生きる力・レジリエンスとは?子どもの「折れない」心を育む方法とは

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生きる力・レジリエンスとは?子どもの「折れない」心を育む方法とは
「ちょっとしたことで泣く」「できないとすぐにあきらめる」など、嫌なことがあったときの子どもの行動が心配になった経験はありませんか。これから長い人生を控えた子どもたちに「生きる力」をつけてほしいと願う親は多いもの。生きる力の一つとして、近年注目されているのが、嫌なことや困難なことに直面し、一時的に気持ちが落ち込んでも、忍耐力や柔軟性をもって立ち直ることができる「レジリエンス」と呼ばれる力です。

子どものレジリエンスには、親の接し方や声かけが大きく影響するといいます。人生には、進学や就職など、自分の思い通りにいかないこともたくさんあります。将来、挫折を経験したとしても、しなやかに乗り越えられるように、親が心がけたいことは。心理カウンセラーの藤村高志さんに聞きました。

「その子らしさ」を理解し、いつでも気持ちに寄り添うことで自己肯定感を高める。親が先回りして助けると、失敗するチャンスを奪うことになる

Q:そもそも「レジリエンス」とはどのような力ですか?
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困難な状況に直面しても、うまく適応する能力のことで、「精神的回復力」とも言われます。心理学的には、「ストレスやトラウマなどの困難をはね返し、未来に向かって前向きになれる力または過程」と定義されます。

赤ちゃんが、初めて言葉を覚えたり、歩いたりするとき、何度失敗しても決してへこたれないように、もとは誰もが生まれつき持っている力です。成長につれ、周囲から押さえつけられる、否定される、といった環境的な要因により、レジリエンスが失われてきます。

繊細、不器用、など本人の生まれ持った気質とは関係ありません。大きく影響するのは、一緒に暮らす親の考え方や接し方です。つまり、親のレジリエンスが高ければ、子どもも高くなります。ただ、親のレジリエンスも、自身が育ってきた環境に大きく左右されるため、世代間連鎖が生まれやすいといえます。

Q:レジリエンスが高い子どもは、どんな特徴がありますか?
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①自己肯定感が高い
長所・短所を含む自分の特性を理解し、「自分は大切な存在だ」という高い自己肯定感を持っています。そのため、ほかの人と比べて自分を卑下したり、周囲の評価をそれほど気にしたりすることがありません。

②好奇心が強く、新しいことに挑戦できる
チャレンジすることへの恐れや不安が小さく、初めて体験することでも意欲的に取り組むことができます。

③柔軟性がある
他人の言動も含め、変化に対応する力があります。

④他者を信頼できる
うまくいかないことがあっても、他者に相談したり、助けを求めたりすることができます。

⑤感情の調整力がある
特に、ネガティブな感情を「消化する」方法を知っています。
悲しいときに、泣かないように気持ちを抑えると、後々まで気持ちが残ってしまい、トラウマになる可能性があります。声に出して泣くなど感情表現ができ、他者に受け止めてもらうことで、適切に気持ちを消化できます。

⑥目標達成まで、忍耐強く努力する
「最初はできなくて当たり前」という意識で、明確な目標をイメージし、努力することができます。すぐに結果を求められ、達成する喜びを感じた経験がなければ、すぐにあきらめるようになります。

Q:レジリエンスを育むために、親が心がけたい接し方や声かけは?
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(1)「ほめる」のではなく「認める」
「100点をとってえらかったね」とほめるのは、「良い点数を取ってほしい」という親の価値観が含まれます。それよりも、本人そのものや、本人がやりたいことを「〇〇しているんだね」と、認めてください。「どんな自分も受け入れてもらえる」という自己肯定感と自尊心を育むことができます。普段から、子どものことをよく見て、話を聞き、叱ったときでもギュっと抱きしめてください。

(2)ネガティブな感情に寄り添う
幼い子どもが転んだとき、「転んで痛かったね」と、気持ちに寄り添って声をかける親は多いはずです。成長しても「〇〇だったんだね、それはつらいね」と、赤ちゃんの頃の「よしよし・トントン」を心がけてください。ネガティブな感情を受け止めてくれる相手がいると、感情の消化方法が分かり、耐える力が身に付きます。

