台湾の家と暮らし[6] 台北の中心地の賃貸マンションをリノベーション! フォントデザイナーの自宅兼オフィス
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暮らしや旅のエッセイスト・柳沢小実が台湾の家を訪れる本連載。2020年、3軒目におじゃましたのは、ジョー(張軒豪)さんが住む、台北市の中心部・南京復興エリアのマンションです。ジョーさんの暮らしと、台湾の賃貸物件のリノベーションについて、お話を伺いました。連載名:台湾の家と暮らし
雑誌や書籍、新聞などで連載を持つ暮らしのエッセイスト・柳沢小実さんは、年4回は台湾に通い、台湾についての書籍も手掛けています。そんな柳沢さんは、「台湾の人の暮らしは、日本人と似ているようでかなり違って面白い」と言います。2019年に続き柳沢さんが、自分らしく暮らす方々の住まいへお邪魔しました。
ジョーさんが住むのは台北中心部の賃貸物件
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台湾は、都心でも仕事と暮らしの距離感が密接(写真撮影/KRIS KANG)
台北市の中心に位置する、南京復興駅。地下鉄が2線通っているため利便性が高く、会社やお洒落なレストランなども多いエリアです。フォントデザイナーのジョーさんの住居兼オフィスは、昨年取材した方々と同様、台北ではごく一般的な築40年の4階建て低層マンション。エレベーターはなく、階段で部屋まで上がっていきます。
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ジョーさんが暮らすマンション。1階は友人のデザイン会社(写真撮影/KRIS KANG)
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明るい光がたっぷりと差し込む窓辺(写真撮影/KRIS KANG)
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(写真撮影/KRIS KANG)
ジョーさんにとってこの住まいは、オランダ留学などを経て5軒目。「台湾で、いい部屋を探すのは難しい」と、ジョーさんもこれまで取材した人たちも口をそろえて言います。1階にあるデザイン会社の人から紹介されてこの賃貸マンションと出合い、入居したのは3年前。ここはジョーさんにとって、生活と仕事の空間です。
台湾では賃貸物件でもリノベーションできる場合も
この部屋を借りようと思った決め手は、ガラスや柵などの古いディティールでした。台湾では、大家さんとの交渉次第で、賃貸物件でもリノベーションが可能な場合もあります。ジョーさんはインテリアデザインの会社に依頼して、2カ月間くらいかけて縦長の3部屋をワンルームにしました。
台湾のマンションは、持ち家であればベランダやサッシ、玄関ドアなど、日本では共有部分とみなされる部分もリフォームできます。そのため、持ち家の人はベランダ部分をサンルームにしたり、さらに外側に拡張させたりと、自由に手を加えています。
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台北は、5階建てくらいの低層マンションが多くみられる(写真撮影/KRIS KANG)
交渉次第では賃貸でもリノベーション可能と書きましたが、賃貸契約は大家さん側の権利が強く、それゆえのトラブルも多々あります。例えば住人が費用を負担してリノベーションやリフォームをした後に、すぐに住人を追い出して、さらに高い家賃で他の人に貸す悪徳家主も少なくないそう。このような理由で、人気のお店も移転や閉店せざるを得ないこともあります。台湾の不動産事情の問題点のひとつだと聞きました。
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ジョーさんの住まいは、約59平米のワンルーム(イラスト/Rosy Chang)
玄関は、日本の金沢市(石川県)で見たというギャラリーのデザインを参考に。玄関横のデッドスペースには土間のようにしたベースの上に石を敷いて、靴置き場にしました。おかげで生活感が消えて、ギャラリーのようにお客さんを迎えやすい空間に生まれ変わりました。また、古いものも好きなので、他の人の家で使っていた古い床材を譲ってもらって、色を塗って床に貼っています。天井はもともと高かったため、手を加えずにそのまま利用しているそうです。
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玄関まわりに石を敷くアイデアは真似しやすそう(写真撮影/KRIS KANG)
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(写真撮影/KRIS KANG)
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(写真撮影/KRIS KANG)
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リノベーション前に壁紙をはがしたら、味のある壁が出てきた。アクリル板で覆ってデザインを活かしました(写真撮影/KRIS KANG)
海外での生活経験があるジョーさんは、ヨーロッパのAirbnbの住宅で使われているインテリアを見るのが趣味。オランダ留学時代に、現地のオランダ人の家に遊びにいったことも参考になっているそうです。また、台湾でデザイナーをしている人の家もアイデアソースに。知識やセンスが蓄積されていたおかげで、リノベーションで自分らしい空間が手に入りました。
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ジョーさんの作品(写真撮影/KRIS KANG)
