説明と証明
今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
説明と証明
よく「真に頭が良い人は(どんなバカにも)わかりやすく説明できる(はずだ)」という人がいる。すなわち「俺を納得させられないのはおまえが馬鹿だから」となる。これは「説明」と「証明」を混同していると思うのだよね。
「わかりやすい説明」というのは、ものごとの概略を簡潔に示したものだ。喩え話などが多用される。身近のものに喩えて「これと同じだ」→「なるほど、納得しました」となる。
でも喩え話というのは、説明であって証明ではない。要点を簡潔に伝えているだけで、それが正しいかどうかは別問題。だから「納得」というのが、「相手が言いたいことを理解した」という意味ならいいが、「相手の主張が正しいと同意した」という意味なら、それは違う。
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「マンガでわかる○○」という本がよくある。確かに簡潔に説明されている。しかしそれは「説明されている内容が正しい」という暗黙の了解があるから、それでいいのであって、同じスタイルで間違った説明を行なっても、読者は同じように「よくわかる」だろう。
現に宗教とか怪しげなグッズとかも、マンガで説明されていてよく「わかる」ものが少なくない。
書かれていることが正しいことを前提にしているというのであれば、教科書も同じだ。生徒は教科書に書いてあること正しいと考え、それを理解することに全力を傾ける。まあこれは仕方がない。教科書に書いてあることを自力で検証できる生徒はいない。そういう生徒はそもそも教科書を読む必要ないわけで。それが学校の勉強というものだ。
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学校の勉強ならそれでいいが、ひとたび学校の外に目を向ければ、自力で正しいかどうか検証しなければならない情報はたくさんある。書いてあることを「なるほど」と理解するだけではダメなのだ。書いてある内容はわかった。でも本当に正しいのだろうか?と、疑うことが必要。
ただ誰も彼もが疑うことは得意じゃない。そういう人のために権威ある学者や公式発表がある。偉い先生の言うことや、公的機関の発表を信じていれば、自分でいちいち疑わなくてもそうそう間違うことはない。それでいいと思うのだよね。楽だしリスクも少ない。
だけど多くの人はそれでは物足りないと感じる。そうしてアングラな情報に手を出す。そうなったら「書いてあることを理解する」だけではいけない。「どうすれば正しいことが証明できるんだろう?」と、常に疑わなければならない。
わかりやすい説明に安住せず、証明なしには何も信じず、すべてを自力で検証する…修羅の道だ(笑)。それは面白いし有意義だとは思うけど、結構大変だよ?
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「説明」なら書いてあることを理解するのに全力を傾ければいい。一方「証明」を考える場合は、むしろ書いてない部分に注目する必要がある。暗黙の内に前提としてるのは何か?
それはデバッグに似ているかもしれない。平均値を求めるには個々のデータを合計し、最後にデータの数で割ればいい。小学校で習った通り。でもそのまま作ると、データ数がゼロの場合、0で除算しようとしてエラーで止まってしまう。それまで入力しておいたデータもすべてパー(笑)。ユーザーは怒り狂って電話してくることだろう。
足し算といってもコンピュータが扱える数値は意外と小さい。整数なら40億ぐらいだ。個人のお小遣いの計算なら十分だが、兆を超える国家予算を扱うには工夫が必要。この場合も「40億を超えると正しく処理できませんよ」とはプログラムをいくら眺めてもわからない。プログラムの目に見える部分には書いてないのだ。
どこに見落としがあるか?前提としている事柄の正しさは証明済みか?を考えるのが証明であり、それは書かれていることを理解するという作業とは、まったく異質の作業なのだ。
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プログラムでなくても、不動産のチラシに「日当り良好」とあれば、駅からの距離はどうなんだろう?と考え、「駅から徒歩1分」とあれば、逆に日当たりなどほかの要素を疑わなければならない。
駅から近いし日当たりもいい。なのに格安物件。「なんでこんなに安いんですか?」と尋ねると、不動産屋は「道路が近いのでちょっと騒音が」と答えた。「なるほど、でもこの程度の騒音なら許容範囲」と、そこで思考を止めてはいけない。不動産屋があえて言わないほかの理由が存在するかもしれないからだ。
「道路が近いので~」の「説明」で納得してしまう人は、「証明」には向いていない。すべてを疑わなければならない。
追記
これとは逆に、結論を共有できる状態にならない限り「分かった」と言えない人もいる。主張内容を理解する事と、結論を受け入れる事とは全く別なのに。けど、後半話が拡散し過ぎ。
おまえホントアホだな。こういうのが「証明」とはどういう作業か一生理解できないタイプの人間なのだろう。そういう人には余分な話に思えるわけだ。この部分が主なんだけどね。わかっていないのに、こうやってわかっているつもりになる人間が一番始末が悪い。
執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
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