この真実、他言無用! 『もっと言ってはいけない』人間社会に潜む「残酷なタブー」を目撃せよ

この真実、他言無用! 『もっと言ってはいけない』人間社会に潜む「残酷なタブー」を目撃せよ

「この社会は残酷で不愉快な真実に満ちている」

上記の言葉は、人気作家・橘 玲氏の『もっと言ってはいけない』(新潮社)に綴られている言葉。突然だが、みなさんは『言ってはいけない』シリーズをご存知だろうか。遺伝にまつわるタブーや知識のタブー、容貌のタブーなど、現代の人間社会に潜む「残酷なタブー」が収められた1作目『言ってはいけない―残酷すぎる真実―』。2016年に発売されるや否や瞬く間にベストセラーとなり、冒頭でお伝えした『もっと言ってはいけない』はその続編にあたる。

ちなみにAmazonの販売ページを見ると、紹介文の冒頭に「本書の内容を、決して口外しないでください」の文字が。なぜ口外してはいけないのかというと、本の内容を読めば一目瞭然。前シリーズを例に挙げれば「知能は遺伝する」「精神疾患は遺伝する」「犯罪は遺伝する」など、世に出すにはあまりに危険な内容で溢れているからだ。

実際に橘氏も「本当かもしれないけどそんな本は絶対に出せない」「そんなことを書いたら大変なことになる」と口々に警告されたそうだが、だからといって「危ない本・不愉快な本」と端的に捉えないでほしい。同書のタイトルについて、彼は次のように述べている。

「このタイトルは、『言ってはいけない』ことをもっとちゃんと考えてみよう、という意味で、本書では『私たち(日本人)は何者で、どのような世界に生きているのか』について書いている。その世界は、一般に『知識社会』と呼ばれている」(本書より)

橘氏曰く『言ってはいけない―残酷すぎる真実―』を執筆して、読者から寄せられたのは「救われた」「ほっとした」などの感謝の言葉。たとえば遺伝決定論を批判する人たちは、「困難は意志の力で乗り越えられる」と頑固な信念を持っている。「どのような困難も本人の努力や親の子育て、周囲の人たちの善意で乗り越えられるはず」と主張し、「努力次第で欠点は変えられる」「変えられないのは、努力したつもりになってるだけで努力が足りないからだ」と美しい物語に縋っているという。

そして橘氏は続けてこう語る。

「そんな非難にじっと耐えていた親たちが、私の拙い本を読んで、自分が悪かったんじゃないんだ、こんなに頑張っても結果が出ないのには理由があったんだと感じたのではないだろうか」(本書より)。

上記を踏まえたうえで本書を読むと、いかに自分たちのこと、自分たちの世界のことを知らないかが如実にわかる。たとえばみなさんは、PIAAC(ピアック)という国際調査をご存知だろうか。ざっくり説明すれば、読解力・数的思考力・ITを活用した問題解決能力の3つのスキルを測るテストのこと。同調査は24カ国、地域において約15万7000人を対象に実施されており、日本では2013年にその概要がまとめられてる。

気になる結果は、見てびっくり。読解力・数的思考力・ITを活用した問題解決能力(コンピューターを使わなかった者の結果は除く)の3分野とも、日本の平均点が24カ国中「第1位」なのだ。しかし橘氏が伝えたいのは、「日本人ってすごい!」ということではない。むしろその逆で、本書ではPIAACから読み取った結果を以下のように結論づけている。

1.日本人のおよそ3分の1は日本語が読めない。
2.日本人の3分の1以上が小学校3~4年生の数的思考力しかない。
3.パソコンを使った基本的な仕事ができる日本人は1割以下しかいない。
4.65歳以上の日本の労働力人口のうち、3人に1人がそもそもパソコンを使えない。
(本書より)

つまり平均点こそ他国より高いけれど、日本人の3分の1は日本語も読めないし、数的思考力も小3~4レベルということ。ここで正直に申し上げよう。今までいけしゃあしゃあと本書について語ってきた私だが、じつはその内容を半分も読めていない。文字は読めるものの、内容が理解できないといったほうが正しいだろう。それゆえ「1.日本人のおよそ3分の1は日本語が読めない」という結論は妙に納得できるのだが、そもそもこんな状況で私たちは仕事をこなせられるのだろうか。

答えは「YES」でもあり「No」でもある。同書によると今まで特に問題とならなかったのは、直感という名の「暗黙知」、なんとなく「こうじゃね?」と直感でできる仕事がたくさんあったため。だが知識社会が高度化されていくうちに、暗黙知に頼っていた仕事が次々機械化されるように。やがてPIAACで問われたようなスキルも不要となり、パソコンを使った仕事ができる1割の人たちでさえ「スキルが足りない」と言われる時代がやってくるという。これが今まで認識してこなかった「世界のファクト」なのだ。

私たちは何者で、どのような世界に生きているのか――。今こそ橘氏の問いについて、深く考える時なのかもしれない。

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