【映画批評】シン・エヴァンゲリオン劇場版:||はファンは喜ぶが作品は超平凡 / 伏線回収も表現も雑! レビュー「予想以下の展開」
シン・エヴァンゲリオン劇場版:||を鑑賞して最初に思ったのは「庵野監督のメンタルの心配」である。あまりにも要素が詰め込まれ過ぎているのにスピード展開。さらにファンの予想を超える展開もなく、過去作品を雑に高画質で「新規描写」+「焼き直し」をしただけの作品にも思えた。
・事実として雑さは否めないシンエヴァ
庵野監督のアイデアが枯渇したのか、それともメンタル的に疲弊しきったままシン・エヴァンゲリオン劇場版:||を作ったか、そのどちらかとしか思えない展開。このようなことを書くと狂信的なファンはブチギレ激怒するかもしれないが、事実として雑さは否めない。
・感情の変化描写があまりにも雑
悪い意味でいろいろとツッコミどころが多い今作となったが、特にヤバさを感じたのがシンジの心理描写。どんな作品でも、キャラクターの感情の起伏は物語によって生まれて揺れ動き、ときに落ち込み、ときに感化され、ときに元気を取り戻す。今作のシンジも同様な展開を見せるのだが、感情の変化描写があまりにも雑。
・もっと丁寧に描けたはずなのだが
まるで何かのクスリを打たれてメンタルが激変したかのごとく、つい数秒前とは別人のような感情になっている。感情Aと感情Bの間が抜けているのだ。いや、もちろん感情変化の理由は観ていれば理解はできるのだが、「メシを食ったら元気になった」と同様のスピードで感情変化しているため、キャラクターの心情表現として丁寧ではないし、声のトーンも突如として変化するのでおかしい。あと4~5分でも時間をかければ丁寧に描けたはずなのだが……。
・「根拠」がわからない部分が多すぎる
また、シン・エヴァンゲリオン劇場版:||では、今までの過去作品の伏線や謎が回収解明されるといわれていた。確かに、伏線や謎が解明できた部分もあったが、かなりの伏線と謎が残されたままとなっている。どうしてそうなったのか「根拠」がわからない部分が多すぎるのである。庵野監督の頭の中には、設定に沿った「根拠」があると思われるが、今作でそのすべてが吐き出されることはなかった。
・「察してくれ」と「自分で好きな解釈して」は別物
また、シン・エヴァンゲリオン劇場版:||は結局のところ過去作品の焼き直しの範疇を越えることがない展開のため、過去作品と同様の部分で伏線と謎が残されたままとなっている。もちろん鑑賞者が察して自己補完して楽しむというのもエヴァシリーズの醍醐味ではあるが、「察してくれ」と「自分で好きな解釈して」というのはまったく別物であり、今作の問題のひとつともいえる。
「よくわからない」がエヴァの魅力なのはオタクも理解しているが、「ずっとわからない」は望んでいないのではないだろうか。ファンとして求めているのは「わからない」を推測して楽しみ、いつか公式によって「そうだったのか」に到達する展開だが、それは望めない。
<シン・エヴァンゲリオン劇場版のポイント>
1. 内容を詰め込みすぎ
2. 詰め込み過ぎなのにスピード展開
3. スピード展開なのでいろいろと雑
4. 多くの伏線回収しないまま終わる
5. 多くの謎を解明しないまま終わる
6. ファンの想像を下回る平凡な展開
7. 新規描写+過去作品の焼き直し
・必ずしも見せ場として成り立つかどうかは別
なにより指摘したいのは、見せ場があるようでない点。派手なシーンや物語の重要シーンがあったとしても、それが必ずしも見せ場として成り立つかどうかは別だ。シン・エヴァンゲリオン劇場版:||には「チョイ見せ場」はあっても「印象的な見せ場」はないに等しい。
・見せ場のエネルギーが足りない
わかりやすくいえば、シン・エヴァンゲリオン劇場版:||は映画館で観る映画作品というより、テレビで観るテレビアニメに向いている展開なのだ。決してテレビアニメ作品のほうがレベルが低いという訳ではない。シン・エヴァンゲリオン劇場版:||はテレビアニメとして4~5話に分けて放送すれば「チョイ見せ場」の連続で良い作品として成り立つかもしれないが、2時間以上の映画としてこの作品を作った場合、見せ場のエネルギーが足りないのである。
・ファン心理を良く理解している庵野監督のはずなのに
庵野監督は、どうして「このようなシン・エヴァンゲリオン劇場版:||」を作ってしまったのか。オタクやマニアのファン心理を良く理解している庵野監督のはずなのに、「考えることをやめている」「深く掘り下げる体力がない」「メンタルが疲れている」としか思えない。
・庵野監督の功績は完結編としての続編を出してくれた点
辛口なレビューをしているが、庵野監督をバッシングするつもりはいっさいない。世界的規模でファンが求める作品をクリエイトした庵野監督を誰が批判できようか。むしろ感謝したい。今回の庵野監督の功績は「とりあえず完結編としての続編を出してくれた」という点なのだ。
ただ、この内容でゴーサインを出してしまった庵野監督のメンタル(または衰え)が心配なだけである。その心配は杞憂であればよいのだが、杞憂だったとすれば、それはそれでどういう心理状況でシン・エヴァンゲリオン劇場版:||を作ってしまったのか非常に興味深い。
・とても意味のある良い作品
ファンにとって念願の上映となったシン・エヴァンゲリオン劇場版:||。決して悪い作品ではなく「ファンにとって念願の続編が上映される」という点において、とても意味のある作品なのは間違いない。
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執筆: 桃色のガンダルフ
画像: 鑑賞者より
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