レストランでは「おもて無(なし)」!? リクルートのトレンド予測発表から見えた「脱“当たり前”化」の生き方とは

リクルートが2010年より毎年実施しているトレンド予測発表会が今年も1月に開催された。11回目となる今年は飲食・アルバイト・シニア・派遣・住まい・進学・自動車の7領域に関するトレンド予測が発表されたが、そこから見える今年の特徴を改めてリクルートの担当者に聞いてみた。

今はどんな時代なのか? 消費者の価値観はどう変化しているのか? 新年度を迎えるこれからの時期に歓送迎会などでも話のネタになりそう。

トレンド予測にみる「脱“当たり前”化」の傾向

クライアント企業やユーザーとの関わりの中で、長年にわたり「各業界の活性化や社会課題の解決を提案したいという思いから、未来について思考をめぐらせ、社会と向き合ってきた」というリクルートグループ。

同社は毎年発表しているトレンドを「社会における良い兆し」と捉え、「この兆しを毎年発表し、広がっていくことで、各業界の活性化・社会課題の解決に寄与したい」と考えているという。

リクルート広報部の中村太郎さんは、今年の7領域の発表内容を「脱“当たり前”化」「働き方の多様化」「テレワークの推進」と、大きく3つのキーワードに分けられると分析する。

「働き方の多様化」「テレワークの推進」に関してはこのほど新型コロナウイルスの感染拡大で思いがけず脚光を浴びているが、「今まで当たり前だった価値観が変化し、新しい選択をする人が出てきています。多様化、ダイバーシティを推進する社会が反映されているトレンドだと思います」と説明する「脱“当たり前”化」によって、消費者の選択肢はどのように広がっているのだろうか。該当する飲食・自動車・進学の3領域の“兆し”をみていこう。

サービスを簡略化した「おもて無(なし)グルメ」

昨年10月の消費税増税で外食10%・中食8%と2ポイントの差がついたことを受け、より高い満足度が求められる外食産業。そこでトレンドになりそうなのが、店舗が提供するサービスを簡略化し、その分、おいしさを追求した「おもて無(なし)グルメ」だ。

例えば、東京都・世田谷区のフレンチ「ルナティック」は、食券制にすることでサービスを簡略化。配膳と食器を下げる作業もセルフで行うシステムにより、一番人気の「牛フィレステーキフォアグラのせ(ランチタイムはパン、ドリンクつき)」を1500円(税別)で提供するなど、ファミレス並みの価格設定を実現している。

「料理は美味しいし、話のネタになる。気をつかわなくて楽」と、利用者も高級店とは違う気軽さと高コスパのフレンチに満足の様子。

このようにオペレーションやサービスに価値を置かずに質の高い料理を提供する外食店は今後も注目を集めそうだ。

クルマの役割を再定義する「らしさCAR」

自動車の領域では、“自分らしさ”を実現したり、表現したりする手段としてクルマをもつ傾向を受け、「らしさCAR」がトレンドキーワードに。

「クルマ=移動手段」という図式は崩れかけ、自分らしい用途に合わせて居心地よく過ごせる空間(サードプレイス)や、自分らしさを反映する大きな持ち物(アウター、アクセサリー)として、その役割がシフトしてきているという。

DJの河合桂馬さんは、全国のフェスに参加するためハイエースを自宅化。野外フェス開催場所の周辺に宿泊施設がないことに悩むなか、現地に機材を積んで行き、そのまま車中泊も出来る車があれば便利だと考え、このようなカスタマイズを自ら行ったそう。

「ボディカラーは、当時住んでいた湘南・茅ヶ崎のイメージから緑色に。現在は、大半をこの車の中で過ごしているといっても過言でない状態なので、車内で、きちんと休息が取れるよう、フルフラットのベッドも作っています」と、このカスタマイズに満足しているという。

発表会では他にも、ポルシェにあえて錆びたようなラッピングを施すオーナーなどが紹介されていた。

出る杭を育てる「ワクモチ進路」

進学の領域では、出る杭は打たれる、ではなく出る杭をともに育てていく教育がトレンド に。“ワクワクするモチベーション”を大切にした進路選び「ワクモチ進路」が注目を集め、自分のやりたいことや夢・目標ベースで学ぶ環境を積極的に選択する生徒が増えてきているという。

ネットと通信制高校の制度を活用したN高等学校に通うある生徒は、「時間がフレキシブルなので、やりたいことを探す時間に使いたいと思って入学しました。“今、一番充実感がある。毎日楽しい!”と断言できます。幼少期を知る先生からは“やりたいで動ける高校生活が送れているな”と、僕にとって最高のほめ言葉をもらいました」と、自ら選択した進路先で充実した学校生活を送っている。

独自性を重視して地元以外の地域へ進学する選択は、これまで一部の意識高い系やスポーツ選手など特定の生徒に多かったが、特色あるカリキュラムで出る杭をサポートする高校や、学校の枠を超えたキャリア形成の場が増えていることもこのトレンドを後押ししているようだ。

前出の広報部・中村さんは、「私たちの発表を多くの方々に知っていただくことで、新しい価値観が受け入れられやすくなり、多様な選択肢を選べることができる社会になれば良いなと思っております」と、半年近くかけて選定されたトレンド予測を社会に発信する意義を明かした。

外食は味とサービスが揃ってこそなんぼである、クルマはメーカーや車種のネームバリューで価値が決まる、偏差値の高い大学へ進学して大企業へ就職するのが王道レールだ……そんな今までの“当たり前”による生きづらさを解消して、自分らしく生活ができるような社会が、もう当たり前になってきているのかもしれない。

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よしだたつき

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PR会社出身のゆとり第一世代。 目標は「象を一撃で倒す文章の書き方」を習得することです。

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