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『千日の瑠璃』380日目——私は信号機だ。(丸山健二小説連載)

 

私は信号機だ。

首尾一貫し、整然とした体系を備え、単純明快な合図を確固として送りつづける、信号機だ。この交差点で私は、まほろ町の人々のちぐはぐな動きを完全に制御する。歩行者も、運転者も、ただおろおろするばかりの年寄りも、腕白で利かん気の子どもも、盲人も、聾者も、周囲から指弾されている者も、車行と走行の差に苛立ちを覚えている犬や猫も、私が発する光と音を正しく理解し、その意味するところに己れの行動をきちんと合せる。この世には意味があるともないとも言えない、ただそこに物があるだけだ、と言い切る元大学教授でさえも、所詮は物でしかない私に、正真正銘の意味を間違いなく感じているのだ。

私のことを権力の一部と見做し、束縛の入口と考える、威勢のいい、しかし頭のわるい若者は、ときとして私に逆らい、私を無視する。そうやってかれらは愚にもつかぬその場限りの刺戟に浸り、ともかくきょうを生きた証しとする。そして運に見放された何人かは、勝ったところで得るものが少ない危険な賭けに失敗し、大怪我をした。そのひとりは、それまで生きた年数の二倍から三倍も車椅子と共に生きなくてはならない破目に陥った。また、立派な臓器の提供者になれたかもしれないふたりが、体をぐしゃぐしゃに潰されて死んだ。

だが、あの少年世一は依然として無事だ。私を愚弄しつづける、いまいましいあの反逆児、望むらくは彼の轢死せんことを。
(10・15・日)

丸山健二×ガジェット通信

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