叱る母親・泣く子供…ある日の電車内にて

叱る母親・泣く子供...ある日の電車内にて

今回はみやびさんのブログ『Amazonの悪魔』からご寄稿いただきました。

叱る母親・泣く子供…ある日の電車内にて

たまには短いコラムっぽいものを。
 
先日電車内でのこと。とある親子が乗ってました。子供はまだ幼稚園ぐらいですかね。おかあさんのスカートをずーっと握ってまして…まぁ甘えたい年頃なんだなぁと思いつつ最初は注意を払ってなかったんですよね。
そしたらまぁ何が原因かよくわからないんですが子供が大声で泣き出した。スマホの画面から目を離して見てみると、結構なガチ泣き。もうわんわん泣いてて見ているこっちがどうしたんだ何があったんだと子供に聞きたいぐらい。知らない子じゃなければ背中さすってなだめてるところです。

車内は子供の泣き声でいっぱいに。とはいえあのぐらいの子供はまぁ泣くものです。乗ってる客もそうイラだった雰囲気はなく。そのうち収まるかな…うーんしかし何が原因で泣いてるんだろう?なんて思ってましたが、これがまた一向に泣きやまない。

で母親が一生懸命諭してるのかな…と見てるとどうもただ怒っている。ひたすら子供を怒ってるわけです。

「もう、なんで泣くの!みっともないでしょう!」
「ほら…みんなが見てるじゃないの…」
「そんな子は知らないわよ!泣けばいいってもんじゃないでしょう!」

聞いてるとどうも違和感が。
泣いてる原因は聞いてないんですよね。
ただ「自分が恥ずかしいから」泣くなといってるように聞こえる。母親の怒りのボルテージは上がる一方。
むしろ子供の泣き声より母親の言動の方がイラっとくる状態。
とはいえ他人の家族の間に入り込むのも気がひける。が、子供の泣き声が胸に痛い。自分が子供の時もガチ泣きしてたことはあるわけで…まぁ誰だって人ごとじゃないはずなんですよね。泣く子供ってのは。誰しも一度はくぐってる時代のはずですし。

その後も数駅。子供はひたすら泣きわめきながら「おかーさーーーんうわーーーーーーっ」とかやってるんですが、母親の方はともかく泣くのをやめなさいを繰り返すばかり。

あれで泣き止むもんなら子育てはきっと苦労はないんだろうなぁ…と思っていたところ優先席に座っていた年輩の夫婦がそっと立ち上がって子供のそばに。旦那さんの方が母親に、奥様の方が子供と同じ視線にしゃがむようにして壁に寄りかかりながらドアのそばの手すりをつかんで。

「子供がなくと大変ですなぁ…」
なんて会話を旦那さんがしていて、母親の気を紛らわせ始めます。
「どうしたのかな?どっか痛いのかな?」
奥様は子供の気を引きます。優しい笑顔で頭をそっとなでる。くびすじをなでる。ぽんぽんと肩をたたく。そうしつつ子供と目線を合わせている。
旦那様の方は母親を気遣いながら子育ての大変さを聞き出しはじめる。
ぼんやりと見ること2分もたたないうちに子供は泣き止み母親もテンションが普通に戻っている。うわーこれは見事だなぁと見ていてびっくり。
まぁここまで見てるだけってのもあれだったので、スーツのポケットに飴をいれてたのを思い出しまして。そっと近づいてしゃがんでいるおばあさんに渡すとそれはもういい笑顔で子供に渡してあげてくれて。

その次の駅で母子は降りて行きました。
私は老夫婦に席をゆずり(子供をあやしている間に優先席は別の人に取られてしまっていた)手際のよさを褒め称えました。
すると旦那さんの方が「あんた顔しかめてたねぇ。あれかな女性のヒステリーは苦手な方かな?」
などと問われる。見てるところは見てるもんだなぁと恐縮。
「子供が泣いてるのに体面ばかり気にする言葉ばかりで…どうにもいらいらしてしまいました」
素直にそう言うとこれもまたいい笑顔で「私もだよ」なんて言われまして。
「子供が親の話を聞くなんてのは親が勝手に思ってるだけでね。子供に言葉で諭したってだめなんだよな。触ってあげて優しくしてあげればいいんだ。疲れてすぐに泣き止む。怒るのは泣いてない時にやるんだよ。すくなくともうちのかみさんはそれで何人も育ててるんだから」
自慢げにそう言われてこちらもなるほどそうなのかぁ…とうなずくばかり。まぁ子育てなんてやったこともないんでそう言われればそうなのかなぁと。
私が思っていたのは叱り方の方で。
「みんなが見ているから」
とか
「恥ずかしいでしょ」
としきりに言ってたんですが、それってあんたが恥ずかしいだけだよな?子供じゃないよな?と思いつつ見ていた。
老夫婦にその辺りを聞いて見たかったのですが、私も降りる駅がきてしまったので挨拶だけして電車を降りました。

