マイナポイント還元はお得?マイナンバーカード取得とキャッシュレスは進むのか
(画像転用元:https://mynumbercard.point.soumu.go.jp/)
2020年9月から一人最大5000ptがもらえる「マイナポイント」がスタート。これに先駆け、ポイント還元を受けるためのキャッシュレス決済サービスの登録が始まっています。2021年3月までの7カ月間、マイナンバーカードを持っていて事前に登録した人を対象に、2万円分までの買い物やチャージで25%がポイント還元されるというもの。さらに、決済サービス事業者が、それぞれポイントを上乗せするキャンペーンを打ち出し、利用者獲得に動き出しています。
ただ、マイナンバーカード取得には「手続きが面倒」「セキュリティーに不安」という声が依然多いようです。実際マイナンバーカードの取得率は、全国で17.5%止まり(2020年7月1日現在)。定額給付金のオンライン申請で混乱を露呈したこともあり、国は生体認証やスマートフォンへの搭載など、デジタル化に関する仕組みの検討やシステムの強化を今後の課題としています。各種届出・申請や給付金支給のほか、今後どのような利便性が見込まれるのかなど、ファイナンシャルプランナーの平原憲治さんに聞きました。
社員証・健康保険証・各種免許証など搭載情報は増えても、個人レベルでの利便性は未知数。マイナポイントの期間延長や、新たなキャンペーン登場の可能性も
Q:2016年から運用されているマイナンバーカードは、現在どのような場面で活用されているのですか?
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マイナンバーカードは、個人番号の提示が必要な場面で利用できるプラスチック製のカードで、券面に氏名、住所、生年月日、性別、マイナンバー(個人番号)が記載され、本人の顔写真なども表示されています。電子証明書が入ったICチップが内蔵されていて、自治体の各種サービスや、e-Taxなどのオンライン申請などができます。
定額給付金支給の際のオンライン申請で利用が奨励されましたが、一部の自治体の混乱を露呈することになったのは、記憶に新しいところです。国は将来的に全ての国民への普及を目指していますが、今のところ、2225万枚余り(7月1日現在)の発行に止まっています。そのうち3・4・5月はそれぞれ50~60万枚のペースでしたが、6月には90万枚と1.5倍の伸び率となっています。
定額給付金の申請で混乱したとはいえ、トラブルがなければ手軽なオンライン申請に惹かれて、取得に結びついたということもあるかもしれません。
Q:今回のマイナポイントとはどのようなものですか?
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キャッシュレス決済の推進とマイナンバーカードの普及を目的に、6月末までのキャッシュレス決済のポイント還元キャンペーンの第二弾として打ち出したものです。「マイナンバーカードを持っている人」を対象に、2万円分までの「買い物での利用」あるいは「チャージ」に対して、1人あたり5000ポイント(5000円相当)を上限としてポイントが付与されます。
第一弾のポイント還元とは異なり、マイナンバーカードの取得が前提となるうえ、ポイントを管理する口座に当たる「マイキーID」の設定が必要となります。
専用サイトにアクセスし、ポイント付与の対象となる決済方法を指定。9月から2021年3月末までの7カ月間、そのサービスを利用すれば、ポイントが付与されるというものです。
交通系電子マネーやQRコード、クレジットカードなど100を超えるキャッシュレスサービスから選ぶことができ、ポイント付与の条件は登録するキャッシュレス決済サービスによって異なりますが、そのポイント還元率は実に25%にもなります。
ただ、前回のキャンペーンでは、利用者だけではなく、事業者側にも手数料などの還元がありましたが、今回は、事業者側にはそうした補助がありません。キャッシュレス決済で買い物をしても、手数料などは店舗が負担することになります。
小規模な店舗で負担ばかりが増え、メリットがないようでは、また現金決済優先に戻るのでは、ということが危惧されます。
Q:マイナンバーは家族全員に与えられています。クレジットカードなどを持たない子どものマイナポイントの申し込みや決済サービスはどうなりますか?
