テレワークが住まいを変える!?2020年の住まいトレンドは「職住融合」
近年恒例となった、リクルートホールディングスの「2020年のトレンド予測」が発表された。これは、住まい・飲食・雇用など7領域の「新たな兆し」を見出して、2020年のトレンドになると予測したキーワードを発表するもの。筆者が専門とする「住まい領域」のトレンド予測は、『職住融合』。住まいと職場が融合するのはなぜなのか?【今週の住活トピック】
「2020年のトレンド予測」を発表/リクルートホールディングス
自宅や住宅の共用部にワークスペースを設ける事例が増加中!?
「働き方改革で、住まい選びが変わる」と、筆者も常々思っていた。
住まい領域は「新たな兆し」として、テレワークの普及により働く場所が多様化することで、「家なかオフィス化」や「街なかオフィス化」が進む兆しを挙げた。さらに、職住の距離に関する制約が薄まり、職場に縛られない「街選びの自由化」が進む兆しも指摘した。
まず、テレワークの実態を見ていこう。
リクルート住まいカンパニーの「テレワーク×住まいの意識・実態調査」2019年によると、会社員・公務員でテレワークを実施している人はすでに16%に達し、実施意向のある人も26%いた(画像1参照)。
実は、総務省の「令和元年情報通信白書」を見ても、企業のテレワーク導入率は2018年には19.1%に達している。いずれも2割近い数値を示しており、筆者が思っている以上にテレワークが普及しているようだ。「2020年トレンド予測 住まい領域」資料より転載
テレワークで働く場所になるのは、自宅の一部であったり、街のカフェなどの商業施設やコワーキングスペース、シェアオフィスであったりするだろう。つまり、“家なかオフィス”や“街なかオフィス”の誕生だ。
とはいえ自宅で働くなら、パソコンの置き場所や仕事の資料などの収納スペースも必要になるし、そのためのデスクや椅子も必要だ。自宅にそうした工夫をすることで「家なかオフィス化」が実現するのだが、DIYやリノベーションで自宅に快適なワークスペースをつくる動きが多く見られるのだという(以下の画像参照)。
トレンドを発表したSUUMO編集長の池本洋一さんは、それぞれ事例を挙げて説明した。なかでも、ガラス張りの小部屋を施工するリノベーションでは、光や視線は遮らないものの音を遮断してくれるのがポイントなのだそうだ。「2020年トレンド予測 住まい領域」資料より転載
さらに、働く人が自ら「家なかオフィス化」するだけでなく、住宅を供給する事業者も「プチ書斎プラン」や「パパ・ママ専用書斎プラン」などを提案する住宅の供給、ワークスペースを設置した賃貸住宅の提供を行う事例も出てきている。とはいえ、狭い自宅にワークスペースが設けづらい、自宅では集中しづらいということもあるだろう。
最近では、新築マンションや賃貸住宅の共用部に、居住者が利用できるワークスペースを設ける事例が増えている。ブースタイプやライブラリータイプ、ミーティングルーム併設など、その形式も多様化しているのが興味深い。
「職場の近くに住む」必要性が軽減?街選びの選択肢が広がる
さて、テレワークを活用すれば、「毎日の通勤時間を短縮するために職場の近くに住む」という呪縛から解放される。先ほどの「テレワーク×住まいの意識・実態調査」2019年の結果でも、「テレワークをきっかけに引越しをしたか」を聞いたところ、「引越しを実施した」(10%)、「前向きに検討し始めている」(27%)、「検討していないが引越ししてみたい」(15%)とかなりの割合で、テレワークを機に転居を視野に入れていることがうかがえる。
さらに、「テレワークが導入/促進された場合、通勤時間がどの程度長くなっても引越しを検討するか?」については、「60分以上」(13%)、「30~60分未満」(30%)など、通勤時間が長くなることを許容する人が多くなっている(以下の画像参照)。「2020年トレンド予測 住まい領域」資料より転載
つまりテレワークが普及すれば、通勤に便利という発想ではなく、自然豊かな場所や子育てしやすい場所を生活拠点に選ぶ人も現れる。一方、すでに多くの居住者がいる都市の郊外エリアやベッドタウンに目を向けてみよう。通勤時間がネックで働けなかったという人も、テレワークの普及によって、家なかオフィスや街なかオフィスで働ける可能性が出てくる。
住まい選びの重要項目である「街選び」の選択肢が広がるというわけだ。
また、テレワークのメリットとして「通勤時間の減少」や「ストレスの軽減」「仕事の質の向上」などを挙げる人が多いことや、テレワークで引越しを実施した人では「子ども/家族との時間」や「趣味に費やす時間」などに価値を感じる人が多いことなども紹介された。
テレワークはもちろんのこと、働き方改革が進んでいけば、これまでの「住まい選びの常識」が常識ではなくなっていくだろう。生活の拠点をどこに置くか、自宅の部屋をどう使っていくか、広さや間取りをどう考えるかなど、もっと自由な発想で住まいを選べるような時代が近づいているように思う。
最後に、その他の領域のトレンド予測キーワードを紹介しておこう。
多くの領域のトレンドの背景に、少子化による人手不足の影響が見られる。人手不足解消のために、多国籍人材やシニアの就労を促進したりテレワークの促進で働きやすい環境を整えたりする必要があり、その流れが住まいにも波及するという2020年になるようだ。
2020年のトレンド予測キーワード
「おもて無グルメ」(飲食領域)
「アルダイバー」(雇用領域(アルバイト))
「健朗シニア」(雇用領域(シニア))
「出勤オフ派遣」(雇用領域(派遣))
「ワクモチ進路」(進学領域)
「らしさCAR」(自動車領域)
元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/01/IMG_5329-784×440.jpg
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