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(写真撮影/KRIS KANG)
ゾーニングと収納の達人
ジョーさんが空間をアレンジしやすいからという理由で選んだ細長い部屋。日当たりのいい窓際には仕事道具のパソコンと、時々開催しているカリグラフィーのワークショップもできる大きなテーブルを置き、奥には生活感の出やすいベッドやクローゼットを配置してパーテーションで目隠しするなど、空間をさりげなくゾーン分けしています。
キッチンとクローゼットの収納は無印良品のもの。厳選した持ち物をすっきりと収納しています。クローゼットは、壁側に無印良品のシェルフを置き、天井にレールを取り付けてスライドドアを後付けしています。わざわざクローゼットを設置するよりもこのほうが断然使いやすく、コストもかかりません。また、テレビはベッドの足側に置いてあり、パーテーションの陰に隠れているため来客からは死角になっています。
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質のいい睡眠が得られそうな、ベッドスペース。クローゼットの扉は1枚のみで半分は常に開けてあるため通気性がいい(写真撮影/KRIS KANG)
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シェルフにボックスを置いて、ごちゃっと見えない工夫を(写真撮影/KRIS KANG)
キッチンはコンロが無くシンクのみというのも、日本人的には目からうろこです。調理用にはカセットコンロが置いてあるだけ。そのシンプルな設備で、週3~4日、スープなどをつくっているそう。そして、デザインが気に入った無印良品の冷蔵庫は、日本からわざわざ取り寄せました。
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シンクと作業台だけのキッチン。使いやすそう(写真撮影/KRIS KANG)
デザイナーという職業柄、インテリアのセンスも抜群なジョーさん。家具は無印良品やイケアのもので統一し、テーブルや棚は自分でデザインしてDIYしたものです。DIYの材料はWEBショップから購入しました。パソコンを棚に置いて立って仕事をしていて、場所を取るパソコンデスクがないおかげで、空間を有効に使えています。また、来客が多いため、紙製の折りたたみスツールも大活躍。広くない家だから、植物の多くは床置きせずに吊るしているそうです。
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ジョーさんのワークスペース。台湾の人は見せる収納がとても上手(写真撮影/KRIS KANG)
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(写真撮影/KRIS KANG)
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(写真撮影/KRIS KANG)
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デザイン作業は立ってやっているそう。すぐ横に音楽を楽しめるようスピーカーを置いて快適な環境づくりを(写真撮影/KRIS KANG)
台湾の人たちの多くは家の外で過ごす文化がある
台湾の人は外に出かけるのが好きで、家には寝に帰るだけというライフスタイルの人も多いよう。ジョーさんも現在の部屋に住む前はカフェに行って仕事をしていましたが、ここに越してきて家にいる時間が長くなったそうです。リノベーションした部屋に住む魅力は、自分のニーズに合った、住みたい空間がつくれること。便利な立地のため、夜は友人たちが来て家で飲み会をすることもあるのだとか。
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ジョーさんの自宅から歩いて10分ほど、興安公園の向かいにある地元っ子に大人気の香港料理店「家鴻焼鵝・興安店」。ロースト肉に行列ができる。お昼すぎると売り切れることも(写真撮影/KRIS KANG)
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皮がさくっとしていて身もジューシーなのにしつこくない。これまで私が食べた焼鵝の中でも上位に入る味(写真撮影/KRIS KANG)
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もう一軒のジョーさんの行きつけは、近所のアートギャラリー「森3 SUN SUN MUSEUM」。奥には山小屋のような小さなカフェスペース「森3BAR」があり、阿里山産のコーヒーが楽しめます(写真撮影/KRIS KANG)
おわりに
2020年、私たちはこれまでとは違った働き方や暮らし方を模索しています。今後は働き方も確実に変わりますし、その変化にともなって、住まい方も変わっていくのではないでしょうか。ジョーさんのように、住まいが仕事場でもある人の家づくりには、たくさんのヒントがあります。この記事が、新しい時代を生き抜くための参考になれば幸いです。
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(写真撮影/KRIS KANG)
●取材協力
張軒豪さん(Eyes on Type) 元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/05/172929_main.jpg 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル
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