日本のダイエット産業はおかし過ぎる!?

 低炭水化物、低糖質、一日一食…。世の中には様々なダイエットや健康法が流行しているが、そういった食事制限系ダイエットや健康法によって、日本人の多くが飢餓状態、栄養不足に陥っている。
 そう指摘するのは「高須病院」理事長として、また美容外科「高須クリニック」院長としても活躍中の高須克弥院長だ。高須院長の新刊『その健康法では「早死に」する!』(扶桑社/刊)では、蔓延する危険なダイエット法や健康法を痛烈に批判して警鐘を鳴らし、本当の健康を手に入れるためにはどうすればいいのかを書き尽くしている。

 今回はその高須院長にインタビューを敢行。この本に込めた高須院長の想いとは? そして、現代のダイエットの何が問題なのか? いよいよインタビューは後編へ!
(新刊JP編集部/金井元貴)

■日本のダイエット産業の“おかしな現状”

―マスメディアもダイエットについては、過剰とも思えるほど煽りますよね。最新のダイエットを紹介したり。

「これは、アメリカの陰謀と僕は思っています。ジャンクフードがアメリカ文化とともに日本中で広まりましたが、あれだけトランス脂肪酸や糖分をたくさん摂れば誰でも太りますよ。そして、日本人を太らせて、痩せるための産業を創り出すわけです。マッチポンプですよ。
この、太っている人を多くして、痩せる産業を創って儲けるというやり方はビジネスとしては確かに良いのかも知れません。普通にみんなが生活していたら太っている人は少なかったでしょうし、ダイエット産業も育ちませんからね。ただ、これじゃ日本がアメリカの植民地になってしまっています。アメリカではね、極端なデブが多いんですよ」

―確かに日本ではあまり見られないくらい太っている人が多いですね。

「だから、心臓病が多いんです。アメリカと日本では、肥満の多さも、摂取カロリー量も全く違うのに、アメリカがグローバルスタンダードを押しつけてくる。日本の厚生労働省はいつもアメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)の後を追随していますしね。BSE問題のときはさすがに抵抗していましたが、それ以外では『アメリカではこうだ』とすぐに言ってきます」

―文化にせよ、風潮にせよ、アメリカナイズされているところはありますよね。産業というと、出版業界でもダイエット本がすごく売れたりします。

「そうやって『痩せろ』という風潮を作り出すんですよ」

―そうです。みんながやっているから「痩せなきゃいけない」と思い込んでしまっているんですよね。テレビではダイエット特集が組まれていますし。

「なのに、ジャンクフードの広告がバンバン流れるわけですよね。日本の場合、まだアメリカのような極端な肥満が多い社会になる前から、ダイエットを早取りしていて、そんなにデブが多くないのにわざわざ痩せようとしている。
だったら、栄養失調の人が増えている現状に目を向けたほうがいいですよ。特にご老人の栄養失調ですよね。怪我をしてしまったときのリハビリは、脂肪が多い人のほうが早く治る傾向にあることが分かっています。だから、栄養状態が良ければ寝たきり老人になる確率も低くなるんですよ。栄養がちゃんと摂れていれば転んでも骨は折れにくくなるんだから」

―悪者扱いされている脂肪やコレステロールより、ストレスの方が健康に対して害が大きいようにも思いますが、ストレスが与える外見への影響について教えていただけますか?

「それは、ストレスで追い詰められてしまっている人の表情や顔色を見れば、分かると思いますよ。また、それがひどくなれば、うつ病まで発展してしまうこともあります。
産業医にとって今、一番の悩みは職場のうつ病です。会社が成立できないくらい患者が多くなってきて、さらに産業医にもストレスがたまって、やられている。社会問題ですよ、これは。しかも会社側で心を病む人は上層部に多いんです。だから、会社にとって大事な人材がみんなおかしくなって、たいていストレスが原因だと分かっているものの、どうすればいいのかみんな分からなくなっているんでしょうね」

―よく考えると仕事だけではなく、健康対策も含めて、身の回りの多くが我慢とか規制で成り立っているように思います。ダイエットをして好きなものを食べないというのも我慢ですが、そこからストレスが生まれる。

「だから、そういう風にしている、いわゆる健康オタク的な人が結構産業医のお世話になっていたりするんですよ。逆に『釣りバカ日誌』に出てくるハマちゃんみたいな人はかからないの。なりようがないですから。
長生きしようとして変なものを食べたり、飲んだりしていると、秦の始皇帝みたいになりますよ(*1)。逆に長生きしている人たちは、ストレスフリーの生活を送っている人たちが多いです」

―では、最後に読者の皆さまにメッセージをお願い致します。

「自分の身体が命じるままに生きることが、どんな医者の言うことや、処方する薬を使うよりも長生きに通じる道のはずです。
ただ、医療の現場も変わりつつあって、以前は『こういう風に薬を飲むべきだ』『この時間に眠るべきだ』『カロリーはこれだけ摂取すべきだ』と厳密にしていたんだけど、そういう風にしていてもなかなか患者が良くなりにくかったんですよ。逆に、当の本人が『こんなに飲めません!』と言って薬の量を減らしたり、セオリー通りにやらない方が、患者の身体が良くなる傾向があったんです。だから、医学もその方向に進んできています。この本も、いろんな健康法とかダイエットに縛られすぎてはいけない、もっといい加減にやってくださいということを勧めるための“いい加減のススメ”なんです」

―つまり、これをしろ、あれをしろというところから解放される、と。

「医者は自分の教わった通りに患者に指示をするの。けれど、人間の身体の中にある叡智って、医者が短期間に覚えたものよりもたくさんの情報が入っているんですよ。薬が合わなかったら、身体がちゃんと命令を出します。だから、誰かの本を読んで盲目的に信じるのではなく、そこに書かれていることは本当かな、と思った方がいいんです。もちろん、この本もそうで、ここに書かれていることが絶対正しいから勧めているわけではなく、皆さんが今までやってきたことは変じゃないか、ということに目を覚ましていただくための啓蒙書のつもりなんですよ。まあ、僕は不真面目な美容外科医だというイメージが強すぎてなかなか信じてもらえないけれどね(笑)」

―そう思う人もいらっしゃるかも知れませんね。でも…。

「でも、ずっと前から同じ主張を書いているんですよ。だから、昔出した本を、もう一度復刻したいくらいですね(笑)」

(了)

(*1) 不死を手に入れるべく医師や学者が処方した水銀入りの薬を服用し、死に至ったという伝説が残されている。



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