SNSで「バトン疲れ」が浮き彫りに? つながる、つなげることへのストレスと向き合い方について
外出自粛で、「STAY HOME」が叫ばれる中、おうち時間を少しでも楽しもうと、SNS上で「〇〇つなぎ」「〇〇バトン」など、人とつながる動きが広がっています。芸能界で「ギャグつなぎ」「うたつなぎ」などが話題になっているほか、一般ユーザーの間でも、本の表紙を投稿する「ブックカバーチャレンジ」など、多くの「バトン企画」が流行しています。
テーマを設け、「次は〇〇さん」と相手を指名して、次々とつながっていく企画を、純粋に楽しんで参加する人がいる一方で、自分が指名されることをプレッシャーに感じる人もいます。芸能界からも「バトン疲れ」の声が相次ぎ、共感を得ているようです。SNSでのつながりを快適に保つコツは。心理カウンセラーの西尾浩良さんに聞きました。
自分の気持ちに反する行動や発言はストレスのもとに。SNSの楽しみ方は人それぞれ。他人に振り回されず「自分を中心」に付き合うことが大切。
Q:「〇〇つなぎ」などのバトン企画に疲れを感じる原因は何でしょうか?
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バトン企画では、指名された人が自分の思いに反して、「次へつながなければいけない」と考え、ストレスを感じているのでしょう。人の健全な状態とは、自分の気持ちと、行動・発言が近いときです。気持ちとかけはなれた行動や発言をとる場面では、不安や不満などを感じ、ストレスとなります。ストレスが慢性化すると、精神的な疲れとなります。
また、バトン企画では「次は〇〇さんにお願い」と、指名されたことが当事者以外にもわかるように、オープンになっていることがさらにプレッシャーとなります。バトンを渡す側に、強制する意識はないと思いますが、多くの人が見ている中での「同調圧力」と感じてしまう人もいるようです。
「ギャグつなぎ」や「ブックカバーチャレンジ」など、ただ見ているだけなら楽しめる人が多いのではないでしょうか。
しかし、例えば「うたつなぎ」などで、「歌うのが苦手」「人前で歌うのは恥ずかしい」と思っているのに、いざバトンが回ってくると「やりたくないのに」と、ストレスを感じます。それでも、「やりたくない」と言い出すことに罪悪感を抱いたり、人からの評価が気になり「嫌われたくない」と思ったりして、やらざるを得ない場合に、大きなストレスとなります。
Q:SNSのバトン企画などを、上手にやめる方法はありますか?
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状況やコミュニティーにもよりますが、「苦手だからやめておきます」と、はっきり言えるのが一番よいです。ただ、他人に気をつかう性格の人など、言いにくい場合もあります。そのときは「つなぐ相手が思いつかないので」などと言うといいでしょう。プロフィールが設定できるSNSでは、あらかじめ、プロフィール欄に「〇〇バトンは苦手なので遠慮します」などと書いておくこともできます。
コミュニケーションとしてよくないのは、自分にバトンが回ってきたことを知っているのに、迷ったり悩んだりして、放置してしまうことです。
LINEなどグループ内でのことなら、「思いつかないから助けて!」「考えるのに時間がかかりそうなので、思いついた順にどなたかお願いできますか?」などと発信してみると、得意な人がサポートしてくれるかもしれません。
Q:SNSに限らず、「オンライン飲み会」など、オンライン上で人とつながる機会が増え、疲れを感じる人も多いようです。「SNS疲れ」と同じような状態なのでしょうか?
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「SNS疲れ」とは、SNS上で常に誰かとつながっている状態に、知らず知らずのうちにプレッシャーを感じ精神的に疲れる状態です。本来は、自分の意思でやめられるはずなのに、いつしかやめられなくなってしまいます。SNS疲れを感じやすいのは、いつも他者に気をつかっている人や、自分の評価を気にする人に多いようです。
例えば、自分が投稿した画像や動画に対して、「いいね」の数やコメントの数など、レスポンスがあるかどうかが気になります。
逆に、自分の投稿に反応してくれた人には、お返しとして自分も「すぐに反応しないといけない」と思う気持ちが強くなります。そのため、いつ来るかわからない他の人のコメントや投稿を待ち、いつでもSNSを気にしている状態になります。
一方、「オンライン飲み会」では、それぞれの自宅でつながるため、終電などを理由に途中で抜けることも難しく、気が進まない場合も断りにくいことが負担となっているようです。さらに、映像として、自分の顔や自宅が公開されることもプレッシャーとなります。そのために化粧や身だしなみを整えたり、部屋を片付けたり、準備をする人も多いでしょう。
Q:「バトン疲れ」などを放置しておくと、心や体にどのような影響をもたらしますか?
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一時的にストレスとなっても、すぐに解消できれば問題ありませんが、外出自粛などの場合では、ストレス発散となる手段が限られており、解消することが難しいかもしれません。ストレスがどんどんたまっていくと、自立神経が乱れ、眠れなくなるなど体にも不調が現れるようになります。
今は、新型コロナウイルスにより日本全体ががまんをし、欲求を抑えている状態です。気が張っているときはストレスに立ち向かえます。しかし、これから緊急事態宣言の解除などで、少しホッとしたときに、SNS疲れに限らず、それまでたまっていたストレスがあふれ、影響が出てくるのではないかと心配されます。
「アフターコロナ」では、目標に向かって努力してきたことが達成されることで、無気力になる「バーンアウト(燃え尽き)症候群」のような状態に陥る人が多く出てくるかもしれません。
Q:外出自粛の中で、SNSでのつながりを快適に保つコツは?
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直接会わなくても、ほかの人と気軽につながることができるSNSは、本来、自分の生活を便利に、豊かにしてくれるものです。
意識してほしいことは、「自分が中心」ということです。ほかの人の投稿や発信に基づいて、コミュニケーションをとろうとすると、どうしても自分の心に負担がかかります。ほかの人に合わせる、気づかうのではなく、「自己発信」を心がけてください。
自分が「誰かに伝えたい」と素直に思ったときに、その内容を発信します。伝えたいものがないのに、発信するためだけに無理に探す必要はありません。ほかの人の投稿にも、本当に「いいな」と思ったときに反応すればいいのです。
もし、SNSに「疲れているな」と気づいたときは、一度SNSと距離をとってみましょう。疲れの度合いにもよりますが、1週間ほど完全に使わないことでストレスから解放されるケースもあります。
SNSには、今回のバトン企画に限らず、いろいろな楽しみ方があると思います。もしかしたら、人に気をつかうような性格の人でも、無理なく楽しめるような新たな方法がこれから出てくるかもしれません。
SNSの使い方も、人それぞれでいいのです。自分に合った楽しみ方や使い方を知り、上手に付き合えるといいですね。
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