イギリスの家70軒を訪問した著者が、その間取りをイラストと文章で解説! 住み継がれる秘密とは?
「家は育て、つなぐもの」――それがイギリス人の住まいに対する考え方だと記すのは、『日本でもできる! 英国の間取り』の著者・山田佳世子さんです。
山田さんはフリーの住宅設計プランナーとして活躍する一方、定期的にイギリスの住宅を訪問するのがライフワークだといいます。そんな彼女が、イギリス人家庭を70軒ほど訪問し、その住まいを徹底リサーチしてまとめたのが本書です。
家を「建て替える」という発想がなく、そのほとんどが歴代住人によってメンテナンスされ、受け継がれていくというイギリス。本書では、年月をかけて住み継がれる秘訣がどこにあるのかが、山田さんによる文章とイラストでたっぷりと明かされています。
では、具体的にイギリスにはどのような住まいがあるのでしょうか? それが最もよくわかるのが、chapter3「ライフスタイル別イギリス人の住まい方」です。ここでは、山田さんが実際に訪れた家17軒の外観や間取り、インテリアなどがイラストとともに紹介されています。
たとえば、「最初の家・次の家」に登場するのが、30代夫婦2組の事例。そのうちの1組であるマーカス夫妻は、結婚して最初に新興住宅地にある一軒家を購入したそうです。「新築一軒家」と聞くと、日本人にとっては魅力的な響きに感じますが、イギリスでは「新築」は特に魅力的なワードではないのだとか。
イギリスでは、家の価値は築年数ではなく状態で決まるのだそうです。「自分の家を熱心にメンテナンスし、DIYして、より良い状態で売って買い替える」という考え方の人が多く、一般的に一家庭で5、6軒は買い替えるのだといいます。そのため、マーカス夫妻も4年後に購入額より高くで売り、築60年のセミでタッチドハウス(2軒が隣り合わせにくっついている家)に移り住んだそうです。
この「劣化した家を購入し、自分たちの手で美しく蘇らせることで資産価値を上げる」(本書より)というのは、日本にはない住まいに対する価値観であり、イギリスの家々や街並みから歴史とともに積み重ねられた誇りや愛情を感じられる理由のひとつと言えるかもしれません。
ほかにもchapter3では、定年退職して趣味に生きる男性の住まいや、一年の中で最も家が輝くというクリスマスの住まい、イングリッシュガーデンを楽しむ50代夫婦の住まいなど、さまざまな家が紹介されていて、見ていて飽きることがありません。山田さんによる手描きのイラストが写実的でありながらも温かみがあり、各家庭にお邪魔しているような気分にさせられます。
このほかchapter1「イギリスにはどんな家があるの?」、chapter2「イギリスの家の魅せポイント」、chapter4「訪問できる有名人の家の間取り」、chapter5「イギリスの住宅Q&A」という章立てになっています。どの章もイラスト付きで非常に詳しく解説されており、イギリスの住まいの歴史や魅力について深く知ることができます。
日本の住宅について「これからは使い捨ての家ではなく、英国人と家の関係性のように、住み継がれる家を育てていくことも住む人次第でできるのではないかと思っております」と、あとがきで述べた山田さん。ぜひ皆さんも本書を読んで、愛情を持てる家作りのヒントを探してみてください。
(文・鷺ノ宮やよい)
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