NASAが火星探査機用に開発したパンクしないタイヤ、自転車向けに商品化へ
火星の上を走り回る探査機の車輪は、パンクの恐れがないアルミ製の輪だ。これには一応、ショックを吸収するスプリングが装備されているが、十分ではなく、車輪の変形が短期間のうちに進むという問題があった。例えば火星探査機「キュリオシティ」の場合、ミッション開始からわずか16ヵ月後には、車輪へのダメージが見られたとNASAはいう。
これを解決するためにNASAグレン研究センターは、ゴム製タイヤと同じ弾力性のあるタイヤを、金属で作る技術を開発した。「Superelastic Tire」と呼ばれるこの技術は民生品にも応用され、パンクしないエアレスタイヤ(aireless tire)が、早ければ2022年にも製品化される予定になっている。
形状記憶合金のワイヤーを編む
NASAと協力して製品化を進めているのは、2020年に設立された米国のスタートアップ企業「SMRT Tire Company」だ。同社サイトによれば、今はまだプロトタイプの段階だが、製品化は順調に進んでいるとのこと。このエアレスタイヤの斬新さは、形状記憶合金(ニッケルとチタンの合金であるNitnol)のワイヤーを、特殊な編み方で編んであるという点にある。何層にも絡み合った網目がバネの役割を果たし、ゴムタイヤに匹敵する弾力性が生まれる。しかも強靭さはチタン並み、というわけだ。
一般の金属でこれを作ったなら、石を踏めば凹んだままになってしまうが、そこは形状記憶合金なので問題ない。
2020年の発売を目指す
SMRT Tire Companyはこのタイヤを「METL (Martensite Elasticized Tubular Loading)」と名付け、2020年には一般市場に送り出すつもりだ。
一度取り付ければ、その自転車が使えなくなるまで持つそうだ。ただ、タイヤ内への異物侵入を防ぐためにタイヤ表面がPolyurethaniumという素材でコーティングされており、これが剥がれると塗り直しが必要になる。
また、金属製であるためやや重く、普通の自転車やオフロードバイクには適しているものの、軽量さが必要なプロスポーツには向いていないとのこと。
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