ビジネス&カルチャーブック季刊誌『tattva』創刊 花井優太編集長「紙へのノスタルジーとかではない」
この10年、多くの雑誌が休刊や廃刊をむかえています。特に2020年は新型コロナの煽りも受け、『アンドガール』『アサヒカメラ』『東京ウォーカー』『ケトル』などが休刊を発表。株式会社富士山マガジンサービスが運営するオンライン書店「Fujisan.co.jp」のデータによれば、2020年で休刊した雑誌の数は100を超えています。
紙媒体にとっては暗いニュースが多かった2020年ですが、今年春には雑誌『magazine ii』(mixi)や、ビジネス&カルチャーブック『tattva』が創刊するなど、紙の新しいメディアの出現が話題になっています。『magazine ii』は、「コミュニケーションとエモーション」をテーマに掲げたカルチャーフリーペーパー。『tattva』は、ビジネス、アート、テクノロジー、ポップカルチャーなど、さまざまな切り口から多様な視点を紹介する総合誌です。
2誌ともデジタルでの展開がなく、紙のみで読めるものとなっています。デジタル版との併用、またはデジタルのみの雑誌も増えているなか、なぜこのような選択をしたのでしょうか? 『tattva』編集長の花井優太さんは、同誌を紙のみで展開した理由を次のように語ります。
「ぼくはもともと雑誌が好きで読んで育ってきたし、紙のほうが読みやすくて好きです。でもそれは個人の感覚でしかないし、ただ単に『紙ならではの温かみ』といったノスタルジーを届けたかったわけでもありません。
まず、映像でもウェブでテキストを載せるのでもなく、本という形態をとったのは、文脈で編みやすいし、流れがあるからこそ突飛なことをやるような、アクロバティックな編集ができるからですね。もちろん記事ごとにバラバラで読んでもいいようには作っていますが、コンテクストを意識しながら読むと、記事が相互的に呼応するようにも設計しています。
そして紙である理由は、再生環境の問題です。デジタルデバイスって個々の再生環境で見え方が変わってしまうから、新型コロナでいろんなものが断絶されたなかで連帯や共通の体験を生み出そうとすると、結果紙がいいと思った。読んでくれる方全員に同じデバイスを配ることはできないので、再生環境や手触りなど、共通体験を考えると紙は安価で手軽に流通させられるなって」
ビジネス&カルチャーブック『tattva』の創刊号の特集テーマは「なやむをなやむのはきっといいこと。」。台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン氏へのインタビューや、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文氏へのインタビューをはじめ、哲学者、演出家、落語家、建築家など、さまざまな領域から多くの識者や表現者が登場。揺れ動くこの時代の悩みに寄り添う一冊となっています。
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