【賃貸】敷金・礼金ゼロ物件の増加傾向、減少に一転。そもそも敷金と礼金はなぜ必要?

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【賃貸】敷金・礼金ゼロ物件の増加傾向、減少に一転。そもそも敷金と礼金はなぜ必要?

リクルート住まいカンパニーが「2019年度 賃貸契約者動向調査」(2019年度に首都圏で賃貸物件を契約した人が対象)の結果を発表した。近年増加傾向にあった、敷金・礼金ゼロ物件が減少に転じたという。賃貸の部屋探しの現場は、今どうなっているのだろう?【今週の住活トピック】

「2019年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」を発表/リクルート住まいカンパニー

敷金ゼロ・礼金ゼロの物件が増加から減少へ

調査結果から敷金と礼金の2019年度の平均額を確認しよう。

・敷金の平均額: 1.0カ月

・礼金の平均額: 0.7カ月

敷金は、10年前の2009年度では平均額が1.5カ月だったが、前年度(2018年度)には0.9カ月まで減少し、2019年度に1.0カ月となった。2013年度以降は1.1~0.9カ月で推移し、おおむね1カ月という状態が続いている。一方礼金は、10年前の2009年度では平均額が0.8カ月だったが、2017年度以降は0.7カ月が続いており、ここ10年で大きな変化は見られない。

敷金と礼金の平均額に大きな影響を与えているのが、「ゼロ物件」の割合だ。2019年度の結果を確認しよう。

・敷金ゼロ物件の契約割合: 25.5% (前年度28.1%)

・礼金ゼロ物件の契約割合: 40.2% (前年度43.5%)

敷金ゼロ物件の契約割合は、前年度の28.1%から下がったが、それでも4件に1件は敷金ゼロ物件を契約していることになる。一方礼金ゼロ物件の契約割合は、敷金ゼロ物件よりも多い。こちらも前年度の43.5%から下がったが、8年連続で4割超えが続いている。

敷金0カ月物件の契約割合(実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」より転載)

敷金0カ月物件の契約割合(実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」より転載)

礼金0カ月物件の契約割合(実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」より転載)

礼金0カ月物件の契約割合(実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」より転載)

つまり、ゼロ物件の比率の違いによって平均額に差が出ているが、ゼロではない場合は、「敷金1カ月、礼金1カ月」がスタンダードと考えてよいのだろう。

敷金・礼金は何に使われる?なぜゼロにできる?

では、敷金・礼金は何に使われるものなのだろうか。

「敷金」は、家賃の滞納や補修などに使われる、いわば保証金のようなもの。保証として貸主が預かるものなので、原則として返還されるものだ。ただし、借主には賃貸住宅の原状回復義務があるので、居住中に損傷した部分の補修費用などをのぞいた額が返金されるのが一般的だ。

注:ただし、地域によっては「敷引き」と言われる商慣習が残っていて、あらかじめ一定額を差し引いて返金するという契約の場合もある。

「礼金」はその名の通り、貸主に謝意を表すものとして差し上げるもの。お礼なので返還されることはない。とはいえ、近年は不動産会社が介在することで、大家さんと入居者との関係性は薄れているので、礼金の意味合いも失われてきている。

敷金については、家賃の滞納発覚からその回収まで2カ月程度かかることから、かつては敷金2カ月、礼金1カ月といった時代もあった。近年では、保証料を払って家賃保証会社に保証してもらうスタイルが増えているので、滞納や補修に関する貸主のリスクも減っている。

一方、借主にとっては、敷金・礼金を含む初期費用が高くなると、住み替え自体が難しくなってしまう。この調査結果でも「部屋探しで決め手となった項目」として、30.9%の人が「初期費用<礼金・敷金・仲介手数料など>」を挙げている。家余りの今は借主が有利な市場なので、敷金・礼金を引き下げる傾向が続いている。その結果、敷金や礼金がゼロの物件が市場に多いというわけだ。

原状回復費用に伴う敷金返還トラブルが多いのはなぜ?

さて、敷金の役割からいって、退去時に何もなければ全額返還されるはずだ。しかし、現実にはそうはいかない。退去後に敷金が戻らないとか、敷金で不足する多額の原状回復費用を請求されたといったトラブルも多い。2020年4月の民法改正では、敷金が定義され、原状回復義務の範囲に関しても明文化された。それだけ、敷金返還のトラブルは多かったということだ。

借主に責任のない、通常の使用による損耗や経年劣化などについては、借主に原状回復義務がない。例えば、長く暮らせば畳が日焼けしたりするが、それは経年劣化なので、次の入居者のために畳を張り替えるのは貸主が負担すべきもの。家具を設置したら床に跡が付くのは通常の使用によるものなので、床の張り替え費用は貸主が負担すべきもの。といったことだ。

こうした費用まで借主に請求することで、トラブルになるケースが多いので、注意が必要だ。詳しくは、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公開しているので、ぜひ確認してほしい。

●国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

さて、「敷金・礼金がゼロゼロなら初期費用が安くて助かる」と思う人も多いだろう。ただし、敷金の代わりに退去時のハウスクリーニング費用という形で負担を求めていたり、賃料に少しずつ上乗せされていたりする場合もある。広告に大きく表示されている費用だけでなく、最終的にいついくら支払うかの総費用を確認して、そのうえで部屋を決めるようにしてほしい。

元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/09/174875_main.jpg 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

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