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定額給付金と同様、マイナポイントは国民全てに付与されたマイナンバーカードの取得が条件なので、家族全員分を取得して、ポイント還元を利用すれば「5000円分×家族の人数分」お得に買い物ができることになります。
15歳未満の未成年者の予約・申し込みについては、法定代理人、つまり父母などが行うことができます。この場合のマイナポイントは、父母などの名義のキャッシュレス決済サービスをポイント付与対象として申し込むことができます。
ただ、同一のキャッシュレス決済サービスに複数人のマイナポイントを合算して付与することはできないので、父母名義の別のキャッシュレス決済サービスを選択して申請する必要があります。
Q:マイナポイントの申し込みに際して、決済サービス各社が独自のポイント上乗せキャンペーンを実施しています。多くのサービスの中から選ぶ際のポイントは?
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マイナポイントに参加しているキャッシュレス決済サービスは、電子マネー・クレジットカード・プリペイドカード・QRコード決済・デビットカードなど、チャージタイプ、後払いタイプを合わせて、111(7月23日時点)。今後も追加される様子です。
マイナポイントの申請時には、キャッシュレス決済サービス一つを登録する必要があるので、各決済サービスは、この機会に利用者を獲得するために、独自の上乗せキャンペーンを実施しています。その内容は、サービスによって実にさまざまで、特典ポイントやクーポンの付与、抽選キャンペーンなど、それぞれ趣向を凝らしています。
専用サイトの中から、お得感がより大きいものを選べばよいのですが、その際に注意するべきポイントがいくつかあります。
①一度登録したサービスは変更できないため、今後、より魅力的なキャンペーンを発表する事業者が出てきても乗り換えられない。
②決済サービスを選んでも、それだけでマイナポイントが付く訳ではなく、各サービスによって独自の登録方法がある場合も。
③付与されたポイントの使用方法は、選んだサービス内のみに限定される。
④ポイントの使用に期限が設定されているものもある。
⑤お得感が大きいものでも、自分があまり使う機会がないサービスは、ポイント使用が不便。
また、チャージをするタイプのサービスを選んだ場合は、そのタイミングにも注意しなければなりません。事前にチャージ済みのものを、9月以降に使用しても、ポイントが付かないことになってしまいます。
以上のことに注意しながら、サービスの内容をじっくり確認する必要がありますが、個人的には、日頃から使い慣れたサービスの中から選ぶことをおすすめします。
加えてマイナポイントの申請が想定ほど進まなければ、期間延長や新たなキャンペーンの展開があるかもしれません。また自治体レベルでも独自のポイントの還元キャンペーンを実施する動きもあります。
現時点で慌てて行動することは、あまり得策ではないとも考えられます。
Q: 国は、マイナンバー機能のスマートフォン搭載や生体認証の利用などを、有識者らが参加するワーキンググループで検討する方針を明らかにしています。セキュリティーが不安という人も多い中、この構想に現実味はありますか?
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マイナンバーカードは2021年3月から健康保険証としても利用できるようになり、保険証の機能に加えて、学校などで受けた健康診断結果を閲覧できるようにするなど機能の追加を目指しています。
有識者らが参加する国のワーキンググループでは、運転免許証をはじめとする免許証や国家資格証のデジタル化なども検討しています。またマイナンバーカードを社員証として活用することを試験的に導入している企業もあるなど、今後さらに多くの機能が搭載されることになりそうです。暗唱番号以外の多くの個人情報を搭載することになれば、活用できる場面も増える一方、それだけ紛失や漏洩のリスクも高まります。
検討項目の一つである、スマホのアプリにマイナンバーカードと同等の機能を持たせる構想や、生体認証を取り入れる構想もまた同じように、利便性が向上するに伴って、国が個人の生体情報を保有することに対する嫌悪感やセキュリティーへの不安を持つ人も増大するでしょう。
国や自治体のオンライン技術のさらなる向上が必須になるというわけです。
個人レベルで、マイナンバーカードを持っている有用性が実感できない限り、マイナポイントキャンペーンをもってしても、国が想定するほど飛躍的な普及率の向上は難しいかもれません 。
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