戦後から根強く残る伝統的詐欺! 会社経営者をダマす「M資金詐欺」の手口とは?
どうも特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。
「M資金詐欺」という名前、聞いた事はありますか? 有名な詐欺なのですが、この詐欺に騙されて数億、数十億円からの莫大な金額を支払ってしまった経営者は数多くいるのです。
この詐欺、本質は一体どんなものなのでしょうか。
2017年8月に積水ハウスから63億円を騙し取ったという地面師詐欺と同様、未だ被害を広げ続ける古典的な詐欺である「M資金詐欺」。今回はその手口を解説していきたいと思います。
<画像はすべてイメージです>
M資金の“M”とは?
M資金の“M”の意味は諸説あります。しかしその中で最も有力な説は、太平洋戦争後に日本で占領政策を実施したGHQ(連合国総司令部)のウィリアム・F・マーカット少佐の頭文字からきたという説です。
GHQのマーカット少佐が指揮する部隊が日銀地下金庫にあった現金や貴金属、ダイヤなどの宝石類を旧日本軍の財産として押収。それを日本の戦後復興のための秘密資金として保有しているのがM資金、というわけです。「GHQは日本企業をアメリカンナイズに育てるため、そのM資金を無担保、長期低金利で運用していた」という噂が、全国民にまことしやかに流布されていたそうです。
しかしながら、日本政府が1952年にGHQが没収した資金は「全額返金された」ことが明らかに……。実在はしないと否定したのにもかかわらず、未だに根強く信じられているわけなんですね。
M資金は架空の存在なのですが、M資金を騙る秘密資金での詐欺手口が存在し、有名企業や活躍する実業家がこの詐欺被害に遭ってしまい、自殺者まで出ているということなんです。過去、その詐欺被害を企業のスキャンダルとして、総会屋などのフィクサーがぶちまけることもありました。恐喝のネタに使ったわけです。
資金繰りに苦しむ経営者たちの藁をも掴みたい気持ちにつけいる
このM資金詐欺の厄介なところは、人の噂で尾ひれはひれがついてしまって、結果“真実味を帯びてしまう”ところ。
例えば、「GHQが戦後に旧日本軍の財産である金塊を引き上げて押収し、どこかにプールしているらしい……。それがM資金の一部になっているそうだ……」など、信憑性がありそうな噂が人づてに伝わり、M資金詐欺話を膨らませてしまうわけです。
この無担保、長期低金利というフレーズ、企業にとっては実にありがたい話。では、詐欺師たちはどこで金を毟り取るのか……。
それは、融資を受けるためには“紹介料が必要”であったり、“利息の前払い”が存在するからなんですね。
M資金詐欺で飛び交う融資額というのは、数百億円~数兆円という規模の話。手数料や紹介料がそのうちの3~5%だったとしても、その額面は数十億円になってしまいます。
喉から手が出るほど会社を回す金が欲しいという企業経営者は、その額を前払いしても融資を受けたいとなる。こんなバカバカしい話であっても、融資の魔力にひれ伏して数十億円の紹介料を支払ってしまうんです。当然ながら、融資の実行などまったくありません。
皇族、政治家、政府官僚までどんどん登場する話
さらにM資金詐欺になくてはならないのが、皇族や政治家、政府官僚など名の知られた登場人物の存在。
「この資金を利用しているのは、実は代議士の〇〇先生なんですよ」
「実は、皇族の方々が携わっていまして……」
「日本政府高官の〇〇さんも太鼓判です。確実に融資が下りるでしょう」
などと高級ホテルのロビーで交わされる会話。
皇族関係者や大物政治家の名前やサイン、写真など次々に登場するので、大企業経営者ですら浮足立ってしまうことが多いようです。実際に有名な自動車会社や電鉄会社、航空会社などの大企業でも被害に遭うというのですから、綿密に計算され尽くした詐欺なのでしょう。
そしてメインターゲットとなるのは大企業のキーマン。大きな企業に育てた実績から「自分が騙されるわけがない」という自負もまた、被害を広げてしまう要因のひとつになっているのです。
時代に合わせて変化するM資金詐欺
M資金詐欺話というのは、手を変え品を変えて経営者の元に現れ、金を騙し取ります。M資金もそうですが、その亜流となる詐欺も外国人が融資をするというのが一般的です。その理由は裏ドリすることが難しいから。
例えば、ユダヤ系財閥のプール資金であるユダヤマネー、華僑が日本人向けに資金を溜め込んでいるという華僑マネー、アラブ系の富豪が用意するアラブマネー、キリスト教カトリックの騎士修道会が資金提供してくれるマルタの騎士団マネー、富豪の隠し資金であるロックフェラーマネーとロスチャイルドマネーなどなどバリエーションは様々です。
一致しているのは、経営者が騙される詐欺話であるというところ。
以上、いかがでしたでしょうか。早足での説明となりましたが、M資金詐欺のことがわかっていただけたかと思います。
さすがにこの規模の巨額詐欺の話は、我々一般市民の元には入ってこないとは思いますが、怪しげでおかしな話には、絶対に乗らないようにしたいものです。
(C)写真AC
(執筆者: 丸野裕行)
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