7野党の内閣不信任案提出を前に「決められない」自民党
7日夕方、衆議院に国民の生活が第一(生活)、新党きづな、共産党、社民党、みんなの党、新党日本の各党(議席数順)が野田内閣不信任案を、また参議院では生活、みんな、共産、社民、新党改革、新党大地・真民主、みどりの風の各会派が、いずれも参議院での採決を目前に控えた消費税増税法案への反対を理由として野田首相に対する問責決議案を提出しました。
6野党(衆議院に議席を持たない新党改革も賛同)の不信任案は野党第一党の自民党と第三党の公明党が賛成に回っても与党から15名以上の造反者が出ない限り否決される見通しですが、就任当初から「早期の解散総選挙に追い込み政権を奪還する」と主張していた一方で6月に消費税増税法案の修正に応じて締結した“三党合意”の破棄に踏み切れない自民党の谷垣総裁は、7野党が7日に不信任案を提出すると報道されてからうろたえ続け、未だに態度を決めかねています。何故なら、内閣不信任案は“一時不再議”の原則により一旦、否決されると国会が閉会するまでは二度と審議されないので「解散総選挙に追い込みたい、でも消費税増税はしたい」と言うジレンマに陥ってしまっているのです。
内閣不信任案が提出されてから採決されるまでの間は、衆議院・参議院とも全ての委員会審議が停止します。現在のところ野田首相は9日に長崎原爆慰霊式典へ出席する予定なので、不信任案は10日午後の衆議院本会議で審議される見通しですが自民党内では「三党合意を破棄して不信任案に賛成すべきだ」という主戦論が参議院を中心に主張される一方で、三党合意を取りまとめた衆議院の派閥領袖を中心に「民主党が解散を確約しない場合は7野党案と別に不信任案を提出すべきだ」となおも「解散総選挙」と「消費税増税」の二兎を追い求める意見も根強く、谷垣総裁が率いる執行部は7日午後に一旦は解散確約を撤回して8日の法案採決に応じる姿勢を見せました。ところが、夕方に7野党の不信任案が提出されると一転して「期限を明示した解散確約」を民主党に求める姿勢へ転じたのです。現在のところ、民主党は期限を明示した解散確約には応じられないとの姿勢を崩しておらず、自民党側も一旦は8日の正午に設定した回答期限を16時に延長するなど決断を遅らせる動きが続いています。
自民党が7野党の内閣不信任案に賛成を決めかねているのは提出理由が「消費税増税反対」と三党合意を真っ向から否定する内容だからですが、自民党が7野党とは別の理由で不信任案を提出するという対応は外から見てもわかりづらいと言わざるを得ません。もし7野党案と別に自民案が提出された場合、先例では議席数の多い自民案のみが優先して審議されることになりますが、7野党は提出理由が異なっていても倒閣という目的に沿って自民案に賛成するのが確実と見られます。可決されてもされなくても、選挙となれば民主や公明と共に「増税勢力」のレッテルを貼られかねず、衆参のねじれを利用して厄介な消費税増税の責任を民主党に押し付けたうえで政権を奪還するシナリオは破綻しかねません。
面倒な議題を先送りする「決められない政治」というフレーズが叫ばれ出してから久しいですが、ここに来て自民党は先送りが出来ない不信任案への対応に二転三転する谷垣総裁の「決められない」姿を強く印象付けてしまいました。対する民主党執行部も“擬似大連立”と言える三党合意を優先して党内の反対意見を切り捨てて来た反動が、今まさに直撃しているといえます。解散総選挙か内閣総辞職か、今回の政局がどのような決着になるのかの予測は困難ですが、来年7月までには確実に衆議院と参議院の両方で選挙が行われます。
画像:野田内閣不信任決議案の審査経過(衆議院)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DB0B9A.htm
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