『ルクス・エテルナ 永遠の光』ギャスパー・ノエ監督インタビュー「90%のセリフがアドリブ」「“スプリット・スクリーン”という手法について」
ギャスパー・ノエ監督最新作『ルクス・エテルナ 永遠の光』が、1月8日(金)よりシネマート新宿、アップリンク吉祥寺、シネマート心斎橋他、全国順次公開となります。
アートと深い関わりを持ち続けるファッションブランド、サンローランのクリエイティブディレクター、アンソニー・ヴァカレロが「様々な個性の複雑性を強調しながら、サンローランを想起させるアーティストの視点を通して現代社会を描く」というコンセプトでスタートさせたアートプロジェクト「SELF」。本作はそのプロジェクト作品として制作され、2018年カンヌ国際映画祭監督週間にて芸術映画賞を受賞した『CLIMAX クライマックス』に続き、2019年同映画祭ミッドナイトスクリーニングにて上映。絶賛・酷評の賛否両論を巻き起こし、ギャスパー・ノエ監督はあらためて唯一無二の個性を見せつけました。
赤く染まった空を背景に、火を持つ群衆、そしてサングラスをかけて柱に縛られる主演のシャルロット・ゲンズブールと二人の女性。怒号が飛び交い、徐々にカオス状態になる中、ベアトリス・ダル監督による磔のシーンの撮影が始まる…。ギャスパー・ノエ監督にリモートインタビューを慣行。作品へのこだわりを伺いました。
――本作とても刺激的な作品でした。画面が2分割された印象的な映像が続きますね。
ギャスパー・ノエ監督:昔から「スプリット・スクリーン」という手法には興味を持っていました。最初に観たのはアベル・ガンスの『ナポレオン』でしょうか。最後のナポレオンがイタリアに上陸するシーンが3つの画面に分かれて、サイドがシンメトリーにもなっています。そして3年前にケネス・アンガー監督の作品を観て、それも画面が3つに分かれていて素晴らしい映画でした。でも一番影響を受けたのはリチャード・フライシャー監督の『絞殺魔』です。スプリット・スクリーンで最も商業的に成功しているのは、ブライアン・デ・パルマの作品ですよね。僕も大好きです。本作ではより混乱している状況を出す為に、この手法を使っています。
――監督は常に観客の意表をつく演出を取り入れていらっしゃいますが、本作で今回の手法を取り入れたのはなぜですか?
ギャスパー・ノエ監督:映画の中で、同時に色々な人が話をしていて、そこに字幕がついています。そうすると観客は「誰の話を聞いて、何を見れば良いのか分からない」という精神状態になる、それが意図でした。私も世界各国の映画祭で映画の感想だったり、次回作の提案だったりを色々な人に同時に話しかけられる事があります。その時にパニックになる感じと少し似ているのかもしれません。ただ、私は批評家の皆さんの事は好きですよ(笑)。
――登場人物たちが本当に苛立っていて、怯えていて、不安になる凄まじい迫力でした。
ギャスパー・ノエ監督:即興劇がたくさん行われていますが、私はそのセリフをほとんど書いていないんですね。時々役者さんたちに対してアイデアを言うことはあっても、90%のセリフが俳優たちから出たものです。ベアトリス・ダルとシャルロット・ゲンズブールという2人の女優をそのシチュエーションに置いて、彼女たちから出てくる言葉や態度を活かしたかったんです。ベアトリス・ダルは腹がたつとそれを表面的に出し狂った犬の様にも見えます。一方のシャルロット・ゲンズブールの方はおとなしめで動けない中で子供の事を心配するという個性が出ていますよね。
――ほぼアドリブということですね…。すごいです。
ギャスパー・ノエ監督:私自身も2人の演技に感動して、当初15分の予定だった作品を51分の中編にしたんです。私はこれまで様々な尺の作品を作ってきて、『カルネ』は40分でした。過去の名作の中にも『アンダルシアの犬』が17分であったり、短い作品もたくさんあります。なので、映画は長ければ良いというわけではないと思っています。
――これからも賛否両論を巻き起こしながらも、監督にしか作れない作品を作り続けてくださることを楽しみにしております。今日はありがとうございました!
※光に対して敏感なお客様がご覧になられた場合、光の点滅が続くなど、光感受性反応による諸症状を引き起こす可能性のあるシーンが含まれております。ご鑑賞頂く際には予めご注意下さい。
(C)2020 SAINT LAURENT-VIXENS-LES CINEMAS DE LA ZONE
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。