「三代目JSB」のELLYさんが未婚のパパに 入籍をしない事実婚の子どもの将来への影響について

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「三代目JSB」のELLYさんが未婚のパパに 入籍をしない事実婚の子どもの将来への影響について
人気グループ「三代目 J SOUL BROTHERS」のELLYさんが、10月28日に、公式ホームページで、交際中のインスタグラマー・MEGBABYさんとの間に、第1子が誕生したことを発表しました。今後について、「2人で話し合い、籍は入れず引き続き良きパートナーとして子育てに努めて参ります」とコメント。未婚のパパとして子どもを育てる方針を表明しました。

家族のあり方に対する価値観が多様化する中、あえて結婚をせずに、パートナーとして生きるという道を選ぶカップルも増えているようです。父親と母親に法的な婚姻関係があるかどうかは、子どもの権利などに影響するのでしょうか。弁護士の片島由賀さんに聞きました。

母親の単独親権となるが、父親が子どもを認知すれば、子どもに及ぼす影響は少ない。将来にわたる養育費については「公正証書」として残しておくと、不払いの対策に

Q:両親が未婚のまま子どもが生まれた場合、子どもの戸籍はどうなりますか?
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母親と子どもには、出産の事実により、親子関係が存在します。父母が婚姻関係にない場合は、出生届の提出により、母親を筆頭者とする新しい戸籍が作られます。父親と子どもとの間には法律上の親子関係がないため、父親の欄が空欄となります。

父親と子どもが法的な親子になるためには、父親が子どもを自分の子と認める「認知」が必要です。

【①任意認知】
母親の承認のもと、父親が役所に行って認知届を提出します。母親の妊娠中に認知しておく「胎児認知」も可能です。胎児認知の場合は、出生届を提出したときに、父の欄に氏名が記載されます。

【②強制認知】
父親が認知しない場合は、子どもの法定代理人である母親から、家庭裁判所へ調停申し立てや裁判を行います。

Q:父親に養育費を支払ってもらうためには、認知してもらうことが必要なのでしょうか。また、養育費の額はどのように決定するのでしょうか?
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認知しない状態では、父親と子どもに法的な親子関係がないため、父親に養育費を支払う義務が発生しません。最初は父親が自ら養育費を支払っているとしても、将来支払いが滞ったり、居場所がわからなくなったりする可能性がないとは限りません。まずは認知してもらうことが大切です。

養育費とは、食費や被服費など日々の生活費および医療費、教育費が当たります。具体的な金額は、父母の収入に応じて決まります。
特に、離婚後は金額の折り合いがつかないケースが多く、家庭裁判所が活用している「養育費算定表」(2019年12月23日公表)が目安となります。

養育費算定表は公立学校の教育費を想定しているため、私立高校や大学の入学金など、子どもの進路によっては、大きな支出に伴う「特別費用」の負担を話し合う必要も出てきます。

養育費の金額や支払い方法などを、両者の話し合いで決定した場合は、公証役場で「公正証書」を作成しておきましょう。将来、不払いになった場合に、支払いを求める裁判を行わずに、財産の差し押さえなどを行う強制執行が認められています。

父親が養育費の支払いに合意しない場合は、家庭裁判所で養育費請求調停を申し立てることになります。

Q:両親が法的な婚姻関係を結ばないことで、養育費以外に子どもが不都合となるケースはありますか?
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父親が認知していれば、両親の婚姻関係の有無による差はそこまで大きくないと言えるでしょう。健康保険や年金など社会保険の恩恵を受けることができます。

小学校に上がったときに、「夫婦別姓で子どもが不自由な思いをするのではないか」という声もありますが、近年学校の対応は柔軟になっています。例えば両親の離婚により、戸籍上では、子どもの姓が母親の姓に変わっても、希望すれば学校では父親の姓のままで配慮してくれる例もあります。日常生活で使う姓を、戸籍上の姓と必ず一致させないといけない場面ばかりではありません。

認知されているかどうかが大きな問題となるのは、父親が亡くなったときの遺産相続の権利です。認知されていれば、民法900条で、法律上の夫婦の間に生まれた子(嫡出子)と、結婚していない両親の間に生まれた非嫡出子(婚外子)の相続分は同等と定められています。

一方、認知されていない場合は、遺産相続の権利がありません。子どもに財産を残すためには、「遺言書に明記する」「生命保険の受取人をパートナーにする」などの対策が必要です。また、父親の死後3年以内なら、「死後認知」の手続きをとることができます。ただ、親子関係を証明するDNA鑑定が必要など、手続きは複雑です。

Q:婚姻関係を結ばないまま子どもを育てていた父親と母親が別れることになった場合、親権はどうなりますか?
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婚姻関係にある夫婦の場合、父母ともに、親権が認められる「共同親権」となります。一方、婚姻関係にない場合は、父親が認知しても、母親のみを親権者とする「単独親権」となります。

そのため別れる場合も、共同親権のように、夫婦のどちらが親権を持つかを争う余地はありません。父親に親権を移す「親権者の変更」も可能ですが、家庭裁判所での調停申し立てなどの手続きが必要となり、相当な事情がないと認められない可能性があります。

両親が離婚するときに、子どもの将来をきちんと話し合ってから進めるという点は、法律婚の夫婦でも変わりません。ただ、父親が子どもを認知しているかどうかは、養育費の支払い義務や、将来の相続権に関わりますので、別れる時点で認知されていない場合は解決しておく方がいいでしょう。

Q:事実婚のように、法的な婚姻関係を結ばずに子どもを育てる人がこれから増えると考えられますか?親自身の価値観を大事にしながらも、子どものために考えておきたいことは?

LGBT(セクシャルマイノリティーの総称)も含め、結婚の形は多様化しています。また、「夫が外で働き、妻は専業主婦」といった固定的な夫婦のあり方が崩れ、共働きで、経済的にも自立している女性が増えています。女性自身も「結婚」に縛られたくないと、法的な婚姻関係を結ばない「事実婚」を選ぶ人は少なくありません。地域によっては、「子どもが生まれたら籍を入れるのが当然」という考え方もまだ根強くありますが、事実婚のまま子どもを育てるカップルは今後増えると考えられます。

また、9月29日の記者会見で、厚生労働相が不妊治療の助成を事実婚も含めるか検討すると発言するなど、国の少子高齢化対策として、子どもを望むカップルへの支援が、婚姻関係で区別されることがなくなっていく可能性もあります。

婚姻関係がない父母では、まず父親が子どもを認知することが重要です。

また、法律婚の夫婦が別れる場合は、離婚手続きに伴い、子どもの将来について両者で話し合い、合意する機会があります。しかし、婚姻関係がなければ、離婚の手続き自体がなく、簡単に別れることが可能です。だからこそ、子どもが生まれたときから、将来を見通して養育費や相続などを取り決め、書面に残しておくと、子どもを育てる上で一つの安心材料になるはずです

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