージ販売とダウンロード販売の2つがあるのはご存知のとおり。特に日本では中古市場がある程度確立されていることもあって、「ゲームを買うときはパッケージ版」という方も一定数います。

一方、現在のPCゲームの世界では、ほぼダウンロード販売のみと言ってもいい状況になっています。家庭用ゲーム機でダウンロード版を購入する場合、各プラットフォームが用意した専用ストアで購入します。例えば、プレステであればPS Store、Switchであればニンテンドーeショップ。スマホでも同じ状況で、iPhoneであればApp Store、Android端末であればGoogle Playストア……。

こういった状況は選択肢がない分、迷うこともないメリットがありますが、競争が生まれにくい構造であることも事実。しかしPCゲームの場合は事情が異なります。

まず、PCゲームの場合、主にWindows PCが対象となっており、ゲームを購入できるプラットフォームが複数あって、ユーザー側で購入先を選択できる、価格を比較できるなどのメリットがあります。

Steamの牙城に無料配布で切り込むEpic Gameストア

SteamはPCゲーマーには最も知られているプラットフォームの1つで、世界最大級といって差し支えないでしょう。Steam上で販売されているゲームの数は誰も実態がわからないぐらいの規模で、AAAタイトルと呼ばれる大作から個人制作のインディーズタイトルまで玉石混交です。

もちろん歴史もあり、2002年ごろから稼働しています。グローバルで展開しているサービスということもありますが、アクティブユーザー数は1億2,000万/月、6260万/日とケタ外れ(2020年のデータ)。新規ユーザーも260万/月と拡大傾向にあります。

このSteamの一人勝ちの世界に、待ったをかけようとしているのがEpic Gameストアです。PCゲームプラットフォームでは、ユーザー側に選択肢がある分、個別にゲームを管理する必要があります。

具体的には、Steamで購入したゲームはSteam上のライブラリに登録され、Steam上でしかプレイすることができません。ゲーム内フレンドもSteamに限定されます。こういったことから、古くからのユーザーは他プラットフォームを導入しづらいという側面があります。

こういった事情をわかって上で出てきたEpic Gameストアでは、なんと毎週ゲームを無料配布しているのです。しかも、体験版などではなく、制限のない完全版。プレステでも今春に「Play at Home」でいくつかの完全版タイトルが無料配布されて話題になりましたが、Epic Gameストアでは毎週行われています。

MSはサブスクサービスでユーザー獲得を狙う

サブスクリプション(サブスク)でのゲームサービスを行っているプラットフォームもあります。それが、マイクロソフトが運営するXbox Gamepassです。月額850円(初月は100円)で、100タイトル以上のPCゲームが遊び放題になるこのサービスは、定期的にゲームラインナップが更新されています。

また今年に入って、EAのゲームもラインナップに含まれるようになり、FIFA 21やスター・ウォーズシリーズタイトルなど、家庭用ゲーム機でも人気のゲームがプレイできるようになっています。

同サービスでは、Xbox Game Studios開発のゲームに関しては、発売当日から完全版がプレイ可能という特典もあります。PCゲームの新作は6,000~8,000円前後の価格帯が多いですが、発売当日から月額850円でプレイできるのはかなりお得といっていいでしょう。しかも、プレイを始めたものの、思っていたのと違うとなった場合でも返金などの処理は不要でアンインストールするだけで済みます。

ここまで紹介してきたとおり、各社が工夫を凝らして競争が激化しているPCゲームプラットフォームの世界。PCゲーマーとしても、ビジネスモデル的も注目です。

(文・辻英之)

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