(3)悪いことをしても、気持ちを否定しない
悪いことをすれば叱るのは当然です。やっていいことと悪いことを区別する判断力と忍耐力を育みましょう。ポイントは、行動を否定しても気持ちは否定しないこと。
「腹が立ったんだよね、分かるよ。でも、たたいてはいけないよ」など、子どもの気持ちに寄り添った声かけを心がけてください。

(4)持って生まれた「気質」を理解する
子どもの個性を認め、「できるところ」を磨くと意識してください。例えば、マイペースでおっとりした気質の子どもに、「早く」「まだできないの?」など焦らすような声かけは逆効果です。すべてにおいて100点満点を目指すのではなく、「その子らしさ」を大事にしてあげてください。社会に出たときに、それが強みとなります。

(5)好奇心を育てる
「好きなこと」や「時間を忘れて集中できること」を見つけましょう。好きなことなら、うまくいかなくても、努力やがまんをしながら続けることができ、やがて「得意なこと」になります。ゲームや虫、泥遊びなど、親が「苦手」「ちょっと危ない」と思うことでも、子どもが興味を持つなら見守ってください。

(6)できない理由ではなく、できるようになる方法を探す
何かできないことがあったとき、子どもに「どうしてできないの?」と問い詰めていませんか。例えば、「勉強ができない理由」より、「成績を上げる方法」と調べた方が、前向きな答えが集まります。子どもにも「どうすればできるようになる?」と質問してください。できるようになるための行動として、「できる人」のまねをすることも学んでいきます。

(7)達成感を得られる目標を持たせる
ジグソーパズルは、完成した絵や写真をイメージできるため、コツコツとピースをはめる作業に没頭できます。どんな目標でも、達成したときのワクワクした気持ちが想像できなければ、努力やがまんができません。目標が決まったら、最後までやり遂げるように、無理のないルールを子どもと一緒につくりましょう。

Q:子どものレジリエンスに逆効果となる親の行動は?
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前述の接し方に反する行動に加えて、次のような行動も逆効果です。

<子どもに恐れや絶望を感じさせる叱り方>
・威圧的・ヒステリックに叱る
子どもに恐怖感を与えると、自主性を失います。行動の理由を聞き、子どもの気持ちを否定しないことがポイントです。

・子どもを隔離するような罰を与える
外に締め出す、押し入れに閉じ込めるなどの罰は子どもを絶望させ、「自分はいらない子なのだ」「受け入れてもらえない」と感じます。

<否定感を与える>
・逆接の接続詞「でも・だけど・しかし」を使う
「そうだね、そして」など、子どもの行動や意見を認めるような声かけを。

・欠点を修正しようとする
「できていないこと」を前提にすると「ダメな自分」が強調され、自己肯定感が育まれません。

・「変えることができない」ことを否定する
見た目や気持ちなど、本人がどうしようもないことを否定しないようにしましょう。

<過保護・過干渉>
親が先回りして手を貸すことは、失敗するチャンスを奪っているのです。失敗から学ぶことは多く、乗り越えた経験は自信になります。親が助けすぎると、自立心や行動意欲が失われます。

<他の子と比較する>
競争意識をあおると、他者を「敵」とみなすようになります。社会に出てからも、目的達成のために他者と助け合える力は強みになります。協調性や他者を信頼する気持ちを育みましょう。

Q:いくつになっても、レジリエンスを育むことは可能ですか?
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何歳からでもレジリエンスを育てることはできます。

ミラーニューロンと呼ばれる脳内の神経細胞により、子どもは親から大きな影響を受けます。言葉でも食べ方でも、親の行動や思考パターンが自然に身に付いていきます。そのため、親がレジリエンスを低める考え方や行動をとると、子どもがその力を伸ばすことは難しいといえます。

大人になってから、先生や友人、上司など、周囲にレジリエンスが高い人がいる環境に身を置くと、自身のレジリエンスも磨かれます。大学生や社会人になって、急に「自信がついた」「性格が変わった」という人がいるのは、このためです。また、カウンセリングに来られる人の中にも、低かった自己肯定感を回復させ、前向きな考え方を身に付けたケースはあります。

社会で成功している人は、レジリエンスが高い人が多いです。

ただ、結果を求められ、失敗が許されない社会においては、親自身がレジリエンスを高める行動をあらゆる場面で実践するのは難しいかもしれません。まずは、これらの考え方を意識することから始めてみましょう。

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