読んだら元気が出てスッキリ、最後はじんわり心があったまる 今読みたい!痛快翻訳ミステリ2作品

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おうちで過ごす時間が増え、久しぶりに読書にはまった方も多いのでは。もっと読みたいけど、知らない作家の本は手が出しづらいし、できれば家族で楽しめる作品があればなあという方に、読んだら元気が出てスッキリ、最後はじんわり心があったまるという、今の時期に超オススメの痛快翻訳ミステリ2作品をご紹介します。

まずは4月に発売されたばかりの話題作、ヴィクター・メソス『弁護士ダニエル・ローリンズ』(関麻衣子訳/ハヤカワミステリ文庫)を激推し! アメリカ西部ユタ州ソルトレイクシティの敏腕弁護士ダニエルは、今日もさっそうと法廷に現われ、悪人たちに正義の裁きを下していた……ならいいのですが、本書の主人公ダニエルは冒頭いきなり二日酔いでヨレヨレ。ボサボサの髪に汗臭いジーンズで、『グッド・ワイフ』のようなドラマで見かける高級スーツにハイヒールのイメージとは正反対。依頼人はショボい小悪党ばかりで、文字通り貧乏暇なしの毎日を送っています。そんなある日、彼女は麻薬密売の容疑がかけられた少年を弁護することに。調査を始めたところ、あきらかに余裕で勝てる案件のはずだったのに、事態は思いもよらぬ苦しい方向へ。差別と偏見にまみれた醜い現実がダニエルたちの前に立ちはだかるのです。

ダニエルは大酒飲みでだらしなくておまけにすぐカッとなるタイプ。しかも息子を連れて家を出た元夫に未練たらたらで、別れた理由を思い出してはいまだにうじうじ悩んでいるようなダメ人間ですが、正義感ではだれにも負けないんですよ! 依頼人となった知的障害を持つ黒人の少年を全力で守り、司法の正義を貫こうとするその活躍にはひたすら胸アツ。どんなピンチに立たされても決してあきらめないダニエルのど根性は、読んでいるだけで元気が出ます! 読み終わったらあなたもきっとダニエルの大ファンになっているはず。本書が日本初登場となる作者は、ユタ州の現役刑事弁護士。多くの未訳作品があるそうなので、次作が待たれます!

もうひとつの激推しはジャナ・デリオン『ワニの町へ来たスパイ』(島村浩子訳/創元推理文庫)。2017年に一作目の本書が刊行されて以来、熱烈なファンをじわじわと獲得してきた面白シリーズです。

“超危険な潜入捜査が専門の凄腕秘密工作員の<わたし>は、最新のミッションで相当ヤバい相手を怒らせてしまい、CIAの上司からしばらく身を隠すよう指令が出た。潜伏場所はルイジアナ州のひなびた町シンフル。え、ちょっと待って? わたしが得意なのは射撃と格闘技なんだけど! 元ミスコン女王で今は司書の女性になれって!? 絶対無理!!”

というわけでしぶしぶ向かった田舎町で、主人公はありえない仰天トラブルに次々と襲われます。いきなり保安官に逮捕されそうになったり、家の裏では人骨が見つかったり。そんな彼女に近づいてきたのは、命知らず(?)のパワフル老婦人ふたり。この3人がチームを組んで、次から次へと起こる奇妙キテレツな事件の数々を大胆な捜査と推理で解決する、ユーモア満載の作品です。アメリカ南部のおいしそうな食べ物がたくさん出てきますし、アクション映画さながらの大活躍も楽しめますが、なんといっても一番の読みどころは主人公と2人のご婦人との熱い友情! ぶっきらぼうだけど心はあったかい3人が次第に友情と信頼を深めていくくだりは、いつのまにか目のあたりがウルウルと。笑って泣いて心が晴れる、満足度120%の一冊です!

日本では続いて『ミスコン女王が殺された』、『生きるか死ぬかの町長選挙』と3作目まで出ていますが、本国アメリカでは今月なんと17冊目が刊行されたようです。読みはじめたら絶対に続きが読みたくなるこのシリーズ、どうか日本でも一刻も早く続きが読めますように。

【書いた人】♪akira
翻訳ミステリー・映画ライター。ウェブマガジン「柳下毅一郎の皆殺し映画通信」、翻訳ミステリー大賞シンジケートHP等で執筆しています。

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