自動運転も重要だが、それより深刻な充電難民問題【いまどき・これからの車学】
輸入車を中心に加速するEV、PHV市場
筆者は国産のPHV(プラグインハイブリッド)に乗っているが、最近気になるのが充電インフラの問題だ。
現在、電動化車両の充電方式はテスラのスーパーチャージャーを除けば大きく2種類に分類される。
充電時間は長いが費用の安価な普通充電器は、トヨタの各ディーラーにある「G-STATION」や大型ショッピングセンターなどに台数も多く設置されている。
一方、急速充電はリーフが先鞭をつけた形で日産ディーラーの多くに急速/普通併用型も含めた充電器が設置されている。
この他のメーカーのインフラも徐々に増えてはいるが、前述した2社の設置数には及ばない。
さらに日産はインフラ強化の一環として2012年10月よりファミリーマートと提携し急速充電器の設置・運用を行っており、2018年2月の段階でコンビニ全体として1000基以上の急速充電器が設置されている。
利用する時間帯にもよるが、これまでは実際のEVの販売台数とインフラのバランスはまずまず維持できていた。
しかし昨今、特に高速道路のSAなどにある急速充電スペースの渋滞が目立つ。
マンションなどの集合住宅に住むオーナーであればほとんどの場合、充電は前述した場所に限定される。
しかし問題になっているのは自宅に充電器があるのにそれを使わずに外で充電しようという傾向が強まっている点だ。
誤解のないように言っておくとすべてのユーザーがそうなのではなく、定額制により急速充電を「使い放題」で契約している人にとっては当然外で充電すれば電気代はかからないというわけだ。
この動きを察知して、日産は2019年12月に充電プランの大幅見直しを行い、急速充電器の使い放題を実質取り止めている。
これ自体は賢明な判断だと思いつつも中古車で買い得感の高くなった旧型リーフを含め、EVを購入しようと考えていた人にとっては当てが外れた格好といえる。
その中、国産車より勢いが強まりつつあるのが、輸入車勢の国内導入だ。
昨今ではプジョーが新型208にBEVをラインナップ、同じグループ内のDSも近々にモデルを発表する。
さらにVWの「iD3」も含め、欧州から主要市場である中国に続き日本にターゲットを絞っている。
だが、どのメーカーも車の情報は出すがインフラについては未確定な部分が多い。
日本は中国などに比べると一時期よりインフラの設置スピードは鈍化しているというデータもある。
実は2020年は次世代充電器「ChaoJi(チャオジ)」の規格が最終確定されるタイミングでもある。
日本が圧倒的な市場を持つ中国に合流する形で決まったこの規格自体が実際運用されるまではまだ10年以上かかるはずだが、その前に現状の充電システムの利用頻度は上限に達する可能性も高い。
一部の車のみでしか使えない充電施設の空き状況の「見える化」、また根本的に充電回数を減らすために高密度バッテリーの搭載などが当面の解決方法として思い浮かぶがあくまでも暫定的。
自動運転も重要だが、充電問題の改善こそ直近の課題と言えるのではないだろうか。
文/高山正寛、写真/グループPSAジャパン
※カーセンサーEDGE 2020年9月号(2020年7月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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