生きた化石「カブトガニ」の血液はなんと青い!その理由を解説

生きた化石「カブトガニ」の血液はなんと青い!その理由を解説

血の色といわれると、ほとんどの人が赤と答えるでしょう。事実、私たち人間の血液は赤です。

しかし他の動物の中には、血液の色が赤ではない種もあります。今回紹介するカブトガニは血液はなんと青いのだとか。

ではなぜカブトガニの血液は青いのか、その理由についてご紹介します。また生きた化石といわれるカブトガニの生態についても簡単に説明しますね。

カブトガニとは

まずはカブトガニの生態など基本的なことについてみていきます。カブト「ガニ」といいますが、実際にはカニの仲間ではないそうですよ。

カブトガニの生態

カブトガニは主に干潟や海底に生息していることが多いです。雑食性ではありますが、肉食中心の傾向が見られます。

二枚貝を中心として甲殻類やゴカイをはじめとした多毛類で、海藻などいろいろなものを捕食しています。

現存するカブトガニは日本に現生するカブトガニの他に、ミナミカブトガニ、マルオカブトガニ、アメリカカブトガニの4種類が存在します。

あまり種類は多くないようにも思われますが、化石種まで含めると80種類を超えることから、かなりの種がいたグループのようです。

そんなカブトガニの大きさは、全長70~85cm程度。オスと比較してメスの方が大きいです。

カブトガニの平均寿命は20~40年程度といわれています。これはカブトガニの属する節足動物の中では長寿です。

カブトガニはカニではない

前文で「節足動物の中では」と解説しましたよね。

そう、カブトガニは節足動物の一種で、甲殻類であるカニとは別の生き物です。

カブトガニは生物学上、陸上に生息しているクモの仲間に近いといえます。とはいえ、生息域が全く異なるのにクモの仲間といわれるとしっくりこないかもしれませんね。

カニとはいっても特徴的なハサミを持っていないカブトガニは一体なんの仲間なのか、カブトガニの分類についての論争は19世紀ごろから学者たちの間で、繰り広げられたそうです。

そして進化の過程や血清学的の比較などの調査・研究の結果、カブトガニはクモの仲間であることが立証されました。

カブトガニの血液はなぜ青い?

カブトガニの血液は私たち人間と違って、青色をしています。ではなぜ色が異なるのか、それは成分が違うからです。

人間の血液で酸素を運搬する役割を担っているのは赤血球ですが、その赤血球はヘモグロビンというたんぱく質で構成されています。

ヘモグロビンには鉄が含まれているうえに、その色素が赤いという特徴があります。そのため人間の血液は赤いのです。

一方、カブトガニで同じ役割を果たしているのは、ヘモシアニンという成分。

ヘモシアニンには銅イオンが含まれています。銅イオンには青い光だけ吸収せず、通過してしまいます。

さらにヘモシアニンそのものは無色透明なのですが、酸素と結びつくと青く変色します。このような特徴があって、カブトガニの血液は青く見えるわけなのです。

医療に貢献するカブトガニの青い血

カブトガニは人間の赤と違って青い血液を有しています。このカブトガニの血液は、医療分野で注目を集めています。

なんと1リットルおよそ150万円もの価値があるといわれています。

カブトガニの血液の持つ能力

カブトガニの青い血液は、医療の世界で注目されています。その理由は、カブトガニの血液に含まれるLALという物質なんだとか。

LALを原料にして作られるLAL試薬は、対象の物質に毒素が含まれているか正確かつスピーディにチェックできます。

その対象も幅広く、開発中の薬品やワクチン、さらに食品も含まれます。

また、このLAL試薬は食中毒予防にも高い効果を発揮するようです。例えば食中毒を起こすものに大腸菌があります。

大腸菌になぜ注意しなければならないか、それはエンドトキシンという毒素を含んでいるから。この毒素が私たち人間の血液に少しでも混じると最悪の場合、ショック死を招くこともあるようです。

そしてLAL試薬は、エンドトキシンに反応する性質があります。毒素をゲル状に固めてしまって、無害化する作用が期待されています。

ほかにもカブトガニの血液には、タチプレシンやシコン、トウアズキといった成分も含まれています。

これらの成分はHIVの進行抑制効果があるといわれていますし、がんの治療薬にも使えるのではないかと期待されているほどなんだとか。

カブトガニの生息数が減少中?

カブトガニの青い血液は、人間に様々な恩恵を与えてくれます。ただ、カブトガニは減少傾向にあるといわれて絶滅が懸念されています。

アメリカでは毎年60万匹ものカブトガニから血液を採取しています。採血量は、カブトガニの総血液の30%程度です。

血液採取の際3%、採取後海に戻した後10~20%程度のカブトガニが命を落とすといわれています。

しかもメスへの負担が比較的高いこともわかっています。

メスへの負荷が大きいことで、採血後には産卵場所へ移動する頻度も減るのだとか。

命を落とす固体があり、かつメスの繁殖力が低下することで、カブトガニが減少傾向にあるという指摘も見られます。

そして数字でも変化が現れています。カブトガニの卵の密度は2018年の時点で、1平米あたり8,000個。

1990年代初めは8万個あったといいますから、1/10に減少したわけです。

今のところ絶滅危惧種に指定されていませんが、生息数が減少の一途をたどっているのもまた事実です。

そこで捕獲数を減らすような試みもすでに行われています。その一環がカブトガニの血液に代わる代用品を活用する方法です。

カブトガニの代替品も発展中

カブトガニの血液が必要なのは、LAL試薬の原料になるからですが、カブトガニの生息数が減少傾向にあるため、LAL試薬と同様のものを人工的に合成する動きも見られています。

アメリカの大手製薬会社「イーライリリー・アンド・カンパニー」社は、カブトガニの血液に代わる合成化合物の使用を開始したと発表しました。

rFCといわれる組み換えファクターCが、その代用品だそうです。

まとめ

カブトガニの青い血液は、私たち人間の命を救える存在として医療界では注目されています。

しかし一方で、このままのペースで血液を奪い取ってしまうとカブトガニの個体数維持が難しくなります。

私たちにとって、貴重な恵みのひとつ。広く使用したい気持ちもわかりますが、活用する一方でいかにカブトガニを絶滅させずに共生できるか、今後の私たちにとって重要な課題といえますね。


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