会話の端に「何人も子供を育てた」という言葉があったので、老夫婦はいわば子育てのエキスパートだったのでしょうかね。奥様のやり方を旦那さんが肯定していて自然にサポートしている。まぁ実際の子育ての頃は今ほど落ち着いてはいなかったのでしょうけれど、やはり経験ってのは人を磨くものだなぁと思ったりも。

そして今でも思うのは母親の叱り方。
他の場面でもよく見るのです。椅子の上で変な座り方をしていたりはしゃいでるいるのを放置していたり、叱る時も「みんなが見ている」とか「恥ずかしい」を連発している親を。
その叱る言葉は本当に子供のための言葉なんだろうか…ただ自分が恥ずかしいから子供を叱っているのではないか。
そして「みんなが見ている」という言葉。
みんなが見ているからやめなさい…ではなく本当は「それはしてはいけない事だから」やめなさいではないだろうか。
自分が母親に叱られていた子供時代はどうだったか。
それが社会の仕組みでみんながきちんとしているのはなぜか。他の子も泣いてないでしょう?こういう乗り物はみんなが乗るものだから自分だけわがまま言っちゃだめでしょう?そう諭されていた気がします。
まぁそれでも泣いて最後にはげんこつ食らってさらに泣いてた気もしますが(苦笑)言うこと聞かない子供だったしなぁ…

それはさておき。

子供を持たぬ独身男には不思議なのですが、子供を叱るってのはどういうことなのかと。
これから社会で生きていくために必要なルールを教える。それはとても大切なこと。特に日本ははみ出しものには辛いところですから、最低限のところは教えてあげないといけない。
公共の場と自宅の違いも教えてあげないといけない。
でも。泣いているならば。他人の目がどうこうではなく。なんで泣いているのか。泣いている原因がわがままなら叱るでしょうし、そうでないなら他人の目なんて気にせず子供に相対して欲しいな…と個人的には思うのです。
たぶんその方が早く泣き止むと思うので。

自分の子にあまり触れない親が増えているとも聞きます。
体面ばかりを気にする親が増えているとも聞きます。

今回の件でそうなのかもな…と思いつつ。それでも子供を産み育てる苦労を考えると、それをしていない身としては何も言えず。せいぜい飴のひとつも子供にあげるぐらいしか出来なかったわけで。
世の親とは大変だなぁとも思うのですが、それでも…
子供の立場を考えれば…あのぐらいの子では表現が泣くか笑うかぐらいしかないんだろうな…とも思うので。あまり親の都合で叱ってほしくはないかなぁ…と思うのです。まぁ子育ての大変さから子供に当たるというのもわからないではないんですが。子供からしたらたまったものではないだろうなぁと。

私の母も女手ひとつで私を子育てしてましたので、ストレスを私にぶつけてくることはありました。離婚の理由。別れた父親への怨嗟の言葉。酔えばもう出てくるのはひどい言葉ばかり。あんたなんて生むんじゃなかったと何度聞いたことか。人格形成に大きく影響を与えるヒトコマではありましたが、長じて大人になると母の言葉もわかってくるものです。今の自分が一人で子育てを…働きながらしたらどういうことになるのか。それを考えると母に文句は言えないなぁと。
あの頃はなんで遊んでくれないのか構ってくれないのかと泣いてたもんですけれどね(笑)子供には親の事情がわからないってのは実感出来るなぁ…自分がそうだったから。
親も子も。ボルテージをあげずにうまくやっていけるといいんですが…なかなか難しいのでしょう。あの老夫婦のように何回も子育てしてる家庭なんて今時そうはない訳ですし。みんな初めてで最後の子育てに挑戦している。それはとても大変だろうなと。でもまぁ、親ってのは大人な訳で。子供よりは我慢も効く。なら…なんて。
あんな時母親を叱る人ってのも車内にはいたりするのです。

正義の味方のように。

「あなたは体面ばかりを気にしてるじゃないか」
なんて言っちゃう人もいる訳です。私も心ではそう思いました。思いましたが、それをやったらたぶん子供はもっと泣くだろうなぁ…と。なんで泣いてるのかわからんけれど、なんか伝えたいんだろうな。だから泣くんだろうな…そう思ったら出来ませんで。
ともかく泣き止んでくれれば母親も恥ずかしくはないんだろうなぁ…さてどうするかな。そう思った矢先の老夫婦の行動。
最近道を占有したり電車内で大きな声で携帯を使ってる老人などを見て、あれが昔聞いた「老いるのに失敗した人達」なのだろうな…などと思ったりすることも増えていたので、今回の件は結構晴れやかな気持ちになれました。

時間にしてわずかに十数分の出来事。

大したことのない日常のヒトコマ。
けれどいろいろと思うことが増えるヒトコマではあったかなと思います。
親の体面子の心。
自分が親になることはないかもしれませんが…もしなったとしたら。思い返してみたい出来事だったな…と思っています。

執筆: この記事はみやびさんのブログ『Amazonの悪魔』からご寄稿いただきました。

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